丘田ミイ子の【ここでしか書けない、演劇のお話】④ゲストインタビュー折田侑駿×髭野純『演劇と映画をもっとボーダレスに語ろう!』後編
みなさん、こんにちは。連載初の特別ゲストをお迎えしてお送りするインタビュー企画、前編は楽しんでいただけたでしょうか?
文筆家の折田侑駿さんと映画プロデューサーの髭野純さんとともに『演劇と映画をもっとボーダレスに語ろう!』をテーマに、引き続きお話をして参ります。後編では、演劇と映像をボーダレスに活躍する俳優や作家の魅力をはじめ、お二人のイチオシのカンパニーやこれから上演予定のマスト作品なども語っていただきました。是非今後のご参考にもお役立ていただけたら嬉しいです。
演劇と映画を横断して活躍する、
魅力溢れる作家や俳優を挙げまくろう!
丘田 言い出しっぺから始めますね!(笑)。私が最近気になっている演劇と映像を横断している俳優は辻凪子さん。映画やドラマにも多々出演されていますが、先日下北沢演劇祭で辻さんが監督・主演を手がけた『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』の活弁公演を親子で観たのですが、演者さんたちの表情がすごく豊かで、余韻をいつまでも抱きしめていたい素敵な作品でした。
髭野 2019年上演のiaku『あつい胸さわぎ』での辻さんも素晴らしかったですよね。ご活躍ぶりはもちろん、合間を塗って沢山の映画や演劇を観ていらっしゃるのもすごいなと思います。
丘田 演劇は年1程の頻度で出演されてるようで、昨年のほろびてや今年のコンプソンズでも代わりのきかない存在感と技量に圧倒されました。劇作家であり脚本家でもある方だと、先日シアタートップスで上演された『怪獣は襲ってくれない』の作・演出を手がけた岡本昌也さんやコンプソンズの金子鈴幸さん。お二人とも作家としての個性はもちろん、俳優としての独特な魅力にも惹かれます。あと、ハイバイや劇団た組の公演に出ている山脇辰哉さん。ご自身のおばあさまと共演された映画『明けまして、おめでたい人』(ウトユウマ監督)もとても気になる!わあ〜どんどん顔が浮かんでくる……(笑)。
折田 た組と言えば、田村健太郎さんもすごく相乗効果を持つ俳優さんだと思います。演劇の『綿子はもつれる』で中学生の息子役で出ていて、同じく加藤拓也監督作の映画『ほつれる』の方では夫役を演じていらっしゃるんですよ。この横断の仕方はすごいですよね。
髭野 あれは僕もびっくりでした。演劇で観て、まず中学生役の説得力に「さすが田村さん!」と驚いて、次に映画の宣伝を見たら「今度はこっちの役やるんだ!」って一瞬混乱したほどです。
丘田 その配役の憎いところはやはり演劇的な試みを感じるところですよね!映像で中学生役を抜擢するのは難しくても、演劇だと俳優さんの覚悟と手腕によって成立しうる。そういう意味でもダブルの見応えがありますよね。
髭野 た組つながりでもう一人挙げるなら、『ぽに』に出演していた藤原季節さんも今の映画シーンを語る上で欠かせない俳優さんです。主演作の『佐々木、イン、マイマイン』(内山拓也監督)も印象的でした。
丘田 『his』(今泉力哉監督)もすごくよかったですね! あと、松居大悟監督の『くれなずめ』の藤原さんも好きだったなあ。映画やドラマへの出演が相次ぎながら、舞台にも挑戦し続けている俳優さんの出演作はなるべく見逃したくないなって思います。
折田 それで言うと、奈緒さんもドラマで話題になった後に玉田企画の『今が、オールタイムベスト(再演)』に出演されていましたよね。初舞台の『終わりのない』でインタビューをさせてもらったんですけど、その後に玉田企画の劇団公演に出ると聞いて、活躍の幅に感動しました。あと、ピンク・リバティの山西竜矢さんの初監督作品『彼女来来』にも出ていましたよね。
