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丘田ミイ子の【ここでしか書けない、演劇のお話】③ 演劇の“試み”や“取り組み”に目を向けたい!

みなさん、こんばんは。前回はお昼に読む方に向けて「こんにちは」で始めたので、今回は夜verにしてみました!ふと秋の訪れを感じさせるような涼しい夜とそんな昨日が嘘みたいなまだまだ真夏のようなお昼の攻防戦、みなさん体調にお変わりはないでしょうか?
この間、敬愛する俳優の友人とお酒を飲んでいる時にこの連載の話になり、「ミイ子さんがまさに隣でしゃべっているみたいな連載!」とのご感想をいただいたことが夜も昼もいつまでもじんわりと嬉しく、「よっしゃ今日も楽しくおしゃべりするぞ!」という意気込みで書いております。
前回は「観たことない演劇も語らせて!」と題して、いくつかの観たい演劇やカンパニーについて書かせていただきました。無事観られた演劇も、またも涙を飲んだ演劇も、まだどちらになるか分からない演劇もありますが、それもまた大事な記録!と今後にガシガシ活かしていこうと思っている次第でございます。詳しくは、前回記事をご参照下さいませ!

さて、演劇と一口に言ってもいろんな作品やカンパニーがあります。喜劇もあれば、悲劇もあるし、喜劇みたいな悲劇も、悲劇みたいな喜劇もあります。家族の愛おしさや煩わしさを描いた物語もあれば、他者とのわかり合えなさやわかり合いたさを描いた物語もあります。歌やダンスを強みにしているカンパニー、ナンセンスギャグで5秒に1回客席を沸かせる劇団もありますね。そんな風に物語の内容やカンパニーの作風は観劇の大きな決め手ではないかと思います。しかし、それだけではもちろんなくて、劇作や上演の方法やカンパニーの成り立ちや哲学のようなものに惹かれて「観に行ってみようかな」と思うこともあるのではないでしょうか?私が演劇を愛する理由の一つも実はそこにあって、数多の作品やカンパニーが他にはないような指針や工夫を元に創作や活動をされていることに日々刺激や発見をいただいています。今回はそんな演劇における “試み”や“取り組み”や“在り方”をクローズアップして、観たことあるカンパニーもないカンパニーも交えて語っていきたいと思います。

私が演劇ライターとして自ら企画を立ち上げて取材を申し入れるようになったのもあるカンパニーとの出会い、その“在り方”に心打たれたことがきっかけでした。それは、俳優の町田マリーさんと中込佐知子さんが立ち上げたパショナリーアパショナーリア(通称パショパショ)というカンパニー。

私生活では母でもあるお二人が旗揚げとともに掲げていたモットーは「家庭と演劇の両立」。出産や育児を機にキャリアを切り拓くチャンスや文化に触れるきっかけが狭まってしまうことは社会においても大きな問題の一つであり、もれなく私もその葛藤に思い悩む当事者の一人でした。そんな折に、パショパショの旗揚げ公演のクラウドファンディングに出会って、公演託児費&小中高生のチケットの無料化がプロジェクトに掲げられていることを知り、「これは私の祈りでもある!」と、迷わず参加をしました。以降、第二回目公演からはライターとして取材をさせてもらい、結成から5周年経った今も欠かさず足を運んでは背中を押してもらっている特別なカンパニーの一つです。


子どもとの生活をきっかけに始動し、様々なアプローチで活動を展開しているカンパニーがもう一つあります。その名もうたうははごころ。主宰の菊川朝子さんがご自身の出産を機に立ち上げ、代表を務めるカンパニーで、ジャンルはその名で示してある通り、ママさんコーラス演劇パフォーマンス。“子どもが泣く叫ぶ走る登るそのカオスも全てパフォーマンス”。公式HPにはそんな育児のカオスを垣間見るワードが見受けられますが、何度読んでも私が胸を打たれるのは最後の一言、「あなたも私も認可外」です。保活(保育園にあずけるためのありとあらゆる活動)に勤しんだことがある方なら、認可保育園のハードルの高さを思い出し、これだけでもついホロリときてしまうのではないかと思うのですが、この言葉って保活だけを指しているわけではないなあとつくづく思うのです。母であるからこうしなくちゃいけないとか、こうあらなくちゃいけないとか、そういった世間や世界からのジャッジやプレッシャーに苦しむことって本当にたくさんあって、もっと言えば、母でなくとも、親でなくとも、性別、年齢、職業問わず、あらゆる人が何か目に見えないものに認められなくてはいけないような気持ちに駆られて苦しい思いをすることって今の世の中とても多いと思うんです。そんな時に、「認可外でいいじゃないか」と言ってくれるのがこのカンパニーで、その楽曲の数々。

