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技能実習生として日本で生きる

何でも搾りたてが上手い。
ビールで言えば、一番搾りでお馴染みのKIRINだろう。つい先日、飲料大手メーカーのキリンホールディングスが人権問題を理由にミャンマーから撤退したというニュースを目にした。

ミャンマーといえば、難民問題や軍事政権によるクーデターで情勢が不安という報道をメディアで見かける。どんな国でどんな人たちがいるのか。

今回は、そんな国から来た青年の話をしていく。

YOUは何しに日本へ。

外国人技能実習生として来日して、もうすぐ3年を迎えるミャンマー/ヤンゴンから来たイエさん。ニックネームがググなので、ここでは親しみを込めてググと呼ばせてもらう。

「ググは、なぜ日本に来たのか?」

その理由を話す前に、我々日本人はよく外国人に来日した理由を聞くことがある。各種メディアが外国人を取り扱うテーマでも、日本に来た理由はよく取り上げられている。

周りの外国から来た友達に、「なぜ日本人は日本に来た理由をよく聞くのか」と聞かれる。

思い返せば、私自分、海外在住時に現地の人に、「この国で何をしているのか」と聞かれたことはあるが、「なぜ、この国に来たのか」と聞かれた記憶がない。積極的な外国人との関わりこそ多くない日本人だが、実は外国から来た人への関心が高いのではないかと感じる。


ググの話に戻ろう。
彼は、小さい頃から日本のアニメが好きで、「天気の子」を見て日本のことをもっと知りたいと思って来日した。アニメや漫画などのポップカルチャーが入り口になって、日本に興味をもって来日する外国人は特に多い。

ググは、留学生として来日したかったのだが、勉強があまり得意な方ではないので、技能実習生として来日することを決めた。

現地の学校で10ヶ月ほど日本語を勉強した後に、ミャンマーの送り出し機関のテストを受けて、晴れて技能実習生として来日することになった。

ググとの出会い

少しググとの出会いについて話したい。
馴染みの韓国料理屋のオーナー「ヒョン」に、在日外国人を取材していると話をしていたら近くのミャンマー料理屋のオーナーを紹介してくれることになった。

韓国料理屋オーナーのヒョンとその息子ライコウについては、前回の記事を読んでほしい。

紹介と言っても、すごくラフなものでヒョンについて行き、軽い挨拶を交わして「彼(ワタシ)をよろしく。」とただそれだけを言って、早々とヒョンは去っていってしまった。実に無駄のないシンプルな紹介方法だ。ここら辺にもお国柄が出ている。

そこで紹介してもらったミャンマー料理店のオーナー、チョウさん。この方は30年以上前に難民認定されていて、「異国に生きる 日本の中のビルマ人」というドキュメンタリー映画にもなっている。なかなか涙腺にくる内容だ。チョウさんの話は、また別の機会に書きたいと思う。

チョウさんのお店には、色々な悩みをもったミャンマーの人たちが相談しに来る。その日も、ちょうど一人の青年が仕事の相談でチョウさんを訪れていた。それがググだ。
チョウさんは、若い世代の言葉を伝えた方がいいと言って、ググを紹介してくれた。

技能実習生の暮らし

正直、技能実習生と言えば、賃金や労働時間の問題、暴行など現代の奴隷制度と表現するメディアもいるので技能実習生の実態が気になっていたので、彼に日本の暮らしについて聞いてみた。

ググは来日後、埼玉県のプラスティック工場で働いていたが、そこではスキルも何も身に付かないので3年間の契約が終わるタイミンングで退職を希望した。しかし、スムーズに辞めることができなかったので、先程のチョウさんのお店に相談に来ていた。

彼の職場は、ほとんどが年配の穏やかな人たちで問題はなく、ニュースで見るような出来事は周りのミャンマー人からも聞かないと言う。ただ、仕事中もあまり会話がなく、仕事以外での同僚との交流はほとんどない。

ググと年の近い20代の女性も1人いるが、挨拶以上の会話はない。話したい気持ちはあるが、日本語に自信がもてずにそれ以上話しかけられないと言う。せっかくの日本人との繋がりが生まれやすい職場で、日本人との交友関係ができないので、どうしても休みの日は在日ミャンマー人のコミュニティーで過ごすことになってしまう。

そんなググの休日は、小さい頃にアニメで見た日本を見たくてミャンマー人
の仲間たちと国内旅行をするのが楽しみだと言う。しかし、本当の彼の気持ちは「日本語をもっと話せるようになって、日本人の友達を作って、もっと日本のことを知りたい」と思っている。

国内旅行が好きな理由も、日本人と会話をしなくても自分の知らない日本について知ることができるからだ。しかし、日本人の友達がいたら、良いも悪いもさらに日本の深いところまで覗けるはずだ。


言語の壁を超えてゆけ

来日して3年が経つが、ググは未だに日本人の友達ができない。
日本人に話しかけるのが恥ずかしいと、彼はハニカミながら話す。空気を読むところや控えめでシャイな彼を見て、どことなく日本人に似ていると感じた。

外国人を取材をしていく中で、言語に強いストレスを抱える人が多い印象がある。英語でなく日本語を使って、新しいコミュニティに入って友達を作っていくことは控えめな人には難しい。臆せずに積極的に交流していける人や周りに英語を話せる日本人がいるなら話は別だが。

自分の思っていることを相手にきちんと伝えられないことほど、ストレスなものはない。私自身も文化の違いや言語が通じなくて心苦しい経験をしたことがあるので、そのもどかしさが理解できる。喜びや悲しみ、悩みなどを誰かに共有できないこと程、孤独を感じることはない。

そうなると、自分の思っていることをストレスなく話せる母国語コミュニティーだけの世界になりがちになる。せっかく日本にいるのに、日本人と交流しないで外国人とだけで過ごしていることほど寂しいものはない。


私が一つ言えるのは、遠く離れた異国で暮らす彼らに本当に必要なものは、現地人である私たち日本人の友達ではないか。

労働環境や人権問題などの諸問題も死活問題に関わるので、もちろん改善する必要があるのだが、繋がりをもってくれる人や支えてくれる人の存在が生きていく活力になるのではないか。

帰り際に、「初めての日本人の友達が出来て、本当にうれしい」と言いながら帰路に向かうググの背中を見送った。

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