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迷子のままで進む私たち(ストーリー全編解説付き)

 ほとんどのアニメは繰り返し見ないで1回だけ見て終わり。それなのにどうして私は『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は繰り返し見てしまうのだろうと思う。気づけば繰り返し見ているし、アニメ放送中にX(旧Twitter)にて毎週実況している。

 ※『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』のアニメはBanG Dream! シリーズではあるが、この作品から初めて見てもついていける内容となっている。


 初めに

 このアニメは雨の中「CRYCHIC(クライシック)」というバンドが解散するところから物語は始まる。CRYCHICを辞めようとする者、CRYCHICを再編しようとする者、新しくCRYCHICとは違うバンドを始めようとする者……様々なキャラクターたちの想いがぶつかりあってこのアニメは出来ている。

 登場人物紹介

 <MyGO!!!!!メンバー>

 引っ込み思案で感性が独特なボーカル、高松燈(たかまつともり)(※元CRYCHIC)

 目立ちたがり屋でギターボーカルになりたかったミーハーなギター、千早愛音(ちはやあのん)

 燈が大好きで愛音に対して当たりが強い接客が苦手なドラム、椎名立希(しいなたき)(※元CRYCHIC)

 CRYCHICが大好きで一見優しげに見えるベース、長崎そよ(※元CRYCHIC)

 気分屋で抹茶が大好きな天才的ギタリスト、要楽奈(かなめらーな)

 <元CRYCHICメンバー>

 CRYCHICを再編しようとする長崎そよを冷たくつっぱねる元キーボード、豊川祥子(とがわさきこ)「わたくし、CRYCHICを辞めさせていただきます」

 無表情で口数が少なく何を考えているかわかりづらい元ギター、若葉睦(わかばむつみ)「私はバンド、楽しいって思ったこと、一度も無い」

<その他>

 椎名立希のクラスメイトでよく飲み物を立希に対して差し入れする、八幡海鈴(やはたうみり)

 人気アイドルユニット「sumimi」メンバーであり、立希と海鈴のクラスメイトの初華(ういか)

 人気アイドルユニット「sumimi」メンバーのまな(画像左)

 美容系動画配信者、祐天寺 にゃむ(ゆうてんじ にゃむ)

 各話内容説明

愛音、燈と出会う(第1話)

バンドメンバーの出会い(第2話)

燈の孤独、燈とCRYCHIC(第3話)

一生、バンドやる?(第4話)

メンバー全員が集まり、ライブを開催することに決定(第5話)

ライブに向けて新曲を作曲する立希(第6話)

ライブする(7話)

そよのCRYCHICへの執着(第8話)

今までのそよの人生、バンドの分裂(第9話)

またライブをするために燈がみんなを取り戻す(第10話)

次のライブに向けての準備、MyGO!!!!!というバンド名の決定(第11話)

ライブをする、MyGO!!!!!!というバンド名の決定、祥子とにゃむの談合(第12話)

MyGO!!!!!!のバンド打ち上げ、祥子率いる新バンド「Ave Mujica」結成(第13話)

 第1話

 第1話にて愛音は転校先の高校で燈に出会う。周りがみんなバンドをやっていることから、ミーハーで目立ちたがり屋な愛音は燈をバンドに誘う。しかし、愛音はギターボーカルがどうしてもやりたかったため、バンドメンバーを探すことが難航する。
 この話で好きなシーンはひょんなことから怪我をした愛音に対して燈が好きなペンギンに対して口早に語り、絆創膏を渡すところである。燈が楽しそうに語るところとそれに対してちょっと引きながらも仕方なく受け取るような愛音の関係性が好きだ。

 第2話

 第2話にて愛音はそよに出会い、バンドに誘う。そよは愛音のバンドに入っていいと承諾する。

「そよさん、ラブ!」

 第1話終盤にて燈を想うあまりどうして燈をバンドに誘ったのかと愛音に対して突っかかってきた立希は第2話でそよに説得され、愛音、立希、燈、そよでバンドをやることに……。