育児中の愛や悲しみや願望や疲労が思わず漏れ出たフレーズを軽やかに歌い上げる「愛の育児賛歌」シリーズは、クスッと笑えて、その後グッときちゃう。「子育てがんばれ!」じゃなくて、「子育てしんどいって言っていいよね、私は言うよ」と先陣切って歌い上げてくれるその姿にどうしようもなく心を救われる日があるんですよね。そんな楽曲がぎゅっと詰まったアルバム『CHORUS INCHAOS』は様々な音楽サブスクからも聴けるので、是非! メンバーの俳優の方々が首都圏内にとどまらず、地方に在住しながら活動を共にされているのも強みの一つです。そんなうたうははごころは、9/10に『歌え!踊れ!育て!ははごころの庭RINNEフェス』と題した大イベントをスタジオ『一階』にて開催。子供服やおもちゃは「輪廻です!」がははごころの合言葉、おさがりのおもちゃ1点の持参で子ども一人分の入場が無料になるので、是非気になった方は公式HPを詳しくcheckして遊びに行ってくださいね。素敵な輪廻とメロディーに出会えるかも!


演劇活動が制限されてしまうのは、出産や育児だけが理由ではありません。家族の介護をはじめとする家庭の事情や生活を支える他のお仕事の都合によって、演劇活動の休止を余儀なくされている方々もいらっしゃいますし、素敵な劇場やカンパニーは日本各地にあり、俳優や作家の方も多くいるにもかかわらず、演劇における注目や評価が首都圏内に集中しがちなことも演劇界の問題の一つ。そんな問題に着目し、「さまざまな背景をもつ俳優たちと、時間をかけた演劇づくりに挑戦したい」というクラウドファンディングを立ち上げたカンパニーがあります。その名も明後日の方向。主宰を務めるのは、自身の劇団「時間堂」をはじめ外部演出も手がける演出家・黒澤世莉さん。このプロジェクトは先月末に目標額を上回って達成したのですが、それは、その結果の背にそれだけこの試みに共感する人、達成を望む人がいるということ。演劇だって生活の一部。持続可能であるに越したことがありません。あらゆる人生を生きる人が演劇の創作に携わるチャンスを同じく手にできるように、枠組みや環境そのものを変えていく。そのためのプロジェクトが明後日の方向が取り組んでいる試みなのです。そして、これに関しては、“試み”にとどまらずいつかは“レギュラー”に、明日、明後日と、少しずつその形が普遍的なものへと変化してほしいと願わずにはいられません。今回のプロジェクトは来年1月に東京の座・高円寺で上演される二本立て公演『赤目』(作:齋藤憐)・『長い墓標の列』(作:福田善之)の費用として、地域在住キャストの稽古交通費や育児中の俳優さんのお子さんの託児費などに充てられます。演出は、プロジェクトの主宰でもある黒澤世莉さん。気になった方は是非、「さまざまな背景をもつ俳優たちと、時間をかけた演劇」を見届けに座・高円寺に足を運んで頂けたらと思います!


