億り人を目指す前に考えるべきこと – バランスの悪い運用計画
サラリーマンが億り人を目指す新NISAのプラン。30年後の1億円は果たして正解なのか?バランスの取れた人生設計について考える。
サラリーマンが目指す「億り人プラン」
ヤフー記事や他のメディアでしばしば取り上げられる、「サラリーマンが億り人を目指すプラン」。その中で最も現実的な方法として紹介されるのは、「月に30万円を5年間積み立て、30年間運用する」というものだ。具体的には、新NISAを最短で埋め、その後30年間の長期運用を行うことで1億円を達成する計画だ。しかし、本当にこの方法はバランスが良いのだろうか?
新NISA1800万円を埋める「運用30年プラン」
新NISA制度では、成長投資枠や積立投資枠の活用により、投資家は年間最大360万円を積み立てることができる。この計画を最短で埋めるために、月額30万円を5年間で投資する。30年間の運用期間中、年率5〜7%のリターンがあれば、理論上は1億円に到達する計算だ。しかし、この計画には疑問が残る。なぜなら、60歳時点で1億円を持つことの意義はどこにあるのかという点だ。
バランスの悪い1億円の目的
「DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)」という考え方がある。これは、お金を持って死ぬのではなく、人生を豊かにするためにお金を使い、充実した時間を過ごすことを重視する哲学だ。30歳から始めて60歳で1億円を持っていたとしても、その1億円を持った瞬間に何をするのだろうか?60歳という年齢では、多くのことが制限される。若いころのようなエネルギーや時間は失われている。単に「億り人」になることが目的になってしまうと、その先にあるはずの人生の充実が見えなくなってしまうのではないか。
人生の充実は「取り崩し」から始まる
私の考えとしては、1億円を目指すことに執着するよりも、もっと早い段階、例えば50歳や40歳から資産を計画的に取り崩していくことが、真の人生の充実につながると思っている。資産を積み上げるだけではなく、それをどう使うかを考えることこそが重要だ。運用益に依存し過ぎず、自分の人生に合ったペースで資産を使いながら過ごすことで、より豊かな生活が実現できる。
準富裕層という目標
私は次の目標として「準富裕層」を意識している。これは、資産が5,000万円から1億円程度の層を指す。実際、この程度の資産があれば、ほとんどのものは手に入れられ、生活の質を大きく下げずに過ごせる。準富裕層に到達した後は、積極的に資産を運用することを止め、長期的にほったらかしにしていても、自然に億り人となる可能性はある。しかし、その先にあるのは、資産の増加よりも生活の質や満足感を重視した生活だ。
1億円を目指す必要は本当にあるのか?
最終的に、「億り人」を目指す必要はない、というのが私の持論だ。なぜなら、5,000万円から1億円の範囲に到達すれば、日常生活で困ることはほとんどなくなる。資産が増え続けても、それ以上の贅沢は意味を持たなくなることが多い。お金はあくまで人生を豊かにするための手段であって、目的ではない。だからこそ、無理に億を目指すのではなく、適切な時期に資産を取り崩し、楽しく充実した日々を送る方が、結果的に「豊かな人生」といえるだろう。