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2.初めての宇宙 宇宙船の窓から見える私達の星は、この世のものとは思えぬ美しい青を纏っている。 父と兄は、この光景を一度は見たのだろうか。この美しい星を。 予想以上に感傷的になっている自分に気付き、私は笑顔を作る。しっかりしないとね。 「里村、コントロールルームで高木教授が呼んでるみたいだぞ」 後ろから声をかけられて振り向くと、島田さんが立っていた。私ではなく窓を見ている。 「いやー、おのぼりさんの気分ですよ。何もかも初めてで驚いちゃいますね」 私は感傷に浸っ
1.旅立ち 「島田さん。宇宙、行きませんか」 職場の後輩である里村が、昼休憩から戻るや否や笑顔で声を掛けてくる。これから業務を開始するとは思えない良い笑顔だ。 「なんか新メニューでもあったのか?俺は火星丼一筋だが。どうせなら昼に行く前に誘えよ」 俺はそう返しながら立ち上がって伸びをする。宇宙か。あそこ量が多いんだよな。久しぶりに行くか。 「定食屋の方の話だと思ってますよね?いきなりだからそう考えるのも仕方ないですけれど。これを見て下さい」 里村はウェアラブル端末か