MSP本公演『ハムレット』通し稽古
ネビュラエンタープライズ・おちらしさんスタッフの福永です。
U25世代に向けて、舞台芸術に関する情報を発信する「ユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)」。
ユニコでは昨年に引き続き、今年も「明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)」にしっかり密着させていただくことになりました!
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今回は、本年度MSPの本公演、『ハムレット』の通し稽古にお邪魔してきました。
通し稽古が行われたのは、実際に本番が行われる明治大学内のアカデミーホール。ここでできる通し稽古としては、この日が最後の機会でした。
舞台面にはしっかりと床面の目印となるバミリもとられており、それを見るだけでも、かなり壮大な、面白い舞台美術であることがわかります。
この日までにすでに何度かホールでの通し稽古は行われたようで、キャストの皆さんも舞台の大きさにはすっかり慣れている様子でした。
とは言え、これ以降しばらくは舞台上で稽古することができないため、いろいろな確認事項も踏まえた、重要な通し稽古となる回でした。
ホールに伺ったのは、通し稽古開始の少し前。すでに舞台上でキャストたちがシーンの動き、立ち位置について、繰り返し入念に確認していました。キャストからも積極的にさまざまな意見が出るため、演出の高橋奏さんも自分の席を離れて舞台まで行き、どうしたら一番いい見え方になるか、ギリギリまで話し合って検討しているようでした。
開始10分前になると、演出助手の栗原百華さんからアナウンスが入り、全員が集合します。この日は各セクションのスタッフも参加する機会だったので、まずは各部が揃っているか点呼がとられました。
次に見学者に向けて、舞台上のバミリについて、どこがさらに高さのある二重舞台になっているのか、どこに役者の出ハケの位置があるかなどを細かく説明。さらに、この日はまだ完成していなかった “前説”の部分を、実際にはどのように入れる予定か、演出家から解説がありました。
一通りの解説が終わると、いよいよ通し稽古のスタート。
この日、照明はつきませんでしたが、音楽や音響効果は入りました。実際は楽器隊による生演奏が多いのですが、この日は音源をスピーカーから出していきます。
オープニングは、ダンスとハムレットのモノローグが組み合わさったようなシーン。
まだまだ未完成ながら、運命に翻弄される人物たちの壮大な物語が“始まる!”というイメージが、しっかりと印象づくプロローグとなっていました。
多少カットがあるとは言え、大作『ハムレット』を丁寧に描く演出で、キャストたちもセリフを大事に出している印象を受けました。
実際には舞台の中央に大きな階段が立ち、上下に広がる二重舞台とも繋がっている、かなり多層的な舞台セットになるので、そんな美術プランもイメージしながら観ていると、より迫力ある芝居に感じるのでした。
ラストはハムレットとレアティーズの対決から、ノルウェー軍の包囲までの有名なシーン。大きな舞台に相応しい、ダイナミックな芝居に仕上がっていて、学生演劇とは言え、MSPの規模の大きさに改めて驚かされるのでした。
本編終了後にはカーテンコールをどのように入れるかの説明もあり、通し稽古は終了しました。上演時間は2時間半弱。前回の通し稽古より少し延びていたようですが、およそそのくらいの時間に落ち着きそうとのことです。
少しの休憩時間を挟んで、観に来ていたプロスタッフの方々から感想やアドバイスをいただきます。
まず、監修の西沢栄治さんから、第一線で活躍されているプロの演出家としての具体的なアドバイスがありました。舞台のセンターに大きな階段が立つため、舞台上でフラットな部分は、ツラと呼ばれる前方の、狭いエリアのみになります。そのため、どうしてもこのツラを使っての芝居が多かったことを指摘されていました。役者が芝居を客席に届けようと思ったときには、劇場によって「力を及ぼせる範囲」があるとのこと。アカデミーホールは客席が1000席の大きな舞台であるが故に、舞台前方での芝居は客席全体に力を及ぼせないのだそうです。客席全体に力を及ぼすためには、今回の舞台で言えば階段の中央部分辺りで芝居をしないといけない。すべてのシーンをそうする必要はなくても、ツラばかりでの芝居になると、客席に届いていない時間が増えてしまいもったいない、ということをしっかりと伝えておられました。数々の大舞台で演出をされている西沢さんだからこその指摘で、学生たちもしっかりと聞き入っていました。
次に、舞台監督の村信保さんからは、そろそろすべての小道具が揃っていないと本番を想定した稽古ができないので、早く揃えるようにと、小道具を担当するスタッフに対して現実的な指示がありました。
そして、コーディネーターの井上優先生からは、芝居はとても良くなっているいるので、今一度各人が自分の立ち姿、セリフが客席に届いているかどうか、動画を見てしっかり確認するようにと、さらにここからますます体調管理をしっかりするようにとのお話があり、毎年学生たちに寄り添っている先生だからこそ出てくる言葉のように感じました。
最後に村信さんが再度発言し、客席にいる学生スタッフたちへ、「通し稽古は、もっと“みんな”で見に来なさい」との言葉がありました。最後の通し稽古という全スタッフにとって重要な回であったものの、どうやら来ていないスタッフも多かったようです。本番を安全に進行するという舞台監督の目線以上に、“みんな”で力を合わせて作品を作るべきだという、学生演劇の「精神」の部分を意識づけるようなアドバイスでした。本番の成功だけでなく、チームビルディングも考えてMSPに接しておられるのを感じます。
本番まで残り約2週間、ここからは集中稽古として連日の稽古になるようです。
どのセクションにとっても、ここが正念場。一体どのようにブラッシュアップされるのか楽しみです。
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