見出し画像

土器を見に行く 辰野美術館 その2

前回の土偶も最高だったけど、たくさん並んだ縄文土器だってやっぱりすばらしかった。目が追いきれない。
以下、順不同で目に飛び込んできたものを。


Vサイン、というかぷいサイン


のっけからカワイイ。
四隅先端が控えめにピースしてる。
縄文前期らしいんだけど、もう「四隅で何かやってる」が始まっている。
これで煮炊きしたら美味しくなりそう。


ちっちゃくてもワイルド


その隣にあった、すごく小さいやつ。
造形の詰めなさもカワイイ。写真で見るとあちこちに「顔みたいなの」が見えたりするけど、実物からはそういう感じは伝わってこない。


自信に満ちた「たわみ」


たわみに抵抗しない感じもいい。
「ろくろ」というハイテクノロジーはまだ登場していないようだ。
ゆがみには人間が投影されてしまうので、作る側はちょっと嫌だったのかもしれない。見る側にとっては、ただただ「具合がいい」ばかりなんだけど。

待ってました!おやつ!


昨日の高遠町歴史博物館でも気になった美味そうな窓枠。
もう勝手にアルフォートと呼んでしまう。
辰野にも美味そうなアルフォートはたくさんあった。
中でも一番美味そうなのがこれ。
見てるだけで食感がたまらない。


栗せんべい


こんなのあるんだ。四隅にアルフォート。
でも中の意匠にちょっと複雑さがあって、味より意味が勝ってる。立体物というより、おせんべい方面というか。
実物はもうちょっとペロンとしててカッコいいです。大きさも一枚100円で個包装されてレジ脇に置いてある感じ。
やっぱり美味そうだ。


唐突な現実


うおっ。と思ったのがこの毛虫。
配置に法則性が薄いので、かなり「這ってる感」がある。
実際、這ってたんだろうな。

しかし表現がやや、えぐい。
つくった人、毛虫嫌いだったんだろうな。
もういっそ、土器に押し付けて毎日見続けて克服してやると言わんがばかりの個人的パッションを感じる。そういうところは共感できそうだ。
しかし祭器に毛虫…色々すごい。


毛虫からワラジムシへ


かと思えば、隣のこちらには「逆毛虫」が。
毛虫じゃないかもしれないけど、隣の毛虫の大きさと「高低差」が似通っている。どちらかで型押しすると、もう一方のレリーフが出来る的な。

アルフォートの中に毛虫。やめて欲しい。
でも美味そうか?いや、まだちょっとハードルが高い。
そして何より、毛虫だとは限らない。


飛び交うマクドナルドかミトコンドリアか


毛虫じゃなくても、何かがピョンピョン飛び回っている。
枠組みをちゃんと作ったら、中はもう自由に何でもできるディスプレイになる。
絵画よりも、映像に近い感覚だ。
決め打ちの形よりも、動きを刻印したい、みたいな。


優等生とヤンキー


同じような時期の、同じような大きさの土器が、同じようなところから出たっぽいけど、印象がぜんぜん違う。
似たようなレシピを別の作者が作ったのか。


出来杉くん


こっちは端正。ていねい。
「土器づくりがうまい」のはこっちに見える。器として成立させよう、不安定なイキモノ性より、モノとしての神性を持たせよう、みたいな感じ。土器づくりを「道」にしようとしているのか。
ついつい漂う政治性。利休?


やりすぎくん


こっちはワイルド。端正さを否定してる。
土器は肉だ!と言わんがばかりのグニグニとした蠕動性。まっすぐさ、きちんとさ、はウチの祭器には持ち込ませないぜという強い意思。
縄文時代にも縄文復興運動があったかもしれない。ウネウネルネサンス。自然派?


土器すぎて、震えてる。

たぶん名人が作ったものじゃなさそう。
土器作りにプロもアマもいないということか。装飾のすべてが不安定で自信なさげに震えている。
で、結果的にかなり目を惹きつける。
土器がカワイイというより、土器の向こうに見える作り手がカワイイ。


宇宙的にスタイリッシュ


今回いちばんびっくりしたのが、縄文後期のお皿。
模様が内側についてる。
縄文土器の模様は外側についてるもので、内側は実用性百パーだと思い込んでいたら、さにあらず。見えやすいところには装飾を、というコペルニクス的転回にグッとくる。
理知的な線もいい。ワイルドな中期をちょっと見下してる感じもする。
不思議と外側の模様より、内側の模様のほうが宇宙感がある。
虚空に漂う視界に映るものと、器を覗き込んだ視界の奥にあるものは、同じものだったのかもしれない。
見てると「高尚したく」なってくる、スーパーエリート土器。


ポケモンだらけ


ちび土偶、バラバラ土偶もたのしかった。
元の形を失うほど、勝手な妄想が膨らむ。


あぁ?


ヤンキー頭。たぶん大きな土器の縁についてたやつ。いちゃもんつけてる。どんな時代だって不満はある。


引き抜かれた太陽


見づらいけど、太陽の塔の顔みたいなやつ。後ろの生々しさとサイズ感がくり抜いたサザエみたい。
サザエの蓋に顔があってもいいじゃないか。内臓がリアルでもいいじゃないか。

辰野美術館の土器コーナー、いつまでも居られそうだった。1階の企画展、2階の常設展、それに蓋をするみたいに3階の土器フロアがあって、幽玄な山(この日はすごい雨だった)を見せてくれる展望台も含めて、ちょっと隔世っぽくてよかった。
時間をとって何度でも行きたくなる。

このあとサウナに行ったけど、なんか、土器のほうがサウナだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?