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#25 発達障害の人口は急増した?ADHDという言葉が拡まった理由【ニューロ横丁9軒目:発達障害①】

 数年前と比べて、ADHDに関連したことを訴える人が、SNS上であったり、芸能人であったり、増えてきているような気がします。日常でも「それADHDでしょ」というような内容の会話のやり取りを行なったり聞いたことがある人もいるはずです。

 ADHDは注意欠陥多動障害という発達障害の一部なのですが、最近になってこのような話題が急増したのでしょうか?

 今回は「発達障害」について深堀していきます。

最近ADHDの人は増えたの?

  アメリカの医学会が作成した、DSMという精神疾患の診断マニュアルがあるのですが、これを作成した人たちと話す機会があった時、このようなマニュアルがあることによって「私ADHDだから仕方ない!」というような人が増えるのではないかと質問をしたことがあります。

 すると、「そのような懸念もあるが、はじめに疾患の啓蒙が必要だと思っていた」と返答がありました。

 そのような症状がある人は昔から存在していたのですが、それを一括りに障害としてサポートが必要な人たちだとして扱っていなかったため、そもそも障害の名前を拡めることが大事だったという側面で考えると、拡まってきたことは良いことでもあると言えます。

 一方で、ADHDという名前が普及しすぎると、それをアイデンティティの主軸にしてしまう、危ない一面もあります。

 特にADHDの人は頻繁にドタキャンや遅刻をしてしまい、それも症状の一つなのですが、「ADHDなので、すみません」で済まされてしまうと、専門医でもあまりいい気はしないと語っていたほどです。

 自分の症状をアイデンティティの中核にして、それを言い訳にすることは、本人も周りの人もしんどくなってしまうため、やめた方が良いのかもしれません。

原因の究明が難しい発達障害

 また、他の臓器とは異なって、脳の特徴や障害はとても難しいものです。

 例えば、咳が出るという症状があったときに、その背景にある理由はコロナに罹っているということもあれば、喉に異物が入ったということもあります。そのような時に、「この人は咳です」という診断はされず、「ウイルス感染ですね」「インフルエンザですね」というように、原因を究明しますよね。そして咳止め薬のような対症療法もあるのですが、本来なら原因であるウイルスを根絶する治療を行います。

 では、発達障害のような精神分野で、原因がわかるのかというと、よくわかっていないのです。しかし、症状というものは見えてきています。

 例えば、発達障害は脳機能の発達が関連する各種の障害というように定義されているのですが、自閉症アスペルガー症候群、文字が読めないディスレクシアなどは全て症状です。日本の医学会もアメリカのDSMという診断マニュアルで動いているのですが、その症状に当てはまったら、その診断をつけるというようになってしまっています。

 その症状に対して対症療法しかそもそも存在しないのですが、ではそれは個性や性格とは何が違うのか、という部分が曖昧でわからないところが多くあります。

 もちろん遺伝的な違いや、脳の機能・構造的な違いもある程度わかってきています。ではなぜ違いが出てくるのかと言うと、脳の構造がそうなったからということであり、それは性格などと何が違うのか、難しいところです。

 先ほどのADHDのガイドラインを作成した先生方は、ADHDを個性とまでは言わなかったものの、体質みたいなものと言っていて、本人がその体質を持って生まれることを選ぶことはできませんが、それを自分で変える努力はできます。

 体質を言い訳にして全てを放棄することは、周囲の人もあまり気分の良いことではありませんし、開き直る人に対して人は冷たく、お互い生きづらいため、そのようなところが発達障害にも言えることなのかもしれません。

まとめ

 発達障害は脳機能の発達に関連する、主に子どもの問題として臨床が行われている分野です。自閉症やアスペルガー症候群、ADHD、学習障害といったものが主に発達障害と呼ばれています。

 発達障害は遺伝的な特徴や、脳の器質的・機能的な違いなどによって生まれる症状の一種です。その症状のチェックリストを作成して、この人は障害だ、障害でないということをやっているのですが、症状でチェックしているため、ADHDとアスペルガーというように症状が併存することも頻繁に見られます。

 そのようなところが発達障害や精神分野の特徴でもあります。近年、それを公表する人も増えてきていますが、症状の診断はとても複雑で、治療がどうしても必要な病気なのかというところでは、コンセンサスがなく、だから障害という名前がついているのかもしれません。

 もちろん社会的な問題を抱えることで、本人が辛い思いをしたり、周りが辛い思いをしてしまうことがあれば、それを和らげるというところでニーズはあるのですが、ある意味体質的なところもあって、本人が開き直るのも、周りが無理解でいるのも違うと思います。そのような人たちと共存していく時代が今なのではないかと思っています。

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