丘田 ピンク・リバティ、『点滅する女』も面白かったです!奈緒さんは、先日ケムリ研究室『眠くなっちゃった』も観てきたのですが、とても素敵でした。いつもとは少し違った声色と表情で、また一つ新たな魅力を更新されていて……。
折田 奈緒さんや藤原季節さんの出演作からはご本人のアンテナの敏感さやアグレッシブさみたいなものも感じます。プロデュース公演だけでなく、劇団公演に出演されていたり。お二人以外にも自ら選んでオーディションを受けて舞台出演を射止めている俳優さんもいっぱいいます。
髭野 「いい作品に出ている」とも言えますし、同時に「その俳優さんが作品をよくしている」とも言えますよね。
丘田 これは演劇好きの考え方かもしれないのですが、小劇場に出ている魅力的な俳優さんが映画やドラマにキャスティングされていたら、キャスティング側の印象がよくなる現象が私の中で起きます。
折田 わかります(笑)。その点で最近テンションが上がったのは、ドラマの『はやぶさ消防団』。生瀬勝久さん、橋本じゅんさん、岡部たかしさんと演劇でキャリアを切り拓いた名優が揃って出ているんですけど、物語を揺るがすキーマンとして登場するのが、なんとイキウメの浜田信也さんなんですよ。
髭野 もはやそのキャスティングは、演劇好き必見ドラマといってもいいですね。
折田 配役も含めてイキウメでのキャラクターを踏襲しているようでもあり最高でした。あれを見て浜田さんを初めて知った人は「すごい俳優さんがいる!」って感動があると思うんです。そこから演劇との出会いに還元されたらよりいいなあと思います。
丘田 そしてまたイキウメのファンが増える!(笑)。あと、最近の話題で欠かせないのは、やっぱり朝ドラ『らんまん』。てがみ座の長田育恵さんの脚本も前原瑞樹さんの出演にも胸が高まりました。前原さんは玉田企画などの公演でも印象的ですが、主演映画『アボカドの固さ』(城真也監督)では自叙伝的なストーリーの中でジタバタしている姿がすごく生っぽくチャーミングで。小野寺ずるさんや兵藤公美さん、坊薗初菜さんなどの演劇人の登場にも高まりました!
折田 朝ドラのキャストは見逃せないですよね。『ちむどんどん』にはKUNIO、ハイバイに出ている井上向日葵さん、『おちょやん』にはイキウメ、口字ックに出ている東野絢香さん、『なつぞら』ではロロの板橋駿也さんがそれぞれ好演されていましたよね。これって演劇と映像双方観ている人の醍醐味でもあるし、そんな俳優らの生の芝居が生成変化していくのが見られる演劇って、やっぱりすごいですよね。朝ドラや大河のいいところは視聴者の層が老若男女行き渡っていて、ネットの情報や知名度に左右されないこと。それは純粋に「芝居の良さ」に心を打たれているってことだと思うので、演劇で活躍されている俳優さんにどんどん出てほしいですよね。
髭野 僕の様に作る側の立場の人間が演劇を観ているか否かの差は絶対にあって、私感では演劇を作っている人が映画を観ている数に対して、映画を作っている人が演劇を観ている数が少ない気がします。
折田 「演劇人は映画を観るのに、映画人は演劇をあまり観ない問題」ですね。すごくわかります。これは、ライターや批評家にも言えることですよね。
丘田 書き手/聞き手の分断、私もすごくあると思います。「もっとボーダレスに語られていいのに」って思いますし、こういった企画でその壁を少しでも溶かしたい気持ちもあるんですよね。
髭野 もっと言うと、演劇を観ない人って映画もそんなに沢山観ていなかったりもして、すごくもどかしい。作る側が能動的に双方を観て、いい俳優さんをどんどん横断的に起用してほしいですよね。
丘田 うんうん。私も「もっと沢山素敵な俳優さんいるよ、その役にぴったりな俳優さん私知ってるよ!」って気持ちでいます。
