【劇場めし 第11回】三軒茶屋の今川焼き ＆ 茶沢通り

「劇場周辺の、おすすめのご飯屋さんをご紹介！」する、このコーナー。今回は三軒茶屋にちなんだお話です。三軒茶屋にある劇場で真っ先に思い出すのは、世田谷パブリックシアター、そしてシアタートラムでしょう。三軒茶屋駅からのアクセスもばっちり。大変利便性の高い立地です。駅から劇場まで迷わず行ける（しかも短時間で！）というのは、観劇ファンにとって嬉しいポイント。

三軒茶屋駅へのアクセスは主にふたつ。東急田園都市線と東急世田谷線。田園都市線は地下鉄や私鉄の相互乗り入れがあり、かなりの駅数が繋がっているため、その利便性は相当なもの。渋谷駅から乗車でき、乗り継ぎもバッチリです。東急世田谷線は東京に残る数少ない路面電車で、多少時間はかかるものの、車窓を眺めながらの移動には淡い旅情があります。下高井戸から三軒茶屋まで約20分。個人的に非常に嬉しい時間です。

このふたつに加え、もうひとつおすすめしたいのが……、茶沢通りを歩く。これです。茶沢通りは下北沢と三軒茶屋を繋ぐ道路で、ここを道なりに歩くと一度も曲がらず下北と三茶を行き来できます。なので、まず道に迷わない。更にこの通り、魅力的なお店がいくつも見つけられる、散策おすすめロードなのです。下北沢駅から三軒茶屋駅まで、茶沢通りを歩いて約30分ほど。歩くことが苦手な方にはバスもあります。ですが「30分なら歩ける！」という方には、一度おすすめしたいルート。ということで、シアタートラムでの観劇日に茶沢通りを往復してみました。

往路（←大袈裟？）は開演に間に合うことが前提なので、あまりキョロキョロせず劇場へ。観劇後、まず始めにやりたいことがありました。それは「かしわやの今川焼きを買う！」こと。世田パブやトラムで観劇経験のある方なら一度は目にしたことがある（ハズ）、老舗の今川焼き屋さんです。特にトラムは劇場入口から見える距離。観劇前・休憩中・観劇後・差し入れ・自宅へのお土産。どのシチュエーションにも嬉しい、優しい甘さとしっかりボリュームの今川焼き。観劇ファンにはよく知られた一品だと思います。そのかしわやさんで今川焼きをゲットし、復路は思う存分キョロキョロしながら、いざ下北沢へ。

さて、出発したばかりですが……、三軒茶屋駅から近い地域は、興味を惹かれる飲食店がめちゃくちゃ多い！ これは相当通わないとリサーチしきれないレベル。しかし、今日は今川焼きを買ったので、お店に立ち寄ることは諦めました。まず歩きましょう！

でも正直、気になるお店は沢山ありました。ご時世柄もあると思いますが、茶沢通り沿いはテイクアウト系飲食店が多く並んでいます。敢えてメモをとらず、目についた範囲で羅列すると……。唐揚げ、団子、たこ焼き、焼きそば、お惣菜、モンブラン、スープ、ハンバーガー、etc。そして、美味しいパン屋さんの激戦区であり、美味しいコーヒー屋さんも複数あり。テイクアウト以外も、気になる居酒屋さん、街中華、餃子屋さん、BAR、etc（2度目）。ちなみに飲食系ばかりを挙げましたが、雑貨や茶器などのお店も気になりました。

道中のほぼ中間地点に緑道があるので、そこで今川焼きを食べることにします。アイスコーヒーを買い、ベンチに座り、待ってました、いただきます！！ 実際に手にとると、改めてボリュームを感じます。外側はしっかり焼き目がつき、パリッとした食感が楽しい。中の生地はしっとりで、更に、これまたボリュームのあるアン（中身）が。時期によって中身のラインナップが変わるようで、色々な味が楽しめるご近所の方が羨ましい！ 「小倉あん」と「カスタードクリーム」が定番のようです。複数の味を試しましたが、いずれも生地にしっかり馴染む甘さが印象的でした。生地のためのアン、アンのための生地という相関効果で美味さ倍増。定番の小倉あんとカスタードクリームをひとつずつ食べると、和菓子欲と洋菓子欲が両方満たされる贅沢。食べ応え十分で、食後の満足感が高いです。

三軒茶屋も下北沢も、共に劇場があり、演劇文化の盛んな地域。その街を繋ぐ一本道は、観劇ファンにとって魅力ある通りと言えるでしょう。途中に住宅街もあり、ずっと店舗が立ち並ぶわけではないですが、整備された歩道も歩きやすく、何より道に迷わない。下北で観劇してから三茶へ。同様に三茶から下北へ。演劇と、ふたつの街と、通りそのものを堪能できる（更に運動にもなる！）、楽しさ溢れる茶沢通り。おすすめします。

文：園田喬し（演劇ライター・編集者・『BITE』編集長）

今川焼 かしわや
東京都世田谷区太子堂4-1-1
キャロットビル101
TEL:03-3421-5410