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【ネット歯科大】歯科医師が有する全身の知識

 近年のさまざまな研究により、口腔の状態は全身の健康と大いに結びついていることがわかってきました。
 
 たとえば、歯周病の患者さんでは糖尿病や循環器疾患、早産や低体重児出産などが生じやすいと知られています。
 
 現在では医師と連携しながら歯科治療を行うことは当然のものとして考えられています。
 
 実際に医科歯科連携を促進する方向へルールの変更が行われており、歯科医院から医師に患者さんの病状を問い合わせたりすることが重要とされています。
 
 歯科医師は歯学部での6年間の学びの中で、全身のことについても学びます。ただし、学びの中心はもちろん歯や口のこととなります。したがって、全身のことを学ぶための時間は限られています。
 
 歯学部を卒業後、1年間以上の研修を経て、その後も学会や研修会などにおいて全身の健康や病気について学ぶ機会は多くあります。このような流れの中で歯科医師は全身についての知識を増やしていきます。
 
 では、歯科医師はどのくらい全身のことについて理解しているのでしょうか。
 
 これは歯科医師の専門性や立場によって大きく異なります。たとえば全身管理を行う歯科麻酔学を専門とする歯科医師は、一般の歯科医師よりも全身への理解が深いことは当然のことです。
 
 その中でも、最近の研究から、歯科医師がどのくらい全身のことについて知っているかをうかがい知ることができます
 
 歯周病と心臓血管疾患とは関連があり、また両疾患のリスク因子にも共通するものが多いことが知られています。共通のリスク因子として、喫煙や糖尿病などが該当します。つまり、喫煙者や糖尿病の方では、歯周病や心臓血管疾患になりやすいといえます。
 
 歯周病と共通のものを含む心臓血管疾患のリスク因子について、歯科医師の理解を問うたところ、歯周病と共通した心臓血管疾患のリスク因子は多くの歯科医師が把握していた一方、心臓血管疾患だけのリスク因子については理解が乏しいという結果が得られました。
 
 さらに、若い歯科医師の方がリスク因子についての理解が良好であったとの結果も得られています。
 
 以上のことから、歯科医師が全身のことについて把握している範囲は、実際にその歯科医師が治療の対象とする疾患と関連がある部分までのことが多い、といえそうです。
 
 循環器疾患など生活の質(QOL)につながる病気の予防といったように、歯科医療の役割の拡大が期待されています。
 
神奈川歯科大学 青山典生 

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