聖書の登場人物を学ぼう|ルツ記③
(全4回)
ルツ記3章 それぞれの願い
ルツ記は、神さまの約束の地からモアブの地というイスラエルの神さまを軽視するところへ逃げてきたエリメレク一家の話から始まります。
エリメレクの名前の意味は「神は王です」という名前ですが、その名前とは裏腹の行動をとったということです。
そして、エリメレクが亡くなり、結婚した2人の息子マロン(「柔和,心の優しさ」の意)とキリオン(「完全,完成」の意)も10年後亡くなってしまいました。
この家族は、エリメレクの妻ナオミと2人の息子のお嫁さん2人。女性3人になってしまいました。
その後、ベツレヘムでは飢饉が収まり、ナオミは2人の義理の娘を連れてふるさとへ帰ろうとします。
しかし途中でナオミは考え直し、2人の義理の娘を、それぞれの実家へ帰そうとします。1人は故郷へ帰りましたが、もう1人はナオミとともにベツレヘムに向かいました。
それがルツです。ルツは、ナオミを1人でベツレヘムに帰すことはできないという思いだったのでしょう。さらに、イスラエルの神を知り、その御方を自分の神さまとして生きていく覚悟をもってナオミについて行ったのです。
ベツレヘムに着いたものの、女性2人で食べていくためには“落穂ひろい”くらいしかありません。
ルツがナオミの許可を得て“落穂ひろい”に向かった畑は、ボアズという人の畑でした。ルツは、はからずもこの畑に導かれたおかげで、大麦と小麦の収穫時期に落穂ひろいをして生きていくことができたのです。
1.ナオミの願い
さて、ナオミはルツがボアズの畑に、はからずも導かれたのはイスラエルの神であることを確信していたようです。
ナオミは、ボアズの隣人に対して愛ある人格が備わっていること、そして自分たちの近い親戚であることから、ルツとボアズの出会いは神さまの導きであると確信したのです。
当時のイスラエルは神さまからの約束の地を継承していくことが求められます。
結婚もイスラエル人同士であり、律法を重視するならば約束の地を継承することが求められるのです。
ナオミは、ルツとボアズの信仰や人格を知っていましたから、2人が結婚に導かれれば良いと考えたのです。
現代人の常識から考えると、この記事を見るとびっくりするかもしれませんが、当時の結婚はいたってシンプルで、お互いが気に入ればその日からカップルになるというものです。
しかし、ナオミにとっては良い決断ではないかもしれません。 ルツは、ナオミにとって大切な働き手であることを考えると、ボアズとの結婚はルツという働き手がいなくなるのですから。
ナオミは、たとえ自分は犠牲になったとしても、これまでのルツの信仰や親切に応えたいようです。
2.ルツの願い
それに対してルツはどうしたのかを見ましょう。
ルツは、ナオミの願いをそのまま聞き入れています。ルツは、ボアズをどのように思っているのかを自らは言いません。
ナオミの言うことをそのまま受け入れて、そのまま行動しているのです。
ナオミとルツの関係がどれほど信頼関係で結ばれ、また尊重し合っているのかお分かりいただけると思います。
この時代、律法はありましたが、おのおの自分の目に正しいことを行っていた時代です。にもかかわらずルツは義理の母の言うことを敬い行動するのです。
ルツもまた、ナオミのように自分のためではなく、ナオミの願いを成就させるために行動しているのです。ルツ記が最も美しい物語と言われる所以はここにあります。
3.ボアズの願い
では、ボアズはどのように願ったのでしょうか。
まず前提として、ボアズにとってはこの結婚は経済的なメリットはありません。むしろマイナスです。しかし、彼は一切そのようなことに心はありませんね。
4章でさらにはっきりしますが、ボアズはルツやナオミのことだけを考えています。自分のことを計算に入れていないのです。その証拠に、彼よりも近い親戚がいることを正直に言っていますし、その人が責任をもってくれるならばそれで良いと言っているのですから。
また、この求婚がルツ自身から出たことではないこともわかっているように見えます。
ボアズは、ルツの信仰と義母に対する愛を評価しています。ただそれに応えたいと願っています。ボアズは朝方まで待った後に、ルツにたくさんの大麦をもたせて帰らせたのです。
なぜ、ナオミもルツもボアズも自分ではなく隣人を愛する心や行動をもっていたのでしょうか。それはイスラエルの神さまが彼らの中心にあるからです。神に信頼し、それを拠り所としているからです。神を愛するがゆえに、神の願いを自分の心とすることができるのです。
この3人はそれぞれの願いを成就させたいということを通して、実は、隣人を愛するという神さまの願いを達成させているのです。
私たちが、憧れる美しい真実の物語の裏には、神さまを信頼し、そこに生きる覚悟をした者の信仰によることが教えられます。