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全体的な難易度:競技課題(情報)の負荷:

一言でいうと

競技課題の全体的な難易度です。2つの視点で捉えることができます。


1つは客観的な難易度です。多くの人にとって難しいと感じる難易度です。例えば、1時間で10個のものを作る場合と比べて、100個のものを作る場合の方が、難易度は高くなります。


もう1つは主観的な難易度です。人によって感じ方が変わるもののことです。例えば、「1時間に100個のものを作る」という課題があったとして、1時間で9個が限界の初心者と、1時間で150個を作れる熟練者では、難易度の感じ方は変わります。

難易度そのものは抽象的です。しかし抽象的なものを、具体的なことを評価した後に評価すると、その客観性が高まると言われています*1。したがって、ここまで見てきた「要素の量・複雑さ」「工程の量・複雑さ」を先に評価し、その上で難易度を評価すると、客観的に難易度をとらえやすくなります。


何が負荷になるのか?

難易度は、「無理かもしれない」という感覚と結びつきます。「無理かもしれない」と思った時、人は考えが止まったり、行動をためらったりするものです。難易度が高いと感じるものは、先が見通せなかったり、失敗するイメージが浮かんだりします。その結果、取り組む前から、イラ立ちや不安、落胆などのネガティブ感情が高まることがあります。これらのネガティブ感情が高すぎると、ワーキングメモリの働きが低下してしまいます。


初心者と熟練者の違いは?

初心者
「無理かもしれない」難易度の課題に直面したとき、重要なのは「なんとかなる」と思えることです。この「なんとかなる」は、自己効力感といいます。

ただ、「なんとかなる」と思うには、過去に実際になんとかなった経験や、なんとかするための知識・技能を持っていることが必要です。これらの経験や知識・技能が十分に発達していない初心者は、自分では「なんとかなる」と思いづらいものです。

熟練者
熟練者はその分野の知識(領域固有知識)や、その知識を入れておく引き出し(スキーマ)が発達しています。

そのため、「無理かもしれない」難易度の課題に直面した場合でも、根拠を持って「なんとかなる」と思えます。過去に実際に何とかした経験や、なんとかするための知識・技能を豊富に持っているからです。

そのため、難易度が高くても、ワーキングメモリがあまり圧迫されず、速く正確な作業が可能となります。

日常ではどんな場面で起こる?

日常生活で、「これは難易度が高いな」と感じることはあまりないかもしれませんが、「面倒だ」と感じることはあるかと思います。面倒というのは、やるのに手間がかかる、簡単にはできなそうだ、といった思いが背景にある点で、難易度を評価したものといえます。面倒なことに、「なんとかなるからとりあえずやってみよう」と思う人や、「とりあえず今はやめとこう」と思う人がいます。

仕事に置き換えると、初めて取り組む分野の仕事や、抽象的な問題に取り組むプロジェクトなどは、先が見通せない、成功と失敗の確率が見えづらいなどの点で、難易度が高いと考えられます。

チェックの仕方

自分が何かの作業やタスクに取り組んだ時を振り返ります。
そしてこの認知負荷を、「1.少ない~5.多い」の5段階で回答します。


*1 ダニエル・カーネマン (著), 村井章子 (翻訳). 2012. ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? 

※私たちの認知負荷は、Swellerらの提唱する認知負荷理論に基づいています。
Sweller, J., van Merriënboer, J. J., & Paas, F. (2019). Cognitive architecture and instructional design: 20 years later. Educational Psychology Review, 1-32.
※認知負荷理論では、認知負荷を課題外在負荷、課題内在負荷、課題関連負荷に分けていますが、私たちはの測定では、これらを区別していません。その理由として、外在負荷と内在負荷の分類が、学習教材やカリキュラム作成等に資する知見を得ることを目的として行われていること、技能五輪の競技課題においては両者の区別が職種依存的で困難なこと等があげられます。

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