髭野 そうですよね。演劇にしろ映画にしろ、情報が溢れている時代に限られた時間とお金を何に使うかっていうことだと思うんです。「絶対観るもの」と「絶対観ないもの」があって、その間に「どうしようか迷うもの」があって、そこがどっちに転ぶかで明暗を分けたりもする。自分が携わっている映画もそういうところにある気がするので、どうやったら届くべき人に届けられるのかなってすごく考えます。
折田 「映画はいつでも観られる」、「演劇は今しか観られない」って対比が、映画サイドのある種のネックになることもありますしね。単館上映のいい映画も案外期間が限られていて、「来週もやっているだろう」と思って見逃しちゃうことも結構あるはず。
丘田 なるほど。その文脈で言うと、金子由里奈監督の『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の反応には、小劇場に似た濃密な白熱と注目度の上昇を感じました。実際に現代ならではの「生きづらさ」が丁寧に紐解かれたこれまでにはなかった映画で、出会えて本当によかった。TAMA映画賞最優秀新進監督賞も受賞されて、今後もまた上映が拡がっていくのが嬉しいし、そのことで世界が少し変わりそうな。そんな気配を感じる作品でした。
髭野 そう言ってもらえると、嬉しいですね。演劇でも配信アーカイブを行っていたり、過去の戯曲を用いたりすることもあると思いますが、生でしか観られない「現在性」があり、時事的な題材を取り入れることも多いのかなと思います。映画も「現在性」と「普遍性」、どちらも重要だと思っていて、観た後に風景が少しでも愛おしく変わるような作品に関われたらと思っています。
折田 『街の上で』や『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の映画を観て僕が感じたのは、その時代を閉じ込めるとともに、ゆくゆくは歴史を振り返るための貴重な資料になりうる作品だということでした。それって、すごく意義のあることだと思います。
髭野 そんな風に映画が何かのきっかけになるのはとても嬉しいですね。『花束みたいな恋をした』(坂元裕二監督)の上映の折に「テアトル新宿を初めて知った」っていう若い客層が沢山来ていたのですが、その時もすごいなって思ったんですよね。それってつまりは劇中に出てくるサブカルワードにもピンとはこない客層ということな気がするのですが、映画館に足を運ぶことをきっかけにそれらを知ることができたりもする。そういう意義もありますよね。
折田 映画と演劇を横断した作品との印象的な邂逅がもう一つあって……。映画『そして僕は途方に暮れる』のインタビューで三浦大輔さんとお会いしたのですが、憧れの方だったのでかなり緊張はしたものの、すごく話が盛り上がったんですよ。映画のインタビューなので当然映画の話が中心になることが多いですけど、僕が三浦さん演出の舞台を好んで観ていたこともあって、横断した濃密なお話が出来たんですよね。まさに演劇と映画双方の体験が仕事に繋がった瞬間でした。「どちらも観続けるスタンスでやっていていいんだ」って改めて思えたというか。演劇って正直チケットも高いですし、ある意味私財を投げ打っている側面もある。だけど、それがこんな瞬間に繋がるのであれば、すごく感動的だなって思うんですよね。
丘田 演劇と映画のボーダーをテーマに、どこにも載っていないような貴重なお話を聞いていると感じます。映画好きにも演劇好きにも読んでほしいし、これからその道を志す人にも届いたらいいなあ。さてさて、永遠に話せそうですが、いよいよこれが最後の話題となります。ここからはお二人の忘れられない演劇体験やイチオシのカンパニー、これから上演される予定のマスト作品などについて教えてください。これがそのまま演劇をまだ観ぬ誰かの観劇リストになるかもしれませんよ〜!
