人生リブート指南(9)住居費が生活を左右するから住まいについて考え直さないか
唐突ですが、あなたの現在の住居費はおいくらですか?
都会の中心部で20平米くらいのマンションだったら、まぁ7~8万円くらいでしょうか?
それでも昔よりはずいぶん安くなったんですよ。
バブル期には地価の上昇に伴って家賃も高騰し、都心で浅野温子が住んでそうな小ぎれいな物件を借りようと思ったら軽く10数万円はしました。
その代わり、松本零士の「男おいどん」テイストの四畳半物件もまだ存命で、私はそちらの住人でした。
社会人初期時代に住んでたのは山手線の「恵比寿駅」から徒歩20分、地下鉄日比谷線「広尾駅」から徒歩10分の部屋で、四畳半キッチン半畳トイレ共同というスペック。
ボロい代わりに家賃は電気ガス水道代と併せて2万5000円と激安でした(水道光熱費はアパート全体分の頭割りなんで月ごとに上下するんです)。
所在地は、現在の「恵比寿ガーデンプレイス」前の道路をJRの線路に背を向けて直進し、突き当たったところ。
「すごい! そんな超一等地に住んでたんですか!!!」とよく感心されるんですが、私がいたのは「バブル期の地上げによって地元商店があらかた無くなった」ゴーストタウンみたいな恵比寿。
地元だと買い物が不便だったので、隣の目黒駅前まで足を運んでました。
銭湯は近かったんですが、前に書いた通り「風呂屋の営業時間に支配される日々」にいいかげん辟易してましたんで、どうにかして私は「内風呂アリ生活」へとステップアップしたかった。
とはいえ月に10万円以上の家賃はさすがに払いきる自信がなく、「どっかに安い風呂付きってないかな~」とはかない願いを抱きながらウツウツとしておったんです。
都心を離れて郊外に行けば安い風呂付もありましたが、「満員電車通勤は死んでもやらない」と固く心に決めていた私にその選択肢はなかった。
あくまでも「東京中心部の安い部屋」限定で探してたんです。
あるとき、アパートからすぐの恵比寿エリアで7万円台の風呂付きワンルームアパートが出ているのを見つけました。
「やった!」と小躍りしながら早速内見に行ったんですが、そこは周囲を隣家に取り囲まれた「真っ昼間なのに窓を開けても真っ暗で電気をつけなきゃ何も見えない」という小部屋。
広さも今住んでるアパートより狭い四畳くらいしかありません。
「どうですか? こんな出物は二度とないかもしれませんよ」と不動産屋には言われましたが、吸血鬼以外で「快適だ」と思う者はいなさそうな部屋だったんで、さすがに辞退しました。
それからしばらくして、京王線沿線の笹塚(渋谷区)に住んでいる友達の家に遊びに行きました。
新宿から近いのに賑やかな商店街があって暮らしやすそうで気に入ったんで、帰る途中に駅前の不動産屋を訪ねました。
お店の方に好感を持っていただくべく、今までの人生で最高ランクの低姿勢で「……あの~7万円台で風呂付きの部屋ってあり……ますか……ね……?」と訊ねた私。
すると机に向かって書き物をしていた店の親父は振り向きもせず、無言で「シッシッ」と、こちらを手で追い払ったんです。
物件がダボついて借り手市場に転じている昨今なら「はいはい、7万円台ですか。どうぞこちらへ」と歓迎してくれるところでしょうが、バブル期の不動産屋は超イケイケ状態でものすごく居丈高だったんです。
それから間もなくバブルは弾けて「絶対に下がらない」とされていた不動産価格は目も当てられないほど下落しましたが、あれは「客を客とも思わない無礼な接客のバチが当たったのだ」と私は思っています。
前述の通り、現在の賃貸業界は「供給過多、需要減」で、大家の態度もかつての「貸してやる」から「借りてください」に変わっています。
それでも東京の不動産相場は「昔より安くなってはいても都外と比べるとまだまだ高い」。
生活費の大半を占めるのは「住居費」ですから、この部分をどのようにするかで生活が左右されます。
収入が同程度の2人なら「住居費を安く収めてるほうがハッピーになれる」というわけ。
ラッキーなことに昨今は「テレワーク」というのがにわかに現実化し、「満員電車での遠距離通勤ナシで郊外住まいができる」ようになりました。
もちろん全ての職種がテレワーカー化可なわけではないですが、「テレワーク可能な職種はテレワークに切り替え、通勤するのは不可な職種のみにする」というふうにすれば「人口(税収)の地域差」や「交通の混雑」などの問題が解決できると思うんです。
もしもバブル期に今みたいな状況になっていたら私は迷わず都心を離れていたでしょうし、笹塚の親父にムカつかされることもなかったでしょうさ。
画題「30年以上経っても忘れてねーからな笹塚の不動産屋の親父よ」