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MSP本公演、まもなく!|明治大学シェイクスピアプロジェクト密着取材

ネビュラエンタープライズ・おちらしさんスタッフの福永です。
U25世代に向けて、舞台芸術に関する情報を発信するユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)

今年も「明治大学シェイクスピアプロジェクト」、通称MSPの活動を取材させていただいています。

▼前回の記事はこちら▼

今回は、11月8日に初日を迎える本公演お気に召すままの稽古場にお邪魔して、この作品の魅力と課題に直面しているメンバーの様子を取材してきたので、しっかりとレポートしたいと思います。

10月24日。御茶ノ水にある明治大学の施設、アートスタジオへ。
先日、ラボ公演『番外編・お気に召すまま~ロザリンド・イン・ザ・リング!~』の本番が行われたこのアートスタジオ。本公演チームはすでに集中稽古の期間に入っていて、アートスタジオに実際のセットも立て込み、本番さながらの稽古を進めているところでした。翌週に本番を行うアカデミーホールに小屋入りするまで、ずっとこのアートスタジオを使えるので、本番へのテンションもモチベーションも高まっています。

もちろん、セットはまだまだ完成ではなく、製作途中の段階ですが、上手に二重舞台とそこへ上がるための階段があり、下手には絵本のようにデザインされた“木”のセットが乱立していました。『お気に召すまま』は、ほとんどが森の中で繰り広げられる物語。“木”のオブジェは世界観を作るのにとても効果的で、稽古をしている最中にも美術スタッフが新たに完成した“木”を運んできていました。おそらくこのような感じで、“木”は日々増えていくのだと思われます。アカデミーホールに比べるとアートスタジオは天井が低いため、セットも本番と同じサイズで立てることができず、美術スタッフは「実際はもうちょっと高いです」とみんなに説明をしながら搬入していました。

この日は監修のプロスタッフ・西沢栄治さんもいらしており、例年と同じくあまり前には出ず、しかし必要なタイミングではしっかりと演出に寄り添い、アドバイスをされてました。演出の大友彩優子さんも西沢さんの話を聞くことで、自分の考えを整理しているように見えました。

左から、演出・大友彩優子さん、監修のJAM SESSION・西沢栄治さん

見学に伺った時間は、第四幕第一場の稽古が始まり、ちょうどセットの階段を使った演出がつくところでした。『お気に召すまま』は、ロザリンドとオーランドという恋人たちが中心になっている作品ですが、そのオーランドがロザリンドとの待ち合わせに遅れてくる場面です。
オーランドが二重舞台の上段に現れて、急いで階段を駆け降り、ロザリンドの元へ近づくのですが、まだセットに不慣れなのか、階段を下りる様が少し危なっかしく、セリフに集中できない様子でした。実際にそこそこの高さがあるので、安全性を考えると急いで駆け降りるべきではありません。しかし、急いでやってきた、という感じを出す上で、あまりにもゆっくり降りるのも意図と違ってしまいます。どうしたら急いでる様を残しつつ、危なくないようにできるかが、このシーンの課題となっていました。

左から、ロザリンド役・伊藤未祐さん、オーランド役・礒邉賢臣さん

舞台の稽古は多くの場合、セットも小道具もない状態からスタートして、まずはセリフや動きの段取りを固めていきます。セリフや段取りが固まってきたあたりで徐々に置き道具、小道具が入ってくるので、今度はそれを使って改めてシーンを固めていきます。たいていの場合は道具なしで稽古していたときのようにはいかないことが多く、これをどう調整していくかには時間がかかり、プロでも難しい部分です。
加えて今回は、仮組みされているセットもおそらく徐々に仕上がっていき、毎日のように段取りの組みなおしが必要になってくるのでしょう。演出家としては毎回プランの修正を余儀なくされ、大友さんも頭を抱えていると思われます。