演劇におけるハードルの高さに思い悩んでいるのは、観客もまた同じ。チケット代の高騰によって若い世代の劇場へのアクセスが阻まれることもありますし、観劇するにあたってサポートが必要な方もいらっしゃいます。最近はそういった状況を鑑みて、様々な観劇アクセシビリティ向上に取り組むカンパニーや劇場も多くなってきました。その中からも一つご紹介をしたいと思います。昨年の中止から約1年を経て9/28より東京芸術劇場 シアターイーストで開幕するタカハ劇団『ヒトラーを画家にする話』(作・演出:高羽彩)は、9/29の18時と9/30の13時の二公演が鑑賞サポートつき公演として上演されます。(鑑賞サポートの内容は舞台手話通訳、バリアフリー字幕タブレットの貸出、音声ガイド、事前舞台説明会、池袋駅からの移動サポートなど。)

今作に限らず、近年のタカハ劇団はこういった観劇アクセシビリティ向上に積極的に取り組んでいて、中止を経て、2021年の12月に1年越しに上演された『美談殺人』では、舞台手話通訳であり、俳優でもある田中結夏さん(TA-net)が、手話通訳の役割を担いながら登場人物としても出演。取材で稽古場にお邪魔をした際には、物語の流れやシーンの温度感が齟齬なくよりスムーズに伝わるように入念に手話部分の稽古を重ねる様子が印象的で、カンパニーにとってこの取り組みがとても重要であることを痛感しました。劇場が誰しもにとってひらかれた場所であること。そんな願いを願いで終わらせず、形にしようと取り組んでいるこのようなカンパニーが日に日に増えていることはとても意味のあることだと思います。また、タカハ劇団はU-25/高校生以下のチケット料金を安価にしたり、過去にはギフトチケットにも取り組み、観劇のあらゆる壁を削いでいく取り組みを多く行なっています。物語の魅力はさることながら、そういった取り組みをされていることを観客が知ること。その周知もまた社会にとって必要で意義のあることだと思います。


ここまでは演劇界のみならず社会に目を向けた試みを展開するカンパニーを上げましたが、ここからは劇作の方法やスタイルに新たな試みを感じるカンパニーも合わせてどんどんご紹介していきたいと思います。
一つ目は劇作家女子会。が9/27よりシアター風姿花伝で上演する『劇作家女子会。feat. noo クレバス2020 It’s not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』。
この戯曲は、メンバーのモスクワカヌさんが新型コロナによる緊急事態宣言中の2020年春に「50日間連続で一人芝居の短編の新作を更新する」といったプロジェクトから端を発しています。50日毎日戯曲がアップされていた?!と、そのことにまず驚きなのですが、この戯曲は後に書き下ろしを加えて一本化され、第20回AAF戯曲賞の最終候補に残り、特別賞を受賞。なんてことでしょう。私は、緊急事態宣言の時に心と筆を奮い立たすことができず、「どうせ何もできないし」とあつ森でリュウグウノツカイを釣ることで不安を紛らわせていたので、その間に50もの戯曲が日々生まれていたことにまず、ただただ感銘を受けてしまいました。さらに、同メンバーで、リーダーでもある坂本鈴さんは先日『あの子の飴玉』で部落解放文学賞の戯曲部門で佳作を受賞され、話題にもなりました。
今回の公演では、『私の一ヶ月』や『ブレイキング・ザ・コード』などこれまでも様々な骨太な演劇作品で物語に力強い息吹を吹き込んできた文学座の稲葉賀恵さんが演出を手がけられるのも見どころの一つ。思い出すだけで不安な気持ちが蘇ってきてしまう、あの緊急事態宣言下に日々刻々と生まれたセリフたちが一つの物語、演劇として立ち上がるのを見届ける時、なんだか私は見たこともない景色が見られるんじゃないかと、何か一つ心の道を整理できるんじゃないか、と一人そわそわワクワクとしているのです。
また、劇作家女子会。といえば、演劇界のみならず世の中全体の大問題となっているハラスメント問題を受けて、「持続可能な演劇のための憲章」を発表されたことも記憶に新しく、これまでなかった「憲章」という形で創作上での他者との関わりについて思考し、言語化がされたことに励まされ、同時に自身の襟元を正すような思いに駆られました。そういった取り組みを行なっているカンパニーが発表する、満を辞しての新作なのだから私はそこにお金を払いたい。「演劇を観る」という行為は時に自分の生き方やスタンスを表明するきっかけでもある、としばしば痛感します。現在クラウドファンディングも実施中なので、是非覗いてみて下さいね!


