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梅の盛りも終わり、桜の蕾が今にも開花しそうなこの頃となりました。 春が訪れたと言うにはまだ少し肌寒いですが、それもあなたは季節の趣と楽しむのでしょうね。 さて、この度お知らせしないといけない事があり、重い筆をとらせて頂きました。 先月の末、珠代が永い眠りについた事をご報告します。 家にいると、何度も何度も実感するのですが、いざ文面にすると手が震えてしまい、乱れた文字になってしまいます。 我が事ながら情けないと思いますが、中々ままならないものですね。 も
前書き この短編はTwitterで募集した単語を基に作成されています。ご協力頂きました皆様、有難うございました! 使用させて頂いた単語はあとがきにあります 以下本編 私の家の近くの神社には、他の受け入れを許さない独特の雰囲気がある。 川のせせらぎだけが聴こえるとても静かな神社なのだが、普段の参拝者はほとんどいないのではないだろうか。 神様を祀っているのに大変申し訳ない感想ではあるけれど、神々しさとは無縁の不気味としか表現出来ない場所だ。 まず御神木が柳である事からして
夜の海には引き込まれるような魅力がある。月明かりしか頼る光がないにもかかわらず、海の姿は何故かはっきり見ることが出来るのが不思議だ。 街中とは明かりの質が違うのかもしれない。さざなみの音に囲まれながら、私はぼーっと海を見ている。 「肝試しに行こうぜ!」 悟からいきなり電話が来たのが二時間前だ。夜中の十時。仮にも女の子を誘う動機に肝試しとは、正気の沙汰とは思えない。 「あんた、そういう所だと思うよ」 心の底から出すことが出来た、『呆れてますよ?』という感じの声で私
前書き この短編は以下の短編にリンクしているので、もしかすると読んで頂いた方が分かりやすいかも知れません。 【短編ホラー】お稲荷様 【短編ホラー】夜の海にて 以下本編 私が終わらせなければならない。 あれから幾星霜。悠久とも思える修練の日々を私は過ごしてきた。 自身の掌を見ると、深く刻まれた皺と分厚い手の皮がそこある。 十分な修練を積んできたつもりだが、成功を確信するに至る程の自信は遂に得られなかった。 だが、時間がもうあまり残されていない。私は天を仰いで
「突然だが、僕は自由だ!」 田中がこんな感じで変な事を言い出すのは珍しい事ではない。なぜなら、真面目に相手をする人がいるからだ。 「どういう風に?」 やはり杉原は興味津々といった様子で聴いている。お優しいことだ。荒らしは反応するからつけ上がるんだぞ。 「僕は親から掛けられている期待もなく、反面自分への期待感はとても大きいからだ」 田中はなぜか誇らしそうだが、今回ばかりは少し興味深い事を話している気がする。 「つまり?」 杉原は田中に好奇の目を向けながら聴