ありがとうナオミちゃん[詩]
ありがとうナオミちゃん
ほんの少し住んだあの場所で
ナオミちゃんに会えたのは
幸運でした
ナオミちゃんの歯に衣着せぬ物言いも
喋りだしたら止まらない関西弁も
妙なとこで気弱なところも
どんな坂道も駆け上る健脚も
体を動かす手を動かすことが好きなところも
雷がなると布団をかぶって泣いてしまうとこも
ああ なんてナオミちゃんなんだろうって思います
あんなに大雑把な性格なのに
ナオミちゃんがひとたび手を動かせば
作られるのはハッとするほど細やかで
バランスのとれたもの
センスいいね、って言ったらナオミちゃんほやろ!って嬉しそうだったけど、本職は彫金師だったんだね
ナオミちゃんの作ったリング見たときは
言っては悪いけど、ナオミちゃんが作ったものとは思えない繊細な可愛いらしさだったよ
ぼくは自分のことを話すのが得意じゃなくて、だけど部屋に入れば分かるよね
山積みの本とか、妙なフィギュアとか自作の飾りものとか、植物ばっかな部屋
「○○ちゃんも作る人なんやな」
と言ってくれたとき、
そう、まさにそうなんです!
誰にも言ってないけど、作ることが好きなんです
表現欲求凄いんです
何か作り出す時が幸せなんです
ってやっぱり口には出してないけど
突き抜けて誇らしい気分だったよ
小説書きますって言うと、一歩後ろにひかれるんだよ
演劇やってましたって言うと、三歩後ろにひかれるんだよ
○○が人とずれてるのは、芸術家だからだって言われるんだよ
理解しなくていい柵の中に囲いこまれた気になるんだよ
本が好きです
映画や舞台が好きです
そう言うふうにしか言わなくなったよ
ナオミちゃんにも最初はそうだったね
でもナオミちゃん
自分で作るのは楽しいよなぁ
芝居ええやん、もうやらへんの?
楽しいよな
楽しいよな
小説とかほんま頭ええわって笑うから
頭ええのは書けんけど、って言ったら
おもろいわと笑う
その変な関西的ノリが面白くて
ナオミちゃんといたら肩の力抜けるし
ナオミちゃんといたら無理しなくていいし
ナオミちゃんのいない土地に引越したのは
寂しかったし
公共の荒れた花壇に
好き勝手に花植えて
ゲリラガーデニングって言うんだけどあれ
硬い根っこシャベルカーみたいに掘ってたよね、ナオミちゃん
頼もしかった
何植えるか○○ちゃんに任せるで、って頼りにしてくれて
嬉しくて
一緒に植えて楽しかった
今年の夏は暑かったけど
枯れてないかな
ローズマリーはイイとしてヒューケラとか持ち堪えてるかな
ナオミちゃん忙しくするのがサガだから
荒地ガーデンまではもう手が回らないかな
だんなさん元気かなナオミちゃんも元気かな
年賀状の返事くれなかったけど
来年も出していいかな
毎日は慌ただしくて
特に話すこともないけど
「○○ちゃんは作る人」って言ってくれたこと
たまに思い出すのは
少し迷ってるときだよ
ナオミちゃんが言ってくれたと思うと
やれる気になるから不思議だね
ありがとうナオミちゃん