要素の量:競技課題(情報)の負荷
一言でいうと
競技課題がワーキングメモリに与える認知負荷の内、要素の量の負荷です。
競技課題の作業量や、扱う道具・部材・機材などの量です。2つに分かれます。1つは客観的な要素の量です。誰が見ても多い、少ないと感じる量のことです。例えば、10個のものを作らなければいけない場合と比べて、100個のものを作らなければいけない場合の方が、やることの量は多くなります。
もう1つは主観的な要素の量です。人によって多い少ないの感じ方が変わるもののことです。例えば、1個のものを作る場合でも、非常に精度の高い作業をする人は、精度の低い作業をする人よりも、要素の量を多く感じます。
何が負荷になるのか?
要素の量が多いと、ワーキングメモリ量を多く消費します。人が一度に覚えておける量(短期記憶)はおよそ7つと言われています。これが、何か作業しながら覚えておける量(ワーキングメモリ)となると4〜5になると言われています。要素の量が多いほど、技能者が作業中に覚えておきながら作業する量は増え、ワーキングメモリに大きな負荷がかかります。負荷が限界を超えると、忘れたり、やり間違ったりが、増えてしまいます。
初心者と熟練者の違いは?
初心者
初心者は、その分野の知識(領域固有知識)や、その知識を入れておく引き出し(スキーマ)がまだ未熟です。そのため、あまり多くの要素を頭に入れておくことができません。比較的少ない要素の量でも、ワーキングメモリが圧迫され、忘れてしまったり、やり間違えたりします。
熟練者
熟練者はその分野の知識(領域固有知識)や、その知識を入れておく引き出し(スキーマ)が発達しています。
そのため、いくつもの要素を1つのパターンとして覚えておいたり、既に持っている引き出しから取り出したりすることができます。ドラえもんの四次元ポケットのように、容量制限なく記憶できるようになることもあります(長期ワーキングメモリ)。
そのため、要素の量が的多くても、ワーキングメモリがあまり圧迫されず、速く正確な作業が可能となります。
日常ではどんな場面で起こる?
大きな駅の構内図や、初めて行くお店のメニュー等は、いろいろな要素がいっぺんに目に飛び込んできて、理解するのに時間がかかります。要素が多すぎて、認知負荷が高く、処理が追いつかないことが理由の一つです。一方で、小さな駅や、メニューの少ないお店では、それほど理解に苦労しません。
仕事に置き換えると、プロジェクトやものづくりのプロセスが当てはまります。
チェックの仕方
自分が何かの作業やタスクに取り組んだ時を振り返ります。
そしてこの認知負荷を、
「1.少ない~5.多い」の5段階で回答します。
※私たちの認知負荷は、Swellerらの提唱する認知負荷理論に基づいています。
Sweller, J., van Merriënboer, J. J., & Paas, F. (2019). Cognitive architecture and instructional design: 20 years later. Educational Psychology Review, 1-32.
※認知負荷理論では、認知負荷を課題外在負荷、課題内在負荷、課題関連負荷に分けていますが、私たちはの測定では、これらを区別していません。その理由として、外在負荷と内在負荷の分類が、学習教材やカリキュラム作成等に資する知見を得ることを目的として行われていること、技能五輪の競技課題においては両者の区別が職種依存的で困難なこと等があげられます。