2000年からWebサイト制作を振り返えると「デザイン」の対象が組織領域へ変化してる話
Twitterでこんなことをぼそっとつぶやいた。
思ったよりも色んな人から反応をいただいたのと同時に「果たして世の中的に"Webデザイン"に求められる期待値が変化しているのか、それとも自分の視座が経験年数で上がってきて、つまり成長してるのかしら」って話なのか。
あらためて書き出すことで見えてくる事がありそうかも。
と、あくまで私個人として、2000年頃からWebサイトを中心とした泥まみれの制作現場目線でふりかえりながら、繋がってきたと感じた出来事(最近やってる仕事や注目しているテーマ)につなげて俯瞰的にまとめてみようと思います。
2000年前半:「作ることが価値」なWeb制作
アルバイトでWeb制作に関わった1999年、「Webデザイナー」として就職した2000年。Web制作業界は超黎明期でFlashもバージョン4〜5あたりの全盛期で「動く=インタラクション=すごい」なわかりやすい世界。
2000年〜2001年に開催されたインターネット博覧会なんてイベントが政府主導で執り行われ、Webページのレイアウトはtableタグで構成されていた。「space.gif」「一発太郎」で口角上がった人は確実にインターネット老人会。私は2ちゃんよりも関心空間が好きだった。
Googleが徐々に日本にも広まりつつあるものの、ブログも始まったばっかりで一般的じゃないし、情報も作り手もまだまだ少ないので「作れる人=価値」な状況。
企業のWebサイトも「紙面の会社概要」の代替なものが多く、MovabelTypeが2001年、Wordpressも2003年誕生で日本でのビジネス利用もまだまだ。企業サイト構築でCMSを使うこともなく、Dreamweaverのテンプレートを使ってた。「Webデザイナー」が打ち合わせからデザインからコーディングまで一気通貫で学祭みたいな制作現場だった。
2000年中盤:システム化やデータベースとの連携が増え、リッチコンテンツも高度化
単純なアニメーションでスプラッシュ画面は徐々に減っていったものの、Flashサイトの構築も徐々にナレッジが貯まってきた事や、マッシュアップアワードなどが象徴されるように、APIが使われたり複数の技術を組合わせたものが増えてきた。Flashもサーバのデータ連携が盛んに。
UNIQLOCKをはじめ、ユニクロがカンヌ国際広告祭をはじめ世界三大広告賞を獲ったりしてWeb制作業界を賑わせ、私もちょうど宣伝会議のセミナーをうけていたのもこの頃で、インタラクションコンテンツ全盛期。
2006年には、肩書としてはWebデザイナーからWebディレクターになっていたものの、やってることはあまり変わらずFlashゴリゴリのコンテンツつくったりしつつ、外部の協力会社さんにコンテンツ作っていただいたり。
一般的なWebサイトもあったけど、Flashコンテンツ多かった。
一方で数百ページのサイトを全て静的に構築し、毎月ファイルリストで更新メンテナンスをする事をしてた。Excelを使ったファイルリストの技術は完全にこの頃叩き込まれ、今でも地味に活躍してます。
CSS niteは2005年に始まったそうな。
2010年前半:サイト制作の規模が徐々に大きく
2008年にad techが日本に上陸したりWordbenchが始まったり、国内でもカンファレンスイベントがいっぱいでてきた。
CMS界隈ではMovableType VS Wordpressみたいな構図もありつつ国産CMSも出てきて、制作会社に発注しないとできなかったWebサイトの更新作業・情報発信のハードルが下がり、企業のWebサイトもページ数がどんどん増えていく。
銀行や航空会社やナショナル企業をはじめ、サイトの規模が大きくなってくると、目的の情報へ迷わずたどり着かせるための高度な情報設計やUIの工夫が徐々に入ってくるようになる。サイトの規模が大きくなると、制作会社も一人でできることの限界にあっとういうまに到達するので、当然分業化が進んでくる。
そしてPC中心(ガラケーサイトの仕事は私はあまりやってなかった)だった市場を一変させた「スマートフォン」が出てくる。
2009年に発売されたiPhone3GSは私の手元にもやってきてTwitterの面白さを教えてくれた。爆発的にユーザー数を増やしPC以外のアクセスが徐々に増えていった。
2010年中盤:コンテンツ作りすぎたサイトが乱立。高度設計が必要なリニューアルが増えてくる
スマートフォンの普及と広告の高度化に伴い、ユーザーの行動に応じた広告や再訪問や行動へ繋げるためのMAが導入どんどん増える。
2010年頃に海外で言われだした「グロースハック」やGitの普及もこの頃にかなり加速した印象。
