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【ネット歯科大】栄養摂取のためにも口は大切
口は、その名のとおり、食べものの入り口です。しっかり食べて適切な栄養を摂ることは、健康維持の基本です。
そう考えると、口の状態が整っていないと栄養摂取が制限されてしまう懸念があります。
これまで、歯科治療による口の健康管理といえば、むし歯や歯周病の治療、歯を失ったあとに入れ歯などで回復することが主体でした。
しかしながら、最近の知見から口の健康維持にはそれだけでは不十分だとわかってきました。
口の機能として、食べものをかみ砕くことのほかにも、飲み込むこと、味を感じること、話すことなどがあります。また、口の状態は見た目にも大いに影響します。
そうすると、口の健康のためには歯の状態だけでなく、口の周囲の筋肉の状態や、舌の上などを含めた口の中全体の清潔度なども大事になってきます。
最近、口の機能のささいなおとろえを「オーラルフレイル」と呼び、機能低下を早期に発見して対応することの大切さが知られるようになってきました。
歯を含めた口の状態を整えるべき大きな目的には、栄養を摂るということがあります。歯科医療者はこれを念頭に業務をおこなわなければなりませんが、つい局所の問題があるとそれに集中してしまいがちです。
適切な栄養を摂るために、口をいい状態に維持しておく必要があるということは間違いないことです。
われわれの最新の研究から、発音にかかわる舌の運動の良しあしが味の感じ方にも影響しているという結果が出ています。また、歯の数が少ないと摂取する栄養素に違いがあることもわかってきています。
これまで、歯科医師として治療をしている中で、患者さんがどのような食生活を送っているのかにまで思いが至っていない部分もありました。
しかし、口の環境を整えるべきひとつの目標として「食べる」ということがあるわけですので、そのような視点も持ちながら歯科医療を行うことがさらに求められてくる可能性があります。
歯科学はこれまで以上に、栄養学と協調しながら研究や臨床での活動を進めるべきなのかもしれません。
栄養摂取のためにも、口は大切です。口の健康とともに、栄養摂取についてもあわせて考えてみていただくことが、健康へとつながっていきます。
神奈川歯科大学 青山典生