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【ネット歯科大】かむための筋肉

 食べものをかむことは、口の主要な機能のひとつです。かむことを咀嚼(そしゃく)運動といいます。
 
 咀嚼運動は、特に意識しなくてもスムーズにおこなうことができます。それでいて意識して早くしたり止めたりすることもでき、これは自動化された指令システムに基づくものであり、呼吸や歩行などと同様です。
 
 咀嚼がそのようにプログラムされているのは、それだけ生命維持に重要な動きだからといえます。
 
 さて、かむためには口を閉じる方向に筋肉を働かせる必要があります。
 
 口を閉じるための筋肉を閉口筋(へいこうきん)と呼び、4つの筋肉が該当します。
 
 主要な閉口筋として、咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)があります。なお、その他の2つは内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)という筋肉で、咬筋や側頭筋よりもさらに内側に存在します。
 
 咬筋は、頬から下顎につながる筋肉です。筋肉が縮むことによって、体の動きが生じます。咬筋が縮むと下顎が上がる形になりますので、口を閉じる動きやかむ動きになる、というわけです。
 
 側頭筋は、頭蓋骨の側面から下顎までつながっています。側頭筋が付着している頭蓋骨面は、けっこう広い範囲となっています。
 
 さて、顎関節症はさまざまなタイプに分類できるのですが、そのひとつに筋肉の痛みがあります。咬筋や側頭筋の痛みも顎関節症と判断するポイントのひとつで、筋肉を外から押して痛みがあるかによってチェックすることができます。
 
 たとえば歯ぎしりが激しい方の場合、咬筋や側頭筋の使い過ぎが原因で筋肉の痛みが生じていることがあります
 
 歯ぎしりやかみ合わせは口の中のことではありますが、関係する筋肉などを考えてみると、意外と広い範囲にまで関連があることがわかります。歯ぎしりがあることにともなって耳よりも高い位置である側頭部の側頭筋に痛みがあるというのは、まったくおかしなことではないのです。
 
 歯科医師は、解剖学の授業でかむための筋肉を含めた頭や首の筋肉についても学びます。口の問題の原因が口の中だけにあるとは限らないのです。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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