Gitは多人数での制作現場にかなり多くの平和をもたらしたと思う。多人数での制作や「先祖返り」が減っていき、HTMLコーディングはtableコーディングやってたおじいさんには完全についていけない領域になった。
企業サイトをCMSで効率的に管理しながら、新しいコンテンツも少しずつ投下し、2010年中盤は「何年か運営し、数百ページのコンテンツ量になった企業サイトのリニューアル」が増えてくる。
ファイルリストをつくりコンテンツ構造を把握し、アクセス解析で過去のデータと現状を比較し、ユーザー属性や行動の変化を定量化。サイト構築した2010年前後から5年以上経つと、さすがに市場も事業も変化してきてるのでサイト自体も構造から見直さないといけない時期が同時多発的にあった。
「Webサイト制作」に方針や理念的なビジョナリーな視点と、この先どう発展していくと良いか?というロードマップを引き、具体的な施策に落としやすく拡張性も踏まえた設計が必要に‥といった具合に、Webサイト制作の高度化も一般化していたように思う。
ようやく本題。2010年代後半:情報設計から体験設計へ
新規のWebサイトもあるけど、今まであったものをリフレーミングする「Webサイトリニューアル」という仕事は引き続き発生していて、特に企業サイトの役割が「情報置き場」から「顧客接点」だったり「顧客と社内を繋ぐハブ」といった具合に、完全にビジネススキームの一部として扱われるようになった事もあり、Webサイトに求められる期待値が「業務効率化」だったり「より強い発信力」だったりに変わってきた。
また、ユーザーを巻き込みながらサイト運営側と相乗効果を生み出す情報発信元、といった「ああ、まぁWebの本質っすね」といえばそれまでだけど、不確定要素の多いユーザーの体験や行動を見越したWebサイト設計がもとめられるようになってきた。
いわゆるUXってやつか。。
アカデミック要素が強かったHCU(人間中心設計)やUX(ユーザー体験)といった概念が徐々に実践領域に入ってきて、日々共有され、デザインやWebサイト制作においても制作対象となるWebサイトだけでなく、その前後に見るもの触るものも含めて体験設計の思想が入ってくる。
ああもうめんどくさい。大好き。
2020年:企業のWebサイトは組織を前進させる「プロジェクト」に変化している
この1年ほどで一気に起きている変化として、2010年後半に一気に市民権を得たUX。で、企業サイトを構築する際のステークホルダーとしてよくある5つ。
・新規顧客
・既存顧客
・リクルーター
・外部ベンダー
・従業員
最後の「従業員」。ここに対する視点が変わってきた。
UXデザインやデザイン思考などで実践されてきた、ユーザーの課題をいかに解決するか?といったデザイン思考型のイノベーション発想から、2018年に出てきた経産省&特許庁の「デザイン経営」やロベルト・ベルガンティの「突破するデザイン」など、内発的動機を起点にイノベーションを生み出すといった動きが流行りだした。(いやあの決して揶揄してるわけでなく)
この流れ、単なる流行りじゃないかも?と思った。
企業のWebサイトの本質を考えた時、ステークホルダーである上4つは利益を生み出す意味で重要ではあるが「利益を生み続けることのできる組織」の方がより重要であり、「利益を生み出す組織を構成する従業員」が、ある意味一番重要な顧客では?と考えるようになった。
日々現場で奮闘する従業員に対し、未来志向のキレイな情報だけでなく透明性の高い情報提供をすることで、自社に対する信頼感や愛着を育み、内発的な動機に繋がる。UX(User Ecperience)とEX(Employee Experience)。
Webサイト制作を行う際、業理念、沿革、中長期経営戦略、人材育成方針などの資料を見て、その企業は何を目指すのか?社会に対してどうありたいのか?といった情報をあぶり出す。そのプロセスには、当然ながら担当スタッフの方をはじめ、徐々に他のスタッフも巻き込みながら「なにか面白そうなことをやっているぞ」というムードを作る。
企業のWebサイトリニューアルを通じて改めて企業の本質を明らかにし、整理しビジュアライズするプロセスを通じて浸透させ、変化の起点になりえるかも?というのが、私の中で起きたこの1年の大きな変化。
それも、最近こそこそ学習しているミミクリデザインさんのWDAでのインプットを通じて確信に近づきつつある。
とはいえ、まだまだこの分野に関しては初学者だし実践に落とし込めていないので、仮説の域を脱していないのが正直なところ。現在進行中の案件はEXの考え方に沿ったプロジェクトとして進行中なので、徐々に具体化していく中で輪郭が見えるように取り組んでいければと考えています。