
小さな欠点が、大きな強みに変わる瞬間
今から60年前、1955年。東京通信工業株式会社(東通工)が日本初のトランジスタラジオを発売したんです。
当時、テレビ放送はすでに始まっていたけれど、お茶の間の主役はまだラジオ。しかも、真空管ラジオってやつ。大きくて、しっかりとした作りで、音もなかなか良かったんです。家族みんなでその大きなラジオの前に集まって、音に耳を傾ける。そんな時代でした。
でも、トランジスタラジオは違ったんです。小さくて音が悪いし、感度もイマイチでノイズも多かった。でも、それでも東通工はこのラジオを世に送り出しました。「今からラジオを出しても、もう無理だろう」と言う人も多かったみたいですね。だって、当時の真空管ラジオの普及率は74%にも達していたから。
でも、東通工の経営者たちはこう考えていたんです。
「74%って、世帯単位での数字だよね。でも、これを個人単位にしたら、もっと大きな市場があるんじゃないか。持ち運びができるっていう点を押し出せば、十分に売れると思う。」
たしかに、トランジスタラジオは音が悪かったり、感度が低かったりしたけど、唯一の強みは「持ち運べること」だったんですよね。その強みをしっかりとアピールして、勝負することに決めたんです。
その結果、トランジスタラジオは国内外で爆発的に売れて、東通工は3年後にはSONYという名前に変わりました。
ここで伝えたいのは、完璧な商品なんてないってことです。どんな商品にも、メリットとデメリットはあります。逆に、一見デメリットに思えることが、意外と特定の場面では大きな強みになることもあるんですよ。
大事なのは、自分の商品やサービスの強みをしっかりと見つけて、それを必要としている人にどう伝えるか。それが一番大事だと思います。
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