これまでのベスト&これからのマスト
折田 それこそ映画と演劇を横断している作品で僕が人生ベストクラスで好きなのは『父と暮らせば』。10代の頃に黒木和雄監督の映画版をDVDで見たのが最初で、その後にこまつ座の地方公演、上京後は2015年に岩波ホールでの特集上映で初めてスクリーンで鑑賞。2021年には山崎一さんと伊勢佳世さんご出演の舞台を観て、映画は今年の8月6日にも観ました。
髭野 何度でもどこでだって観たい、特別な作品ってありますよね。僕が一番好きな演劇はままごとの『わたしの星』。初演も観たし、再演は大阪まで観に行きました。カンパニーで一番好きなのはiaku。ここ数年はほぼ全作観ていて、演劇引力廣島の『目頭を押さえた』も観に行ったほど。だから11月24日から開幕する『モモンバのくくり罠』ももちろんマストです。
折田 僕にとっての演劇の決め手はまず一番がオルタナティブ性、そこにプラスされるのが完成度の高さなのですが、その二点において全幅の信頼を寄せているのが範宙遊泳なんですよね。『ディグ・ディグ・フレイミング!〜私はロボットではありません〜』の感想をつぶやいたところ劇評の依頼を下さって、『バナナの花は食べられる』ではインタビューもさせてもらいました。山本卓卓さんや坂本ももさんのように、こうして新しい手の繋ぎ方をしてくれる人との機会はいちライターとしても大切にしたいと思います。SNS侮れない、演劇の感想を呟くようにしていてよかった!(笑)。
丘田 私も『ディグディグ〜』には強く胸を打たれました。折田さんの劇評も読んだのですが、視界がまた一つ広がるような気持ちになりました。野田地図の『兎、波を走る』にも出演されていた李そじんさんの表現力にも魅入りましたし、メンバーの福原冠さんの身体の使い方も大好きなんですよね。ままごととナイロン100℃所属の大石将弘さんを最初に知ったのも2014年上演の『うまれてないからまだしねない』でした。キャストのみなさん、本当に素敵ですよね。
髭野 僕が範宙遊泳で好きなのは、2017年上演の『その夜と友達』。大橋一輝さん、名児耶ゆりさん、武谷公雄さんによる3人芝居でした。
丘田 みなさん、さすがです。どんどん出てきますね〜!最近観た作品や知ったカンパニーでお気に入りはありますか?
髭野 今年の夏一番の大発見は南極ゴジラ。ここ数年観てきた中でBUoYという空間を最も面白く使っていたように感じました。途中で客席の移動があって、テーマパークみたいでした。今後も追いかけていきたい。あと、バストリオ。普段音楽をやっている人が出演されていたりもして、俳優だけでない演者の表現の在り方が興味深くて大好きなんですよ。
丘田 この夏BUoYで開催されていた、若手4団体が「歌舞伎」を共通テーマに上演作を持ち寄った『条件の演劇祭』も見事に個性がバラけていて刺激的な体験でした。若手の新たな団体にもどんどん出会い続けていきたい!
折田 イベントものも見逃せないですよね。今年のMITAKA “Next” Selectionに選出された劇団アンパサンド『地上の骨』も面白かったです! 黒田大輔さんのやりたい放題具合が飛び抜けていて、あまりの熱気と凄さに一瞬最前列で観たことを後悔したくらいでした(笑)。
髭野 アンパサンド、面白いですよね〜!僕は昨年末の宇乃うめのさんが出演されていた『されど止まらず』を観たのですが、「演劇って、まだ新しい扉が開くんだ!」っていう驚きがあって、こんなに笑ったことあるかなってくらい笑いました。
丘田 宇乃さんは画餅『モーニング』でも印象的でしたね! 私が最近初めて観たカンパニーで心を奪われたのは、やみ・あがりシアターの『濫吹』。戯曲の緻密な構成が素晴らしくて、演劇でできること、劇場の可能性、俳優の魅力をどこまでも突き詰めた作品で、「こんな演劇に出会いたかった!」とめちゃくちゃ感激しました。と、同時に「なんでもっと早くから観なかったんだ!」とも。あと、やっぱり初めて観た時からコンプソンズはメンバーの個性含めて大好き。
折田 コンプソンズはオルタナ性が突き抜けていて、常に驚きを与えてくれるところに惹かれます。主宰の金子鈴幸さん自身のお芝居がいいというのも魅力ですよね。
髭野 そう、金子さん、やっぱり俳優としても素晴らしいので出てほしいと思っちゃいます。Uber EatsのCMで最近めっちゃ見かけますけど(笑)。
丘田 毎作品に社会に向けた覚悟を感じるのですが、8月上演の『愛について語るときは静かにしてくれ』では現代における「戦争」を明確に描くという点でも時代に残すべき作品としてすごく大きなものを感じました。あと、ゆうめいの池田亮さんの進化も目が離せないです。唐組は上京して欠かさず観ているし、鵺的も大好きだし、アガリスクエンターテイメントは日本各地で上演してほしいし、東京にこにこちゃんにはこれからも唯一無二のハッピーエンドで世界を照らしてほしい。あ〜あれもこれもと、どんどん出てきちゃう!