どんどん行きますよー!まだまだありますよー!
演劇の形態は様々ありますが、レクチャーパフォーマンスという演劇があることをご存知でしょうか?演出家・俳優の橋本清さんと批評家・ドラマトゥルクで演劇批評誌『背紙』の編集長でもある山﨑健太さんによるユニット、y/n。私は今年5月に上演された、「教育」をテーマにした『Q &Q』という公演で初めてその観劇が叶ったのですが、これまで経験したことのない全く新しい体感のパフォーマンスでした。「レクチャー」と聞くと、教える側がいて教わる側がいて……とつい先生と生徒のような関係を想像して緊張してしまうのかもしれないのですが、気構える必要はありません。舞台と客席がとてもフラットに構築されていて、一つのテーマが丁寧に紐解かれ深く掘り下げられていくパフォーマンスを受けてその場で共に思考をする、といった体感で、新発見と再発見に溢れた観劇体験だったのです。『Q &Q』を観て以来、娘の学校に行った時や教育に関するニュースを見る時の視点が変わったような。そんな、物事や出来事を見つめる視野を広げてくれるパフォーマンスです。開幕が迫っている豊岡演劇祭でも9/16〜18の3日間、芸術文化観光専門職大学にて『カミングアウトレッスン』という作品が上演されます。上演時間も45分+Q &A30分とコンパクトなのでトライしやすいですが、Q &Aタイムもとっても興味深いので、個人的には込みでの観劇をおすすめいたします!(余談ですが、山﨑健太さんは私が昨年から通っている座・高円寺の劇場創造アカデミーの劇評講座の講師も務められています。この話もぜひいつか!)


公演は少し先ですが、様々なSNS媒体を駆使した積極的な広報活動が日々展開されているのがこちら。その名も未開の議場2023。元々はオンライン会議劇『未開の議場―オンライン版―』として発信されていたのですが、10/31より北とぴあ ペガサスホールにて劇場上演作品として初解禁となるのがこの『未開の議場2023』です。私はメンバーの宍泥美さんのnoteでその活動を知ることができました。
脚本は北川大輔さん、演出協力は須貝英さん、そして製作には「萩島商店街青年部」と表記があります。そう、この公演最大のポイントがここ、「萩島商店街青年部って一体なんぞや!」というところなのですが、これこそが出演俳優陣が「新たな形の演劇」を目指して立ち上げた試みです。それはズバリ、メンバー全員が主宰ということ!これは、2020年のコロナ禍にオンライン版が発足されたときからのモットーであり、「単純な多数決だけでなく、意見が割れた際には議論を設け、互いの理解と譲歩を決定します。時間はかかるけれど、誰かに責任が偏ったり、誰かを置いてけぼりにしないことを目的とした試みの一つ」だそう。創作における責任と決定権を全員が等しく持つこと。それがいかに難しいことか、そして、いかに豊かであるかは広報の様子を少し覗いてみるだけでもひしひしと伝わってきます。時間のかかる難しいことに挑んでいる作品こそ、やっぱりこの目で観てみたい。そして、「気づいたら大事なことが知らない間に決まってしまっていた」なんてことが本当に起きてしまう今の世で「全員主催の議場を設ける」ということ、『未開の議場2023』という作品には何か大事なことがギュッと詰まっている予感がしてやみません。なので、客席から心して私もその議場に参加したいと思います!出演者であり主宰の「萩島商店街青年部」のみなさんのお名前はここでは書きません。きっと、過去に観たあの劇団の作品に出ていた、今も忘れられないあの人やこの人がいるはず。さあ、早速チラシやHPでそのお顔ぶれを見てみましょう!


