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大丈夫?スクエニのアクションだよ? - 『FORSPOKEN 体験版』
むかしむかし、あるところに、スクウェアとエニックスというゲーム会社がありました。
スクウェアはファイナルファンタジーを作り、エニックスはドラゴンクエストを作り、どちらのRPGもたいそうよく売れました。
スクウェアとエニックスは長いあいだ競い合っておりましたが、あるときひとつになりました。それはそれは美しいRPGを作る巨大ゲーム企業、スクウェア・エニックスとなったのです。
そんなスクエニはいま、不得意なアクションゲームにAAA級の予算をわざわざブッこんで、毎度ズッコケておりましたとさ。
こんな昔話はない。
ないけれど、スクウェア・エニックスが作るアクションゲームが基本面白くないのは事実だ。俺の中でのスクエニは、"良質で手堅いコマンドRPGを作れるのに何故か微妙なアクションゲームもどきを大枚はたいて作る異常ゲーム企業"という位置づけだ。この認識は、ここ10年くらいでジワジワと形成されてきた。
そして、1月に発売される期待の新作『FORSPOKEN』の体験版を遊んだことで、この認識は確固たるものへと変化し、期待の新作から期待は失われた。
触ればわかる、スカスカ感
『FORSPOKEN』の体験版を起動し一通りのチュートリアルをこなしたとき、俺は強い既視感を覚えていた。
これFF15じゃん……。
FF15の主人公が使っていた"シフト"に代わる高速移動システム"魔法パルクール"(これについては後述する)。ボタン一つで発動するド派手な魔法。空中をギュインと滑り、敵に吸い込まれるような突進技。いまいち不明瞭な当たり判定と喰らい判定。やる気のないヒットストップ。ああ、何もかもみな、懐かしい。
いや、懐かしいだけで良いとは一言も言ってない。『FORSPOKEN』のエフェクト特盛超人魔法アクションは見た目こそよろしいが、実のところコンビニの上げ底弁当くらい中身がないからだ。スタンした敵に対するフィニッシュムーブや敵の攻撃に合わせたパリィなど今風なアクションもあるにはあるけれど、地味にレスポンスが悪くて気持ちよくない。スクエニが作るアクションに特有の軽さと書けば、分かる人には分かるだろう。
楽しい......のかもしれない#PS5Share, #FORSPOKENDemo pic.twitter.com/UWnwlJ79HT
— ㈲ (@NeverAwakeMan) December 13, 2022
「こんなチョー綺麗なグラフィックでヌルヌル動くのに面白くないわけないジャン?」……これを読んでいるあなたは訝しんでいるかもしれないが、ぜひ実際にコントローラーを握って体験版を遊んでみてほしい。その後、細かなジャンルは問わないので出来の良いアクションゲームに触れてみよう。たとえば、『デビルメイクライ5』、『Bloodborne』、『スマブラ』。そうすると、俺の言わんとするところは理解できるはずだ。
ソウルでもなければ無双でもない
素人考えだが、現代の3Dアクションゲームの戦闘システムは大きく2つの潮流に分けられるように思う。
ひとつは"モンハン/ソウルライク"。重めのモーションと、敵の攻撃を回避やパリィで切り抜けるヒットアンドアウェイの駆け引きが持ち味だ。この手のアクションは本家ダークソウルと共にこの10年ちょっとで爆発的な人気となり、最近では『アサシンクリード』や『ゴッドオブウォー』もこちらに寄りつつある。
もうひとつは"無双ライク"。ボタンの組み合わせで様々なコンボができ、敵の行動に反応する精度よりもコマンド入力の数と正確さが求められる。ソウルライクが一時代を築いたことで若干下火になったものの、無双ライクなアクションは画的な格好良さやお手軽な爽快感、万能感で勝っている場合が多い。『デビルメイクライ』や『ベヨネッタ』は少し毛色が違うが、比較的こちら寄りといえるだろう。
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これら2つのいいとこどりのような形で存在するのが『バットマン:アーカム』シリーズや『シャドウ・オブ・モルドール』、『Marvel's Spider-Man』のようなフリーフローコンバットだが、説明が長くなりすぎるので割愛。
さて、『FORSPOKEN』の戦闘システムはどちらに近いかというと、どれでもない。FF15に引き続き、独自路線を行こうとして滑っているあの感じがする。俺が本作にハマる未来がいまいち見えてこないのは、アクションゲームを楽しませるための基本的な気遣いを感じられないからだ。
魔力は紫・赤・緑・青に分類され、それぞれに攻撃、支援の魔法があります。
— ForspokenJP (@ForspokenJP) November 12, 2022
”紫の魔力”は木や土といった自然の力を使った魔法です🥀
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🎥#FORSPOKEN を深堀りする「DEEP DIVE vol.2(魔法バトル)」公開中!https://t.co/clKds9ugMD pic.twitter.com/3kWeUItPqn
右トリガーで連発可能な攻撃魔法、左トリガーでクールタイムありの補助魔法、両方のトリガーを押すことでULTに相当するチャージ魔法が発動する。体験版では地属性と火属性の魔法が使えるようになっていて、どちらのエフェクトもすさまじく豪華だ。どれくらい豪華かというと、敵がまったく見えなくなるくらい豪華だ。画面いっぱいに広がる爆炎で敵を焼き払ったあと、次の敵がどこにいるかわからずキョロキョロするのはかなりダサい。
また、HDRをオンにすると明暗の差が激しすぎて、日陰に入った敵の視認性は著しく低下する。前述したとおり本作はヒットストップも腑抜けているため、虚空に向かい雑に攻撃を振って数字がポコポコ出るのを見るだけのシャドーボクシングになってしまうことが少なくない。体験版で現れる敵がどいつもこいつも炭坑夫みたく黒ずんでいるのもよくないのだろうが、そもそも戦闘システムとライティングの相性を考えられていないのが由々しき問題だ。