髭野 そんな風に、今でこそ数々の観劇体験でアンテナが鍛えられて失敗しないことがほとんどになってきましたけど、もちろんつまらなかった演劇体験もあるじゃないですか。でもそれも無駄じゃないというか、20歳の時に全くわからなかった作品が今になってその良さに気づくとかもあって、長く演劇を観ているからこその出会い直しや巡り会いもあるんですよね。だからやっぱり演劇は見続けていたい。
折田 一定数苦手な人や理解ができない人がいるっていうこともまたある種の説得力になったりするんですよね。「新しさ」ってそうやって生まれますし、観たことのない手法や表現って誰だって最初は驚くじゃないですか。それこそ、マームとジプシーなんて初めて上演する時にはすごく勇気がいっただろうと想像します。リフレインの演出だけでなく、セリフの発話も俳優の身体性も全く新しかったですし、従来のストレートプレイとはまるで異なるものだから。でも今では演劇史を語る上で欠かせない存在になって、そこに影響を受けている若手の方も出てきている。
丘田 おっしゃる通りですね。私はずっと『cocoon』を観る勇気がなくて、昨年内田健司さんの出演をきっかけにやっと観たんですけど、本当に観てよかったと思いました。そんな風になんとなく遠ざけていた作品やカンパニーにあるべき時に出会える喜びもありますよね。
どうしよう。いつまでも話せちゃう!でも連載は続くので、これからもどんどん語っていくとして、最後にお二人の今後の観劇予定作品や要チェックなカンパニーを教えて下さい!
折田 やはり度々名前の挙がったイキウメ、の今回は劇団公演ではないのですが……。
髭野 世田谷パブリックシアターの『無駄な抵抗』ですね!『街の上で』に出ていた穂志もえかさんも出ますし、僕もマストです。
折田 『彼女を笑う人がいても』に出ていた渡邊圭祐さんが素晴らしかったので、今回の出演も注目です。あと、劇団チーズtheater主宰の戸田彬弘さんによる映画『市子』もすごく楽しみ。『川辺市子のために』という演劇からどんな世界が編み出されるのか、必ず見届けたいと思っています。
丘田 『川辺市子のために』はチーズtheaterの旗揚げ公演作品でしたよね。サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞。私も演劇の文脈も踏まえた上で12月公開の『市子』を観るのが楽しみです。
髭野 来年1月公開の『彼方のうた』出演者の眞島秀和さんが出ている舞台『My Boy Jack』や、ぬいしゃべの出演者である石本径代さんや羽衣の日髙啓介さんも出ている松井周さんの『イエ系』も見逃したくないですね。
丘田 同じく11月にはムニ『ことばにない』の後編も上演されます!1年を経て続編が観られるという待ち遠しさも贅沢だなあと思ったり。
髭野 あと、演劇ではないけど、倉田翠さんのダンス公演も気になっています。同じくダンサーさんの文脈で言うと、横山彰乃さんのダンスカンパニー、lal bansheesとSuiseiNoboAzというバンドのコラボ公演『幽憬』は、昨年観た全ての表現の中でベストでした。再演されたら必ず行きたい!
