MSP稽古取材日誌 ~明大生とシェイクスピア劇~ No.2
こんにちは!おちらしさんスタッフの望月です。
若い世代に向けて舞台芸術情報を発信する「ユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)」。
ユニコでは現在、明治大学が主催する学生演劇団体「明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)」 に密着取材をさせていただいております。
舞台製作の風景を、取材日誌として随時公開していますのでぜひご覧ください!!
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9月6日(火)
【ラボ公演】小屋入り
ついにラボ公演の小屋入りの日。
午前10時より、猿楽町校舎のアートスタジオには関係スタッフが続々と集合。まっさらな空間を不思議な”劇空間”に変貌させるための、大変ながらワクワクする時間がやってきます。
最初に全員で円陣を組み、その日の流れを共有。その後、各セクションごとに軽く打ち合わせをしました。
全体を仕切るのは舞台監督チームの岩田有未エレナさん。
プロスタッフで、ラボ公演では舞台監督監修をしている村信保さんのもと、試行錯誤しながら、懸命に進行していました。
舞台班はまず、隣の校舎にある倉庫から、平台や箱馬、道具類を搬入。今回は囲み舞台なので、舞台を見えやすくするために、周囲の客席を底上げしなくてはいけません。
搬入後は、その客席用の台から作っていきました。
同時進行で照明班は図面に従い、素早く舞台上部の吊り込みを終えると、早々にセンターを舞台班に空け渡していました。
小さな小屋の場合、スタッフ同士が場所の取り合いになって、作業が滞るのが最も非効率。またそうなると気分的にもよろしくないので、作業順を決め、指示を出していくのが舞台監督さんの腕の見せ所になります。
この後も、舞台面にパンチを貼ったり、上物を吊ったりと、次々にやることが。岩田さんの予定では、この日のうちに舞台の仕込みを完成させ、音響卓も組んで、音の出せる環境を整えるところまでいけたら・・と言っていましたが、中々思った通りには進まないようでした。
手伝いたい気持ちをこらえながら、取材班はただただ写真を撮っていました・・・。
いつもお世話になっている金子真紘プロデューサーも、音響卓に使う長机や、客席用のパイプイスの手配など、朝から校内のいろんな部署に駆け回り、大忙しでした。そんな中、取材の我々にも気を使ってくださり、いろいろな質問にも答えてくださいました。
本番まであと3日。どんな仕上がりになるのか楽しみです。
【担当記者:福永】
9月9日(金)
【ラボ公演】ついに本番!
稽古場からずっと取材させていただいた「ラボ公演」が、この日、ついに本番初日を迎えました。
15時からゲネプロがあると聞いていたので、その少し前から会場であるアートスタジオにお邪魔して、本番直前の皆さんの様子を伺ってきました。
既に受付は完成していて、制作チームの皆さんが細々とした最終確認中。ゲネでは学生の関係者がお客様として観に来ることになっており、その応対を本番同様に行うことで、接客のリハも兼ねていました。
つまり、実質、本番直前と同じ慌ただしさなのです。
場内に入ると、キューランプの確認をメインにした”場当たり”が行われており、ゲネ開始の時間が迫っていることもあってか、少し緊張感のある雰囲気。演出の小林萌華さん、舞台監督の松本希美さんらが中心となって、次々と転換シーンを当たり、土壇場まで確認が取れていなかったことの、最終的な摺り合せをしていきます。
ギリギリまで場当たりが続き、5分遅れでゲネプロがスタート。関係者が真剣な目で見守る中、始めは役者もやや緊張気味の表情。それでもやはり、衣裳をつけ、美しい照明が入ることで、テンションも徐々に上がっていき、以前に拝見した通し稽古のときとは格段にレベルの上がった作品に仕上がっていました。
途中、照明・音響のきっかけのミスもありましたが、初めてのゲネなので失敗して当然。むしろゲネでちゃんとつまづいておいてよかったと思える場面でした。暗転の中の転換のはずが、すぐに明転してしまったのですが、それでも転換役の役者は、実に落ち着いていて、堂々と対応していました。
ゲネが終わり、ゲネ中のきっかけミスを早々に確認。役者へのダメ出しは小林さんから役者たちへ、ラインで送られ、本番までの短い時間を有効に使うべく、各セクションがテキパキと行動していきました。
本番15分前、スタッフ・キャスト全員が場内に集合。大きな円陣を組んで、まずは演出の小林さんから挨拶が。次にプロデューサー金子真紘さんからもお言葉があり、最後に、舞台監督の松本さんの音頭で気合入れが行われました。
全員がいいテンションのまま、スタンバイ。案内役の制作スタッフが会場の配置につき、撮影担当も各々のカメラが据えられた持ち場に着くと、制作さんの「開場しまーす」の声。
ドキドキの初日が開場したのでした!!
