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価格ではなく、価値で勝負する
あなたはリアル書店とネット書店、どちらをよく利用していますか?僕自身、最近はリアル書店に足を運ぶ機会が増えています。店内をぶらぶら歩きながら、新しい本との出会いを楽しむ時間は、何とも言えない喜びがありますよね。
ところで、アメリカの書店チェーン「バーンズ&ノーブル」をご存知でしょうか?1886年に創業し、全米各地に大型書店を展開して成功を収めた企業です。
しかし、アマゾンの台頭やデジタル化の波に押され、一時は衰退の一途をたどりました。オンライン販売の強化や独自の電子書籍リーダー「Nook」の導入、さらには店舗の半分以上をおもちゃやカード類の売り場に変更するなど、さまざまな対策を講じましたが、思うような成果は得られませんでした。
2018年には20億円の損失を計上し、1800人の正社員を解雇。ほとんどの店舗がパート従業員によって運営されるなど、倒産寸前の状況に追い込まれました。
しかし、2019年にヘッジファンドによる買収が行われ、新たにジェームス・ドーント氏がCEOに就任すると、状況は一変します。ドーント氏は、イギリスの書店チェーン「ウォーターストーンズ」の再建を成功させた実績を持つ人物です。彼がバーンズ&ノーブルで実施した改革は以下の通りです。
値引きの廃止:欧米では書店が自由に価格設定を行えるため、価格競争に陥りがちです。ドーント氏は「2冊買うと1冊無料」といったキャンペーンを中止し、「本の価値を自ら下げることはしない」との信念を貫きました。
出版社からの宣伝費の受け取りを停止:宣伝費を受け取ると、その出版社が推す本を目立つ場所に配置せざるを得ません。ドーント氏はこの慣習を廃止しました。
権限の委譲:本社が一括で品揃えを決定するのをやめ、各店舗のスタッフに決定権を与えました。これにより、地域の特性や顧客のニーズに合った品揃えが可能となりました。
これらの改革により、バーンズ&ノーブルは復活の兆しを見せています。アマゾンはユーザーの過去データを基におすすめの本を表示しますが、新たな世界との出会いという点では、リアル書店の魅力には敵いません。
この話は、書店経営だけでなく、飲食店や物販店など他の業種にも通じるものがあります。価格ではなく価値を伝えること、自分たちの店づくりに主体性を持つこと、そして会社の理念を理解しているスタッフに権限を委ねること。「最も重要なのは、店に来る喜びを顧客に提供すること」と語るドーント氏の言葉には、深く考えさせられるものがあります。
僕たちも、自分たちの仕事やサービスにおいて、お客様にどんな喜びを提供できるのかを改めて考えてみませんか?それが、これからの時代に求められる本当の価値なのかもしれません。
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