#26 大人になってから発達障害に気づくのはどうして?【ニューロ横丁9軒目:発達障害②】
発達障害は、社会に出てから自分がそうなのではないかと気がつき始める人が多いそうです。また子供の頃はその症状に気がつきにくいし、隠されやすいとも言われています。
では、なぜ子供の頃は、自分が発達障害の症状を持っていることに気がつかないのでしょう?今回も「発達障害」について深堀していきます。
子供の頃は隠されている発達障害
子供のころ、発達障害に気がつかない大きな理由として、母親や担任の存在が関係しています。小学生のころ、忘れ物が多い子供には、母親が明日の準備を一緒にやってくれたり、宿題を忘れやすい子供には、先生がサポートしてくれたりなど、子供の頃はお世話をしてくれる大人が、周りにたくさんいました。
そうすると、仮に脳の器質的に発達障害傾向のある人でも、周りのサポートのおかげで生きていくことができます。しかし、中学生くらいになると、母親は「中学生なんだからしっかりしなさい」と、朝は自分で起きなくてはいけなくなり、一日中一緒に生活をしてくれる担任の先生という概念も教科ごとに教師が変わるため、薄れ初めていきます。そのような環境の中で、自立をしないといけなくなってくると、段々と生きづらさを感じ始め、自身の発達障害の症状に気がつき始める人が多いのです。
発達障害は本当に治療しないといけない病気?
発達障害の症状に関する対策として、治療しないといけない病気なのかというと、全部がそうではありません。しかし、困っているのであれば、対症療法をやっていきましょうというのが精神医療に関わる人たちの意見だと思います。何か治療的な介入をしていこうとなると、薬物療法と非薬物療法に分かれます。
薬物療法でいうと、自閉症の人であれば、精神病薬と言われるものを使ったり、睡眠リズムが崩れていたら、覚醒リズムを整える薬を使ったり、オキシトシンといって、社会性をあげるホルモンを投与するなどの治療法もエビデンスが出始めています。非薬物療法で言うと、音楽療法や認知行動療法、社会機能をあげるための行動療法をあげることができます。
しかし、子供の頃の状態もそうですが、周りが支援してくれると、特別な治療法に頼らなくても生きていけるものです。医学モデルといって、病気だから病気の原因を潰して、治さなければいけないという考え方と、社会モデルといって、障害が障害になってしまうのは、社会の仕組みに問題があるのだから、社会側が変わっていかなければいけないのだという考え方があります。
発達障害のような特質を持った人は、一定数必ず存在するのだから、それに合わせて環境を変えていこうというアプローチの仕方もあります。要するに、本人だけが「発達障害なんだから薬飲んで治せ」と言われるのではなく、そのような人が働きやすい環境を作っていくというのが一方で大事であると思います。
仲の良い友達が、毎回遅刻をしてしまう人だったり、忘れ物が多い人でも、「あの人はいつも遅れて来るから、自分も少しゆっくりめに家を出よう」「あの人充電器忘れてるかもだから、2個持っていってあげよう」というように、自分なりに適応してお互い理解しあって関わっていくことがありますよね。そのように社会も、さまざまな特性の人を、柔軟に受け入れられる形に変わっていけたら良いと思います。
さまざまな人を受け入れる社会作りのために
例えば、発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)と言われるような人たちの中には、感覚過敏の症状を持つ人たちがいます。くすぐりに敏感だったり、少しでも音が鳴ると反応してしまったりなど、気が散りやすい症状が挙げられます。
そのような人たちに向けて、職場ではあまりノイズが入らないような、遮音性の高い部屋を用意してあげたり、電気のチラつきやエアコンの音などを消してあげると、集中力が上がってパフォーマンスも上がるそうです。「薬を飲んで自閉症を治してください」というのではなく、その人がパフォーマンスできるような環境を作っていくということも、とても有効なことだと思います。
また、ASDの人は抽象的な言葉を理解しにくい、という症状もあります。例えば、「お風呂見てきて」と言われると、湯船に溜まったお湯を確認するのではなく、お風呂だけを見て帰ってくるなどの行為です。そのような人に対して、職場の上司は、大変かもしれませんが「これをやってね」と細かく教えてあげることが大事になってきます。
ADHDの人をサポートするために、「何時何分にここを出ましょう」というように、リマインドをたくさん出してくれるアプリがあったりもします。このようなアプリを使うなどして、その人が向いていない特質を、サポートしてくれるような技術が普及していけば、お互い生きやすい世の中になっていくと思います。
発達障害の症状を持つ人ができる取り組みとしては、自分の症状を理解して、自分がどこまでできて、どこからはサポートが必要なのかを考えていくことが大切です。どうしても遅刻してしまう人であれば、先ほどのようなアプリを入れて、通知がたくさんくるように設定したり、事前に友達に「遅れるかもしれないから連絡してほしい」と頼んだり、策を練っていくことも大切です。
自分の症状を病気のせいにして開き直らず、周りの人は一方的な偏見を持つのをやめ、当事者と周りの人がお互い努力していけたら良いと思います。
まとめ
今回は大人の発達障害に関して話題にしましたが、大人になってから急に発達障害が起きるというよりは、発達障害は基本的には小児期の症状であります。
しかし、母親や担任の先生が優しくサポートしてきてくれたおかげで、うまく隠されて生きてこれたのが、だんだん大学生や社会人になってきて、自立しないといけないところで、生きづらさを感じ、見つかってくるというのが、今考えられている大人の発達障害です。
そのような人たちが、生きやすくなるために、どうしたら良いのかというと、もちろん病院にいって薬物治療のようなこともできますし、認知行動療法のような非薬物的な治療法もあります。
しかし一方で、当事者だけが「病気だから治せ」というものでもなく、環境調整として、その人たちが苦手な音や光の環境を変えてあげたり、その人たちが苦手な時間を守る、段取りを作る、優先順位をつけるのに対して、スケジュールアプリを使ってもらうなど、その人たちが生きやすくするための、環境を作っていくということも、大事であると思います。
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日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。
番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜
パーソナリティー:茨木 拓也(VIE STYLE株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花
配信スケジュール:毎週火曜日と金曜日に配信
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