丘田 私も大興奮しました〜! SuiseiNoboAzの音楽と横山さんのダンスの共鳴、バトル感が最高に刺激的で、思わず体が動き出すような感じで前のめりに観ました。
折田 僕は文筆家になってからコンテンポラリーダンスのレッスンに通っていた時期があって。元々身体を使うことには関心があったんですけど、「演技ってなんなのか」っていうのを自分の身体を通して改めて知りたくてWSに行ったりもしたんです。あと、ラップ×演劇で唯一無二の東葛スポーツは、常に新作情報を待ち侘びています! 主宰の金山寿甲さんはナカゴーの公演にも出演されていて、俳優としてもすごく魅力的ですよね。演劇の中でもこうしてどんどん気になるジャンルや作品が広がっていくのもいいですよね。
丘田 そうですね。ナカゴーやほりぶん、鎌田順也さんが紡ぐ世界観はこれからもずっと大好きです。東葛スポーツはあっという間に売り切れちゃうから、毎回油断禁物ですよね。私も年々観る演劇の幅が派生して広がっている気がします。
髭野 あ、そうだ。僕、まだ『ハリー・ポッターと呪いの子』が観られていなくて、観なきゃいけないと思っているんですよ。小劇場ラバーだからこそ、今商業で大注目のハリーもやっぱり押さえておかなきゃいけない気がしませんか?
折田 2500円で濃い世界が観られる小劇場演劇もあれば、商業の場でなければ生まれ得ない景色もやっぱりあって、それぞれの強みがありますよね。だから結局「みんな、とにかく演劇観ようぜ!」って話に落ち着きます(笑)。
丘田 そうですね! まだ間に合いますから、今度みんなで『ハリーポッター』行きません?それで、またこのインタビューの番外編ができたら最高……!
折田 それやりたいですね。小劇場を見尽くしている3人でいざ、ハリーポッターへ!
小劇場も商業も、映像と演劇も全部がどこかでつながっています。それが、僕たちが劇場に、映画館に足繁く通う理由ですよね。
丘田 すごくいい着地! お二人、本日は長い時間を割いていただき、貴重なお話の数々をありがとうございました。では、次はホグワーツで会いましょう!(笑)
Special thanks/Innocence Define-イーディ-(東京都文京区根津2-19-8)
【プロフィール】
折田侑駿/1990年生まれ、文筆家。映画の専門媒体やパンフレットをはじめ、演劇、文学、マンガ、服飾、酒場など様々なカルチャーに関する批評やコラムを「Real Sound」や「QJ web」など各種メディアに寄稿。物語や表現に新たな眼差しを与えるレビューや俳優評を多数執筆するほか映画のアフタートークやweb番組「活弁シネマ倶楽部」にも出演。また、それぞれのカルチャーと密接な結びつきを持つ街/土地の魅力や変化を観察・考察した記事も執筆。「DOKUSOマガジン」にて、お酒と映画の関係を独自目線で語る「折田侑駿の映画とお酒の愉快なカンケイ」を連載中。
Twitter : https://twitter.com/y___shun
髭野純/1988年生まれ、映画プロデューサー。アニメ会社勤務を経て、インディペンデント映画の配給・宣伝業務に携わる。2020年に合同会社イハフィルムズを立ち上げ、代表を務める。プロデューサーとしてそれぞれの監督の魅力や持ち味に伴走。直近の主なプロデュース作品に『街の上で』(今泉力哉監督)、『春原さんのうた』(杉田協士監督)、『ほとぼりメルトサウンズ』(東かほり監督)、『夢半ば』(安楽涼監督)、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(金子由里奈監督)などがある。プロデュース・配給として参加している、杉田協士監督『彼方のうた』(英題:Following the Sound)が第80回ヴェネチア国際映画祭 ヴェニス・デイズ部門に選出。2024年1月5日(金)よりポレポレ東中野ほか公開予定。
Twitter:https://twitter.com/jhfilms_
丘田ミイ子/2011年よりファッション誌にてライター活動をスタート。『Zipper』『リンネル』『Lala begin』などの雑誌で主にカルチャーページを担当。出産を経た2014年より演劇の取材を本格始動、育児との両立を鑑みながら『SPICE』、『ローチケ演劇宣言!』などで執筆。近年は小説やエッセイの寄稿も行い、直近の掲載作に私小説『茶碗一杯の嘘』(『USO vol.2』収録)、『母と雀』(文芸思潮第16回エッセイ賞優秀賞受賞作)などがある。2022年5月より1年間、『演劇最強論-ing』内レビュー連載<先月の一本>で劇評を更新。CoRich舞台芸術まつり!2023春審査員。
Twitter:https://twitter.com/miikixnecomi
note: https://note.com/miicookada_miiki/n/n22179937c627
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