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プレイヤーが誰に対してどんな攻撃を行い、それがどういう結果をもたらすか。これをしっかりと披露し、直感的に理解しやすくしているアクションゲームには確かな満足がある。最近でいうと、『ゴッドオブウォー ラグナロク』と『SIFU』はこの点が本当に優れていた。しかし、『FORSPOKEN』体験版の戦闘はこの2つと比べることすらおこがましい。
"簡単操作でド派手な魔法アクション!"という100万回擦られた安いキャッチコピーが頭に浮かぶ。スクエニの客層の大半がアクションゲームに不慣れなRPGファンであろうことを考えると、操作の単純化を重視するのがあながち間違いではないのは理解できる。けれど、ビジュアルに惹かれて触ったゲームの戦闘シーンが実はアクションの快楽を欠いた豪華なハリボテにすぎないというのは、むしろ辛い体験ではないだろうか。少なくとも俺は、表紙がめちゃくちゃエロいのに中身が落書きレベルの同人誌のように感じる。
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可能性を感じる魔法パルクール
『FORSPOKEN』のもう一つの特徴が、先ほど軽く触れた"魔法パルクール"だ。魔法を駆使した軽やかでスピーディな移動のおかげで、オープンワールドの探索を楽しめるようになっている。
本作の特徴である「魔法パルクール」には様々なアビリティがあります。その基礎となるのが、フィールド上での高速移動を可能にするアビリティ“躍動”です👟
— ForspokenJP (@ForspokenJP) October 31, 2022
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この魔法パルクール、確かに楽しい。『レッドデッドリデンプション2』のリアルすぎてモッサリすぎる移動と比べたら(そもそも比べるべきでもないが)ケタ違いに爽快感がある。
〇ボタンを押すと、魔法パルクールの基本となる"躍動"が発動し、走るのが早くなる。ボタンを押している間は障害物を自動で飛び越え、身長3つ分くらいの段差なら軽々と駆け上っていくのでストレスフリーだ。俺のお気に入り魔法パルクールは、着地の瞬間に〇ボタンを押すことで一足飛びに跳ねる"舞踊"だ。舞踊はタイミングを合わせるのに少しコツがいるが、躍動と異なりスタミナを消費しないようになっている。うまく舞踊を繰り返すと、長距離をビュンビュン移動できて気持ちいい。3Dマリオの幅跳び連打みたいだ。
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魔法パルクールについて現時点での不満点を挙げるとすると、空中でできることの少なさだ。グラップリングポイントがあるところでは炎の縄を出す魔法"繋留"でスパイダーマンのようなスイングができるのは悪くない。けれど、崖からきららジャンプして空中に身を投げ出すといよいよもって落ちるしかなくなり、重力に身を任せるだけの時間が流れ出すのは退屈だ。
製品版には落下速度を緩める魔法が存在するらしいので、これが『ブレスオブザワイルド』のパラセールみたいになってくれれば……と俺は妄想している。空中での動きに緩急があると面白くなるのはマントマリオからの伝統であり真理なので、滑空に加えて急降下する魔法もあったら嬉しい。アーカムシリーズのように滑空⇒急降下⇒衝撃波で敵を一掃できたら、きっと痛快だろう。
オープンワールドを高速で移動する面白さについては『Marvel's Spider-Man』という超えられない壁が存在する。とはいえ、『FORSPOKEN』もなかなか良い線をいくのではないだろうか。戦闘は相変わらずアレだが、こちらには可能性を感じている。
大いなるアクションには
スクエニの作るアクションRPGにおいて戦闘がつまらなくなりがちなのは、その比重がいつもRPG側に寄りすぎるからだ。FF15もそう、FF7Rもそう、キングダムハーツも概ねそう。どのタイトルも売上とエフェクトは華々しいけれど、いざ戦闘となるとアクションをさせたいのかコマンドRPGをさせたいのかハッキリせず、俺は興奮しなかった。
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手と目と脳の処理能力限界がアクティブタイムバトルで止まっている老人に「自分は華麗に戦っている」と錯覚させるために、本当ならもっと複雑かつ整然と作り込める戦闘システムをあえてスカスカのフニャフニャにしているようにすら感じられる。
だが、そうなると今度は見かけのスタイリッシュさと操作の単純さに齟齬が生じる。ボタンひとつでパーティクルマシマシのド派手魔法が出て、ボタン連打で雑魚が粉砕されるのは確かに面白いのだけれど、それはあくまで刹那的な話だ。構図としては、マッチを擦って火が着くのを面白がる子供と似ている。しかしゲームの場合は、自分の操作と画面の派手さが同期していないことに段々と違和感を覚えるようになってしまう。
大いなるアクションには大いなる操作が伴うべきだ。
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改めて考えると、俺が『FORSPOKEN』のビジュアルから想像し、かつ求めていたのはオープンワールドで遊べる『デビルメイクライ5』みたいなゲームだったのかもしれない。実際に出てきたのは、マリオ64とFF15を悪魔合体させたような何かだったが。
……この体験版を遊んでいると、6月に発売が予定される『ファイナルファンタジー16』のことがちょっと不安になってきてしまった。DMC5の開発に携わっていた真の男がFF16のバトルディレクターを務めているという心強い情報を頼りに、今はただ待つしかない。