「鳴蝉潔飢」(めいせんけっき)な根付
気高く清らかな蝉は「露」を糧とする
蝉は羽化したあとは何も食べずにいると昔は思われていたらしく
(実際は木の樹液などを吸っているのですが)
“飢えても俗世の食べ物を口にせず「露」だけを糧にして生きる気高い生き物”→【信念を変えず気高く高潔な心を持つことのたとえ】として
この
鳴蝉潔飢
という言葉ができたと言われています。
また蝉は幼虫の姿で地中で何年も生き続けたのち、地上に出て羽化して成虫となるので、実は幼虫の姿の方がその生において長い生き物でもあります。
そんな神秘的な蝉を一つの根付にしたのがこの「鳴蝉潔飢《めいせんけっき》」
“生命”を象徴させる玉(球体)を抱えた地中の幼虫が、今まさに空を飛ぶ蝉へと羽化する姿を掌に入る根付に凝縮させてみました。
制作過程をほんの少し
左刃(ひだりば)という特殊な彫刻刀を使い、黄楊(つげ)材を彫って根付の形を作り、天然染料のみで黒く染め上げ、最後に白蝶貝」と18金を象嵌して仕上げます。
羽化する成虫の羽には、根付の雅号「陽佳」の篆書文字を羽の翅脈のようにデザインして彫ってあります。↓
玉の傍らにはそれしか口にしないと言われる「露」を白蝶貝で何粒か象嵌し、その「露」から生命エネルギーが蝉へと昇っていくのを暗示させる軌跡を金で象嵌(18金)しています。
そしてその生命エネルギーが金の軌跡を通り、羽化した蝉に伝わった証として、額の「三つの単眼」を金の象嵌で表現しました。
洋画家【絵画】と根付師【根付】のコラボレーション
洋画家 常世 隆 氏が、この根付にインスピレーションを感じ、桐箱に絵を描いたことで、「鳴蝉潔飢《めいせんけっき》」に新たなエネルギーが加わりました。
根付は実用品であるととも飾っても楽しめる鑑賞美術品でもあります。
洋画家が桐箱をキャンバスとして描いた【絵画】と立体である【根付】、
ともに飾ることで新しい魅力が生まれます。
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