演出・大友彩優子さん

稽古場でのキャストとのやり取りを聞いていると、どうやら、まずは役者同士でシーンの稽古を重ねて、動きや立ち位置、ニュアンスなどを作り、それを演出家の前に持っていく、という工程で進められているようです。この日もロザリンド役の伊藤未祐さんとオーランド役の礒邉賢臣さんが、「こんな感じで作ってきました」というシーンを演出の大友さんの前で披露していました。それに対して演出家も意見を出し、さらにキャスト側からも主旨の説明があったりと、とにかく細かくいろいろなアイディアを出し合って、そのたびに何度でも繰り返し同じシーンをやってみます。この日はこの日で一応の解決を見たようではありましたが、この先もシーンを繋げてみたり、セットが新たに加わったり、さらにセットに慣れてスムーズに動けるようになったりと、変化が起こるごとにまた段取りも変わっていくのでしょう。本番ギリギリまで、演出家の頭の中は森でいっぱいだと思われます。

左から、ロザリンド役・伊藤未祐さん、シーリア役・赤﨑陽香さん、オーランド役・礒邉賢臣さん

時間で区切って、次は第五幕第四場の稽古。
出演者の数が一気に増えて、ラスト近くの結婚式のシーンでした。数組のカップルの前に結婚の神・ハイメンが現れ、皆を歌で祝福するのですが、ハイメン役の中村春穂さんの歌声が本当に素敵で、シーンを一気に格式高いものにしていました。一方で、群衆のシーンというのは演出家にとってとても難しいもの。この時も、ハイメンがいつ登場して、それに対してみんながどこで気がつくのか、リアクションはどの程度、どの向きにするのかなど、細かなことを一つ一つ丁寧に決めていきました。

ハイメン役・中村春穂さん(中央)

また、ハイメンのセリフ終わりでロザリンドが出てくるのですが、ロザリンドがセンターに着くまでのストロークが長く、少し気持ちの悪い間ができてしまいました。これをどう処理するかという課題に対しては、かなり時間をかけて話し合っていました。役者の早替えに必要な時間は稼ぎつつ、でも何もない時間にはしたいくないという、現実と美学とのせめぎあいです。いかにも「創作の現場」という空気が漂い、見ていてもワクワクしました。
キャストの中には昨年の本公演『ハムレット』で演出をしていた高橋奏さんもおり、積極的にみんなをまとめて、演出家をサポートしています。

フィービー役・高橋奏さん(中央)

大友さんの演出は、自分のイメージを押し通すようなことはせず、なるべくみんなにとってもやりやすく、納得いくところを探ろうとしている印象でした。その分、悩む時間も多いようで、腕組みをしながら頭をフル回転させている様子が何度も見れました。

演出・大友彩優子さん(中央)

小人数で小規模な公演のときだって、シーンを良くするために頭を悩ませることは多いもの。MSPではまだ学生の彼らが、100名規模のカンパニーを従え、1000人規模のホールでの舞台作品を作っているわけですから、その大変さは想像を絶します。残り約2週間で、お客様をお迎えしないとなりません。大変さはあれど、皆さんどこか朗らかで、楽しんで芝居作りをしているのも感じられました。大友さんの演出の良さはもしかしたらその雰囲気づくりから始まっていたのかもしれません。コメディである『お気に召すまま』ですから、キャストはもちろん、スタッフも楽しんで参加していなくては、お客様にも楽しさは伝わりません。そういう意味では、雰囲気作りの段階で、すでに成功しているので、残りの時間を使って精度を上げていくだけです。2週間あれば充分でしょう。今回見学させていただいたシーンが、本番でどのように進化しているのかとても楽しみです。

すでに本公演の懸垂幕もかかっています!いよいよ!

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第21回明治大学シェイクスピアプロジェクト
『お気に召すまま』


期間:2024年11月8日(金)~10日(日)
会場:明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン
3階アカデミーホール
全公演無料
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『番外編・お気に召すまま~ロザリンド・イン・ザ・リング!~』
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