してーこーもらってからのおはなし。
9月
指定校推薦もらっちゃった。
努力とか、なんかそういうやつ。全然できてないまま、大学に入ろうとしてる。
いいのかな。評価されたことにはそうなんだけど、見に余る光栄?すぎて。
嬉しいよりも、またさらに自分に対する軽蔑が深まった。またお前は、一片の努力もせず、なにもやり遂げないまま卒業証書を受け取ろうとしている。
かと言って、共通テストで行けるほどの脳みそを持っているわけでも鍛え抜いてきたわけでもない。みんなもう、くたくたのターゲット1900をめくっているね。自分の手元を見ると、四隅がふわふわになったカフカの裸の文庫本がある。
恥ずかしい思いを隠すために、フリフリのついた大きい日傘を買いました。
11月後半
もう日傘はいらないどころか、あの日散々弾いた熱を今すぐ返してほしい。
何も成長できないまま、12時間後に面接を控えている。
ありがたいことに、愛すべき我がきったねえ自室で面接を受けられるそうだ。良い時代だ。10年前だったらふざけたことを言うんじゃあないとかなんとか言われてただろうな。
面接があるなら、そのための練習をしたのかといわれたら、全くそんなことはない。何もしていないのだ。何を聞かれるのか、何があるのか、自分が何者か。実は本人が何ひとつ理解をしていない。面接官に聞かれたら、「ところであなたはどう思いますか」と聞き返したいものだ。
12月初め
受かった
なんか、ドラマチックなことなんもなかった。
受験ってなんだったんだろう。
1月
1週間後には共通テストがあるらしい。
今年から試験が変わって大混乱!とか、パイオニア!とか、一期生!!とか。
外野からはなんとでも言えるんだろうなあとか思っていたら、付箋と折り目で膨れ上がったTarget1900をものすごい速さでめくる女子高生がいた。
気づいた頃には、私こそが外野だった。
努力の美談はあまり好きではないけど、今ここで相変わらずカフカの短編集を眺めている私と彼女とでは、美しさがあまりにも違う。そういうことか、と、私は彼女から目を背けた。私は4月から、こういう人たちと肩を並べ、話し、友達にならなくてはいけない。
入学前課題のプリントがどこかに行ってしまったので、Twitterで#春から〇〇大と締めたツイートをした。
これで、たぶん、あってるよね。
2月
課題が終わって、いよいよ暇になったもんで、アルバイトを始めた。
キッチンで3時間ちょっとウロウロして3000円ちょっとを貰って帰る。でも交通費が1000円かかるから…微妙かも。
なんか、わかんないまま時間が過ぎてく。
会社の理念、言えるようにならなくちゃいけないらしい。やだなぁそういうの。丸暗記とか、苦手なんだよ。
3月
企業理念は言えるようになったけど、バイトは別に楽しくないし、いっつも怒られてるな。怒られて、お金をもらう。なんか、疲れた。お金で払われない何かを確実に消耗している。
それからついでに、高校から卒業もした。
嫌いじゃない場所だったけど、特段大泣きすることもなく、終わった。
そう、終わってしまったのだ。また特に何もしないまま、終わらせてしまった。勉強ももうできないし、何もわからない。本は読むけどレポートとかしばらく書いてないし、卒業証明書とかそういうやつの提出も遅れちゃった。てへ。
なんの成長もないまま大きくなっていくんだ、きっと。
このまま、おぼつかない足取りで歩き続けていたら、天使にも悪魔にもなれなそうだ。いや、もうもはやなれなくなっているのかもしれない。
極にも対にもならないわかりにくい僕が、相対的に見て何色に見えるのか誰も教えてくれない。
オレンジの世界に飛び込んだ青ピンクはグレーにされて泣いていた。
これから、きっとそういうことになっていくんだろう。
逃げるように、ベッドに飛び込んで。ほら、もうとりあえずの今日はおしまいだから。ゆっくりおやすみ。
明日は、マスキングテープなんか使わないでペンキを塗ろう。
残りの人生の暇つぶしを、許容できますように。