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OpenAI社のGPT-3を使った認知症予防の研究から、認知症におけるDXの可能性を考える

こんにちは、neumoの山田です。
neumoでも、新しくnoteを始めました。ブレインテックに関することを中心に、書いて行きたいと思います。

第一回目の投稿は、認知症予防のテクノロジーについて。
認知症の人口は2050年には高齢者の4人に1人は認知症になるという予測がされていて、本当に大きな社会問題になっています。neumoが調べている範囲でも、認知症関連のブレインテック企業を多く目にするようになっています。(今年2月に「認知症予防DX & BrainTechレポート」を作成しました)

2022年に、GPT-3を使った認知症を予測する研究が公開されている

OpenAI社のChatGPTが話題ですが、同社の言語モデルであるGPT-3を使って認知症を予測する研究が、PLOS Digit Healthで公開されています。認知症のDXでも、AIが期待されていますね。

今回は、この論文の内容をご紹介します。

【参照論文】
Agbavor F, Liang H. Predicting dementia from spontaneous speech using large language models. PLOS Digit Health. 2022 Dec 22;1(12):e0000168. doi: 10.1371/journal.pdig.0000168. PMID: 36812634; PMCID: PMC9931366.

認知症患者の音声をテキスト情報に変換して、GPT-3で分析することで認知症を予測する

この研究では、2020年に開始したADReSS (Alzheimer's Dementia Recognition through Spontaneous Speech) Challengeという、認知症の予測技術を競い合う行う取り組みで公開されているデータセットを使用しています。

ADReSS Challengeのデータは、アルツハイマー病の患者と健常者の両方の自然な会話のデータが使われています。

GPT-3を使った研究者は、この発話データをテキストデータに変換して、分析に使用しました。

音声の音響特性を使う既存の手法と比べて、GPT-3を使うことで精度が高く予測


図は論文から引用

発話データから認知症を予測する方法として、音声の音響特性を使う既存手法が提唱されています(図中A)。

それに対して、GPT-3を使った分析では音響特性を使わずに、テキストデータ化したインプットを元に認知症予測を行っています(図中B)。その結果、音響特性を使う手法よりも精度が高く認知症の予測ができています。

GPT-3を使うことで、約80%の精度で認知症を予測

自然会話のデータから、GPT-3を使って約80%の精度で認知症を予測することに成功しています。

音響データは使わずにこの結果を出せているので、良い結果ではないでしょうか。

音声から認知症を予測する技術は既に商用化されている

現在医療現場で認知症のスクリーニングとして一般的に使われているMMSE(ミニメンタルステート検査)や長谷川式は、医師が10〜15分かけて検査をする必要があり、コスト面で課題があります。

自然会話からAIが認知症の予測を出来ることは、今よりも簡単に認知症の診断を受けやすくなるため、重要な技術ですね。

今回は会話データから認知症を予測する研究を紹介しましたが、実は音声から認知症を予測する技術は既に実用化され、いくつかの企業から製品もリリースされています。neumoの「認知症予防DX & BrainTechレポート」の中で具体的な製品を紹介しているので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

【クイズ】認知症の予測に、音声情報のどんな特徴量が一般的に重視されているでしょうか?

最後にクイズです。
認知症患者の音声情報から認知症を予測する技術において、以下のうちどの特徴量が一般的に重要視されているでしょうか?(GPT-4がこの問題を作ってくれました)

A) フォルマント周波数、音声信号のエントロピー、モーラの長さ
B) 音声の音高、音素の長さ、会話の題材
C) 音声の速度、音声中のためらいや繰り返し、語彙の豊富さ
D) 音声の音量、話し言葉のタイプ、語尾の使用頻度

回答はこちら(neumoのウェブサイト)


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