まだまだ変わった試みをお探しの方、こんな演劇もありますよ!って、演劇屋さんなの?みたいになってきましたが、もう少しお付き合い下さい!(笑)。
そのチラシには、演目がフランツ・カフカの『変身』、そして上演日時が【9月30日の深夜25時つまり31日つまり土曜日の夜】、場所は【高円寺のどこか(後ほど記載)】とあります。むむむ!?夜中1時に高円寺のどこかでカフカの『変身』が上演?そう、カンパニーの名前は、のあんじー。twitterのプロフィールには、「2019.8.4結成〜77歳解散予定。同い年の女二人の野外劇コンビ。崖でやったり教会でやったりしています。あと54年毎年必ず一公演うちます」す。えっ、77歳!?うそ、崖?!と深掘りしたくなる情報満載ですが、まずは演劇を観てからでしょう!どうやらこちらの作品は、No limit高円寺番外地というイベント内の上演らしく、ツリーには集合場所が追記されていました。集合ってことは移動もあるのかしら?なんていろんな想像が膨らむし、なんといっても真夜中に演劇を観る経験ってそうそうないのでワクワクしてしまう。タイミングが叶えば是非チャレンジしたい。その時にもし可能なら、77歳と崖の秘密も聞いてみたいと思います。ビジュアルがまたアバンギャルドでラブリーで、個人的にとっても大好き。こちらも現在クラウドが実施中なので、是非のぞいていただけたら!


真夜中の高円寺で上演される演劇もあれば、そこからうんと南下したある島で上演される演劇もあります。最後になりましたが、俳優個人と地域にまつわる活動もいくつかご紹介させて下さい。
まず、私がかねてより気になっている俳優の辻村優子さんの試みである「ほぐしばい」。これは、文字通り体をほぐす整体と演劇に共通点を見出した辻村さんが発案した、両者を接続させたパフォーマンスです。私はその試みを批評家の植村朔也さんが演劇最強論-ingに寄稿された劇評で初めて知りました。さらに、辻村さんのnoteを拝読すると、その経緯が詳しく書かれていて、リラクゼーションサービスのお店でのアルバイトを続けるうちに「もみほぐしと演劇って似てるなあ」と感じたことがきっかけで、そこから2年くらいかけて2021年に初めてパフォーマンス作品にしたというのです。辻村さんの探究心はさらに加速、2022年には『乗る場のもまれ処』を発表、さらに2023年には『サロン乗る場』と題してリラクゼーションサロンの形態に進化。そして今、見ているだけで体がほぐれる演技を「ほぐしばい」と題し、日々探求をされているというのです。演劇なのか、施術なのか。これもやっぱり体験してみないとわからないので、次の機会には必ず行ってみたい!辻村さんのnoteも、読んでいるとそれこそちょっとストレッチしたくなるような、体が軽くなるような不思議な気持ちになります。

辻村優子さんnote『「サロン乗る場」のつくりかた』より

ちなみに、『サロン乗る場』の乗る場は辻村さんも出入りされているアトリエ「円盤に乗る場」からきています。「円盤に乗る場」をご紹介したなら、円盤に乗る派ももちろんセット。“場”を運営しているのが、カゲヤマ気象台さんをはじめとする“派”のメンバーのみなさんで、「複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所を作る演劇プロジェクト」です。10/26からはこまばアゴラ劇場で『幸福な島の夜』(作・演出:カゲヤマ気象台)が上演されるので、気になった方は辻村さんの創作活動と併せてチェックして下さいね。


続いては、東京で上演されながら、東京からあちこちへと飛び出す演劇のご紹介。カンパニーの名前はZAZI・ZOO(ザジ・ズー)。9/21より北千住BUoYにて『ZAZI・ZOO JAPAN TOUR 2023 FINAL(作・演出:アガリクスティ・パイソン)という公演が上演されるのですが、チラシに地方公演のスケジュールは見当たりません。「じゃあ一体何がツアーなのかしら?」と思ったところ、なんと驚き!カンパニーのメンバーがそれぞれの出身地である神奈川、高知、兵庫、秋田に滞在し、その土地の逸話や折々の個人的な体験を元に最終的に一つの演劇にするという、創作そのものがツアー方式で行われている斬新な作品だったのです。日本各地でそれぞれリサーチを経たメンバーが故郷の記憶を引っ提げ、北千住でスパークするという!そういう意味でのツアーファイナルなら、ぜひとも行かなくっちゃ!と今からとても楽しみ。演劇を創る人たちって本当に予想だにしないアイデアを閃き、さらにアイデアにとどまらず実践してしまうのだから、そりゃ観劇もやめられないわけです。東京は北千住の地にいながらいろんな場所に連れて行ってもらいたいと思います!



