「データ活用×スマートファクトリー」が製造業の未来を変える
デジタル化やデータ活用によって製造業に変革をもたらし、ひいては一国の産業構造全体をも大きく変えると言われている「スマートファクトリー」の取り組み。既に国内外で数多くの先進事例が出てきていますが、今回はあらためてスマートファクトリーの基本をおさらいするとともに、これを実現する上でデータが果たす重要な役割について解説したいと思います。
「スマートファクトリー」とは一体何か?
皆さんは「スマートファクトリー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。製造業の会社で働いている方々にとっては馴染み深い言葉だと思います。これは、IoTやAIといった先進技術を使って工場のデジタル化を推し進め、ひいては企業や業界全体の収益や価値を高めていこうという取り組みのことを指します。
このスマートファクトリーのコンセプトは、ドイツが2011年に打ち出した産業政策「インダストリー4.0」にまで起源をさかのぼることができます。ICT技術を総動員して製造業のデジタル化を進め、「第四次産業革命」を成し遂げようというインダストリー4.0のコンセプトは、世界的に大きな反響を呼び、これに伴いスマートファクトリーというキーワードも一気に注目されるようになりました。
日本政府もこうしたインダストリー4.0やスマートファクトリーの潮流を踏まえた上で、2017年に独自の産業政策「コネクテッドインダストリーズ」を打ち出しています。その名の通り、機械や人がデータを介して「つながる(コネクテッド)」ことによって産業や社会全体に新たな価値を生み出そうという取り組みで、現在政府が提唱する未来の社会像「Society 5.0」のコンセプトとも相通ずるものがあります。
こうした政府の動きに呼応するように、民間の製造業各社も激化するグローバル競争を勝ち抜くための主要戦略として、スマートファクトリーを積極的に取り入れるようになりました。コスト競争力に優れる新興国のライバル企業との競争に打ち勝つためには、デジタル技術を活用してモノ作りの効率を高めていくしかありません。また少子高齢化による人手不足が今後ますます深刻化すると予想される中、デジタル化やデータ活用による業務効率化は国内製造業にとってまさに「待ったなし」の状況だと言えます。
デジタル化とデータ活用でモノ作りの課題を解決
スマートファクトリーを構成する技術要素の筆頭は、何といっても「IoT(Internet of Things)」でしょう。工場に設置された各種設備にIoTセンサーを取り付け、それぞれの稼働データを収集・集計することで「工場の見える化」を実現することが、まずはスマートファクトリー実現へ向けた第一歩となります。旧来の人手による「ざっくりとしたチェックや報告」と比べて、IoTデータはより詳細かつタイムリーに稼働状況を示してくれます。このデータに基づいて、設備の稼働計画や人員配置、工程などを最適化すれば、より生産効率を高めることができます。
さらにこれらIoTデータにAIを組み合わせることで、より高度なデータ活用も可能になります。例えば過去の稼働データをAIに学習させてモデルを構築すれば、直近のデータの傾向から設備故障の予兆を検知できるようになります。この仕組みを活用して、故障前に先回りして設備をメンテナンスできるようになるならば、故障による稼働停止がほとんどない「止まらない工場」も実現できるかもしれません。事実、既にこうした「予兆検知」のソリューションはさまざまなICTベンダーから提供されており、その導入により成果を上げている企業も少なくありません。
さらには、工場の現場で長年培われてきた業務ノウハウを次世代に継承していく上でも、データ活用が大いに役立ちます。現場のノウハウは得てして熟練担当者の頭の中にしか蓄積されず、他の担当者に引き継がれないまま属人化していってしまいがちです。しかし熟練者のノウハウをデータによって可視化できれば、その担当者が高齢になり退職してしまった後も次の世代にしっかり引き継がれます。少子高齢化による人手不足が今後ますます深刻化するであろう日本の製造現場においては、まさにこうしたデータ活用が切実に求められているのではないでしょうか。
スマートファクトリー実現の鍵は「データ基盤」
さらに近年では「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が大きくクローズアップされるようになったことで、スマートファクトリーへの注目度もさらに高まることになりました。DXは、デジタル化やデータ活用によって企業のビジネスモデル全体の変革を目指す取り組みです。従ってDXの文脈上で語られるスマートファクトリーも、単なる工場の効率化だけに留まらず、複数の工場間でデータを連携したり、さらに本社の基幹システムとも密接にデータを連携させたりすることで、より「全体最適化」を目指す方向へと進化を遂げつつあります。
さらには、最近取り沙汰される「トレーサビリティ」「カーボンニュートラル」といった社会課題に対応する上でも、スマートファクトリーによるデータの収集・分析・可視化が欠かせません。こうした課題解決のためにデータを活用するには、工場から収集したIoTデータや二酸化炭素排出データなどをデータベースで一元管理する必要がありますが、IoTデータは容量が膨大に及ぶため、ビッグデータを効率的かつ安全に管理できる最先端のデータベース技術が求められるでしょう。
これらのデータに加えて、基幹システムのトランザクションデータも同じデータベースに集約してより高度なデータ活用を目指すとなると、データベースにはさらに高い要件が求められます。ネットアップではこうした製造業のニーズにお応えできるよう、幅広いデータベース製品のラインアップを用意しています。オンプレミス環境で大規模なDWH(データウェアハウス)環境を構築できるストレージ製品はもちろんのこと、クラウド環境上で迅速かつ柔軟に大規模データベースを構築・運用できる製品も提供しています。
こうした製品を活用しながら、社内横断で広く製造データや経営データを共有できるデータベース基盤をいかにうまく構築・運用できるか。スマートファクトリーの成否は、まさにこの点に懸かっていると言っても過言ではないでしょう。