立希は愛音に注文されたオーダーに対し、舌打ちする。

 そこでバンドの話し合いの最中に楽奈が現れ、突然ギターを弾き始める。

 第3話

 第3話にて燈は「(中学の)卒業式の日泣けなかった。みんなほど大事なものが無い。みんなみたいに涙するほど大事なものが欲しい。あるとすればそれはCRYCHICだった」と最後に言う。

卒業式で泣けなかった燈
CRYCHICメンバーのあたたかな眼差し
CRYCHIC

 どこかズレた感性を持った燈は友達と一緒に見たドラマの感想が全く合わなかったり、幼少期に幼稚園の友達に丸くて可愛かったので良かれと思ってダンゴムシを大量にプレゼントしたり、それが変だと気づき「世界からズレないように」と思って生きていく。
 燈が歌詞を書いて祥子が作曲した『人間になりたいうた』にて「みんなみたいに友達できたけど みんなといるのに独りみたいな みんなみたいに生きたいのに 人間になりたい」という燈の歌詞がある。

 燈はCRYCHICに出会って初めて人間になれた(=上手く立ち回ることが出来た、独りじゃなくて一緒にいて楽しいと思うことが出来た)のだと思う。そうして完成した曲が『春日影』だった。

春日影の歌詞

 私も幼少期に周りの女の子たちと比べて趣味がズレていた(男趣味だった)なと思っていたり、卒業式の日に泣けなかったり、高3の頃に独りぼっちだったりしたなと思った。

 第4話

 バンドが解散することが悲しい燈は第1話にて愛音に対し「一生バンド、してくれる?」第4話にてみんなに「(バンド)一生、やろう」と言う。それに対して愛音は正直に重いと言うと燈は落ち込んだ。

 愛音が言っていた通り、一生はたしかに長い。第11話にて「一生なんて馬鹿みたい」とそよが言う。同じく第11話にて燈は一生傷つかずにバンドをやるなんて無理だと気づく、それでも傷ついても一生、バンドやりたいと思う。
 私にとって一生やりたいことってなんだろうと思った。
 
 楽奈は第4話終盤で急にライブのスタジオ練習に現れ、第5話の序盤で即興で春日影を弾いてみせる。

颯爽と現れる楽奈
 

 バンドを組むか組まないかの判断基準を演奏技術では無く、面白れぇ女(の子)かつまんねぇ女(の子)かどうかで分けて考えていた楽奈は、バンドを一生やるかやらないかを議論していた燈たちの話を聞いて面白いと判断し、バンドに加わることになった。

 第5話

 このアニメの中でも特に印象的だったエピソードは第5話の千早愛音の転校理由、海外留学についてだと思っている。
 愛音は高校の海外留学にて流暢に英語を話す周りに気おされて自己紹介を失敗してしまう。そこで心が折れた愛音はそれを機に日本に帰国し、燈のいる羽丘女子学園に転校して来る。

「My name is……」
帰国する愛音

 一度、バンドを辞めた燈に対して「でも、まただめにならないように頑張れば良くない? 一回ダメになってもやり直せるって思わないと 人生長いんだし、やってけないよ?」と自分と重ねて前向きな言葉をかける。それに対して私は仕事先が決まってもすぐに辞めてしまったことを思い出して、心にグッときてしまった。
 他にも愛音は「思ってることあるならちゃんと言った方がいいよ」と燈に対して言う。私は思ってることが中々言えないタイプの人間なのでここも印象に残った台詞だった。
 迷いながらも前に進む愛音に対して燈が「私も迷ってても進みたい」と言い、愛音「迷子かぁ……じゃあ、一緒に進む? 迷子のままで、私たち」と言うシーンはこのバンドのバンド名にも繋がる重要なシーンだ。 

「愛音ちゃんは頑張ればいいって言ってくれて……」
そして、様々な理由で練習やライブから逃げていた愛音と燈はそよと立希と共にライブをやることを決意する。 

 第6話

 第6話にて新曲を作曲することに難儀する立希が描かれる。CRYCHICの時と比べて「私は祥子みたいには(作曲)出来ないんだよ!」と言う。
 誰かと比べて自分は誰々みたいには出来ないっていう感情、よくあることだなと思った。

