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「彼らは心配もかけてくれる存在」 ~アップス・センター長が語る若者への想い~

「ねつせた!の居場所」は中高生に向けて居場所作りをしたいという想いから「日常に+α」をテーマに始まりました。

世田谷区にはさまざまな中高生のための施設がありますが、中高生の居場所といえば青少年交流センターを思い浮かべる人も多いでしょう。

そこでまずは、アップスのセンター長である 下村 一 さんに話を伺いました。

「アップス」とは?
希望丘青少年交流センター、愛称「アップス」。いつでも、気軽に使える若者のためのフリースペースとして開設されました。 コンセプトは、「家にも学校にもないものを。」
世田谷区船橋・旧希望丘中学校跡地に、2019年2月1日OPENした世田谷区で3番目の青少年交流センターです。
青少年交流センター|世田谷区ホームページ🔗

下村 一さん(アップス センター長)

にわ 私も利用者としてよくアップスに来ています。来る度にたくさんの利用者さんを見かけるのですが、アップスがこれだけ利用されている理由は何だと思われますか?

下村さん まずは、企画段階から若者が携わっていることだと思います。
中学校の跡地に若者向け施設をつくると決めた段階から、若者自身の意見を集めて施設の内容を決めました。当時の図面がほとんどそのまま建物になっているなんて珍しいんじゃないですかね。

にわ 今も、当時の図面は残っているんですか?

下村さん ありますよ。

にわ すごい!(笑) 他にも、アップスの特徴的な点はあるんですか?

下村さん ワンフロアで開放的なつくりになっています。靴を脱ぐスペースもあって寝っ転がれるって落ち着くでしょう。 

にわ 若者がゴロゴロしている様子はアップスの象徴っていう感じがします。

下村さん あとは、オープン前から準備委員会を作ったこともあると思います。アップスの家具を選ぶ時にも大手家具メーカーの方にプレゼンしていただいて、若者メンバーと吟味しながら選びました。

にわ ほとんど若者主体で作って来られたんですね…!

下村さん そうなんですよ。「言ったことが叶う雰囲気」があるのも、利用されている理由の1つかもしれません。

にわ なるほど! 具体的には、どのような方に利用されているのでしょうか?

下村さん 高校生世代が多いですね。中学まで世田谷区の学校に一緒に通っていたけれど、高校からバラバラになってしまう学生は多いです。しかしアップスでは、高校生になっても当時の中学生メンバーで集まる光景をよく見かけます。

にわ 卒業すると切れてしまう関係もあるのに、なんだか温かい話ですね…!

下村さん そうですね。このように、アップスの利用は口コミでも広がっていくと実感しています。あとは防音のスタジオもあるので、児童館とここを併用する人もいます。

にわ いろんな使い方があるんですね。ところで、私がアップスを利用していると下村さんが「パパ」と呼ばれている様子を見かけるのですが、一方でセンター長から見て利用者さんはどんな存在ですか?

下村さん 感動させてくれることもあれば心配することもあります。つまり、彼らは心配もかけてくれるくらい思い入れのある存在、ということです。彼らが自立した時に思い出してくれたらいいなと思います。

にわ 多様な若者が利用しているからこそですね。

いちか そんなアップスで働いていて、何か印象に残ったことはありますか?

下村さん 楽しいことはたくさんありますが、悲しい出来事も思い出します。それぞれのご家庭の複雑な事情などに触れることがありますが、どうにもできない時もあって…

いちか そういう時はどうするのですか?

下村さん 状況にもよりますが、まずは辛いことが何なのかを聞きます。ここの仕事は「聞く行為」を主体的にしていると思います。待っていても何も始まらないので。聞くことを続けていると、いつからか利用者も私たちを受け入れてくれて、いろんな話をしてくれるようになります。何かある時にポロッと話してくれたり。

いちか 学校ではあまり見かけない関係性ですね。なぜセンター長になろうと思ったのですか?

下村さん 中学校の時に出会ったサッカー部の顧問の先生みたいになりたいと思ったことがきっかけです。その先生の出身大学に行って、中学校の先生になろうと思っていました。勝つために走り込むなど、いわゆる型にはめた練習はしなくて、先生が楽しそうにしていた記憶があります。高校ではみんなバラバラになってしまいましたが、そこで芽が出た生徒が多くて、中学の時に勝つために練習をしたら優勝くらいできるけれど、それより高校でそれぞれが活躍するための力の方が大事だと教えてくれました。

いちか その先生の存在は下村さんの活躍を倍増させたんですね。

下村さん そして「こどもの城」を運営している財団に就職しました。30年くらいそこで働いていました。その後、埼玉県草加市の小さな児童館に行きました。児童館は18歳までしか対象ではないけれど、18歳で皆が自立しているわけではないから、その先も必要だと感じていました。そんな折、世田谷区の希望丘に新しい青少年交流センターができるという話があって、私が元々世田谷区民だったこともあって、ご縁をいただいたという感じです。

いちか 信頼と期待がここまで導いてくれたのですね。最後に、私たち「ねつせた!」を通して、何か若者に伝えたいことはありますか?

下村さん 若者は、何かと将来の夢を聞かれることが多いですが、今の時代自分の夢はなかなか決めにくいと思います。夢ほどのものはなくていいけれど、自分の好きなことは大事にしてください。好きなことをしていると、辛い瞬間も頑張れるでしょう。

いちか 好きなことを大切にすることはとても大切なことですね。

下村さん あと、若者も社会やコミュニティに対して影響力を持っていると考えています。普段は社会の一員だとは考えないけれど、若者は地域のコミュニティの一員です。コミュニティの一員であることは影響力を持っているということです。違和感があったらコミュニティに対して一緒に発信することも大事です。

いちか アップスでも、若者主体で変わったことは何かありましたか?

下村さん 小さなことですが、自販機の中身はいい例ですね。アンケートを取ったらみんなが投票してくれて。結果としてグミが入りました(笑)。全部ではなくても、若者は意見が通ったと実感できたでしょう。コミュニティの一員である実感とはそういうことだと思うのです。やりすぎはいけないですが、若者が声を上げたものは積極的に取り入れるようにしています。

いちか 若者主体で変えられることはたくさんあるんですね。

一同 今日はお忙しい中、ありがとうございました。

取材後記

今回のインタビューは下村センター長の若者への気持ちや、アップスが若者主体となって運営されていることを感じる機会となりました。アップスは、行ってみるとその良さがわかります。実際に「もっと早くから知りたかった!」という若者も多いそう。気になった方はぜひアップスに足を運んでみてください。ねつせた!の居場所プロジェクトでは今後も世田谷区の居場所に関わる方を取材していきます。

アップス(希望丘青少年交流センター)


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