【担当記者:福永】
9月9日(金)
ラボ公演・観劇レポート
夕方17:40頃、猿楽町校舎に到着。
まだ暑さの残る9月9日、MSPラボ公演の幕が開きました。
MSPラボ公演
『短夜、夢ふたつ』~あったかもしれない夢の話~
シェイクスピア『夏の夜の夢』と、名作小説をコラボレーションさせたオリジナル作品2篇が上演されました。(ネタバレを含んでおります・・・!)
今回は、ラボ公演観劇レポートです。ぜひご覧ください。
(※上演時にマスクは外していますが、事前のPCR検査では関係者は全員陰性であり、感染対策に十分に配慮した環境で行われております)
『変身ボトムさん』
カフカ×シェイクスピア
最初に上演されたのは『変身ボトムさん』。
カフカ・フランツの代表作『変身』とのコラボ作品です。
『夏の夜の夢』に登場する突然ロバ頭となった劇団員・ボトムと、朝起きると巨大な毒虫になっていた男を描く『変身』が織り交ぜられた作品になっています。
目が覚めるとロバ頭になっていたボトム、そして彼に恋に落ちるティターニアの掛け合いが、表情豊かで可愛らしく描かれています!
そして、『夏の夜の夢』の原作にはない妖精たちの会議シーンも。『変身』の家族会議の場面がコラージュされているのですが、そこでのシリアスな雰囲気とは打って変わって、とっても賑やか。
もしも妖精が会議を開いていたら……コロンコロンとしたキャラクターたちの愉快なお喋りに終始笑いが絶えない賑やかなお芝居でした。
『秋の夜の夢――十三夜』
樋口一葉×シェイクスピア
『変身ボトムさん』から雰囲気ががらっと変わり、ハーミアとライサンダーの切ない恋が描かれる『秋の夜の夢――十三夜』。
身分違いの男女の恋愛が描かれた樋口一葉の名作『十三夜』を織り交ぜながら、お話が進んでいきます。
もしもハーミアとライサンダーが結ばれなかったら…音の流れない静かな空間で続いていく芝居が何とも美しい…。
舞台の余白と暗めの照明が、登場人物たちの間に流れる切ない空気感を更に引き立てているように思いました。
大人になった2人の会話は、『夏の夜の夢』を、大人色の秋に変えていました。その濃密さに、わたし自身すっかり惹き込まれてしまいました。最後に2人で月を見上げるシーンが、忘れられないです。
観劇後、夢と現実の境に居るような、意識がふわふわとした感覚に包みこまれました。2つの作品が自然に美しく織り交ぜられ、それでいて、原作とはどこか違う奇妙さを感じ、終始、夢を見ているときのような気持ちになりました。
今回、感染症拡大の情勢を鑑み、観客の受け入れは明治大学に在学中の学生及び明治大学教職員に限られていましたが、私たちは取材のために観劇をさせていただきました。
そして、今回のラボ公演は、YouTubeにて観劇出来ます!
9月18日にプレミア配信された映像が、アーカイブされているそう。
配信でもう一度、この時間を味わいたい!!
『夏の夜の夢』を鮮やかに彩るラボ公演のお芝居。幸せな時間を過ごしました!本公演がさらに楽しみです。
【担当記者:望月】
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