ついに最後になりました。これこそが南のある島で上演されるこんな演劇のお話です。
俳優の岡遼平さんが自ら立ち上げたカンパニーおかのかお。上から下から左から右から読んでも正しく読めます!その旗揚げ公演『いきゅんにゃかなと言いたいが…』が11/24から3日間、鹿児島県・奄美大島にあるlive &bar MA・YASCOで上演されます。なぜ奄美大島か。それは、岡さんご自身の故郷だから。私は西の生まれではありますが、奄美と同じく小劇場などのない故郷で育ったので、岡さんが上演に向けて寄せた「清水の舞台から飛び降りる位の気持ちです!」という言葉に込められた思いについ胸がいっぱいになりました。そういった土地で演劇公演を打つことの難しさも、そういった場所だからこそという決意もこの一言には込められていると思うのです。個人的な話ですが、私は昔、奄美大島出身の友人とルームシェアをしていたことがあって、そんな縁から数年前に奄美大島を訪れました。なんというか、見たことのない緑、聞いたことのない風の音、感じたことのない自然の力を感じながら、同時に自然のことを分かった気になってはいけないということも強く憶えるような体験をしました。本当に言葉にうまくできないけれど、独特の魅力のある場所なんですよね。そんな島で紐解かれる物語に、演劇にどんな風景が立ち上がっていくのかとても気になります。さらに、作:新井友香さん(劇団宝船)、演出:今奈良孝行さん(SYOMIN’S)という豊かなキャリアと個性でいくつもの演劇を彩ってこられたお二人お名前を見て、当然ながら観たい気持ちはさらに増します!キャストは岡さんのほか、國武綾さん(劇団宝船)と田中達也さんも出演。奄美の地だけで観ることができるお芝居。是非、この記事が奄美大島の読者の方にも届いてほしいと願います。あとかつて共に暮らした友人にも「奄美で面白そうな演劇があるよ」と送ろうかな。久しぶりだけど、そんな連絡の仕方があってもいいなと思ったりしています。


あれもこれもとお話ししている間に今回もつい長くなってしまいましたが、いかがでしたか?気になるカンパニーはありましたでしょうか?
それぞれの状況やスタンスを元にアイデアを出し合い、思考と想像を拡げながら演劇活動を行なっているカンパニーは、私が知らないだけできっともっとたくさんあって、まだ見ぬ“試み”や“取り組み”が日本の演劇界には溢れているのだと思います。
連載内でお話できることにも、私の知識にも限りがありますが、今後もなるだけ様々角度から演劇に触れていけたらと思っていますので、是非お付き合いいただけたら!
そして、「こんなカンパニーあるよ」「この作品も面白そうだよ!」などなど皆様からの情報もお待ちしています。それでは、それぞれの在り方で今月もどうかHave a nice theatre!

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丘田ミイ子/2011年よりファッション誌にてライター活動をスタート。『Zipper』『リンネル』『Lala begin』などの雑誌で主にカルチャーページを担当。出産を経た2014年より演劇の取材を本格始動、育児との両立を鑑みながら『SPICE』、『ローチケ演劇宣言!』などで執筆。近年は小説やエッセイの寄稿も行い、直近の掲載作に私小説『茶碗一杯の嘘』(『USO vol.2』収録)、『母と雀』(文芸思潮第16回エッセイ賞優秀賞受賞作)などがある。2022年5月より1年間、『演劇最強論-ing』内レビュー連載<先月の一本>で劇評を更新。CoRich舞台芸術まつり!2023春審査員。

Twitter:https://twitter.com/miikixnecomi
note: https://note.com/miicookada_miiki/n/n22179937c627


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