燈の歌詞ノートをじっと見る立希
飲み物を差し入れる海鈴
「私は祥子みたいには(作曲)出来ないんだよ!」

 作曲から逃げようとする立希を愛音は学校で捕まえる。(そうしてなんとか曲は完成した。)

「逃げんなー!」
「逃げてない!」

 第7話 

 第7話から第9話程にかけてそよのCRYCHICへの想いが描かれる。第1話からずっと描かれていたそよが指先を触ったり、誰かに対して意味深な視線を向けたり、不審な口元のアップが映ったり、暗がりでスマホを操作していたり……といったことの意味がようやくハッキリとする。

「お友達なの」
暗がりの中、祥子にメッセージを送るそよ

 第7話にて立希が作曲した新曲『碧天伴奏』の演奏が終わり、ライブはひと段落……するかと思いきやCRYCHICの思い出の曲『春日影』の前奏を急に楽奈が弾き始めたことから演奏することに……。結果、ライブを見に来ていた祥子が泣きライブ会場を飛び出し、それに気づいたそよは「なんでよ……なんで春日影やったの!?」と怒りを露わにする。春日影を演奏中のそよの表情だけがはっきりと映らない。

泣き出す祥子
それを見て目を見張るそよ
「なんで春日影やったの!?」

 第8話

 第8話にて祥子の家にまで謝りに行ったそよに春日影を演奏したことに対して祥子は言い放つ。
 「おためごかしですわね。演奏でしたらご自由にどうぞ」私にはもう関わらないでと冷たくあしらわれるもどうしてもCRYCHICを諦め切れないそよは「私に出来ることならなんでもするから」と言う。

「あなたご自分のことばかりですのね」
「私に出来ることならなんでもするから」
「お願い、祥ちゃんたちがいないと私」

 「ただの学生でしか無いあなたに他人の人生を抱え切れますの。出来もしないことを口になさらないで。なんでもするとはそれぐらい重い言葉ですのよ……あなたご自分のことばかりですのね」
 おためごかしというワードチョイスと出来ることならなんでもするという言葉は稀に聞くように思うが、それに対する一刀両断の返しに打ちひしがれた。 

おためごかしとは……表面は人のためにするように見せかけて、実は自分の利益を図ること。じょうずごかし。「―の親切」「―を言う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

 第9話

 第9話にて今までのそよの人生が描かれる。幼い頃に両親が離婚し、女手一つで育ってきた。母親が稼いだお金でタワーマンションに住み、自分の意見はあまりハッキリ言えずに周りに合わせて生きる。

長崎の前の苗字、一ノ瀬
ノートのページの苗字を書き換えるそよ
引っ越したそよ

 「あれは解散じゃない、まだ終わってない、すれ違ってしまっただけでまた仲良くなれる」みんなもCRYCHICをまたやりたいはず、そよはこれはみんなのためだと思い込む。

 立希はそよとの口論の末、CRYCHICを取り戻したいがために(そよは)愛音と楽奈を利用していたと知る。「立希ちゃんは燈ちゃんがいればいいんでしょ」と言われた立希は傷つく。
 どのような価値観や性格を持つのか、家庭環境で左右されることも多く、そよには同情した。 
 立希を通してそよなどからこのバンドに自分は必要無いと知った愛音は「私、いらないんでしょ……」と言い、ライブハウスを去っていく。

 そよをきっかけにバラバラになったバンドに対し、燈は「もうやだ……バンドなんてやりたくなかった……」と呟き泣く。

「もうやだ……バンドなんてやりたくなかった……」

 第10話 

 第10話にてまたバンドをダメにしてしまったと思い込んだ燈は落ち込んでしまう。また人間になれなかった。上手く立ち回れなかったと。

 そこで気分転換に見に行ったプラネタリウムに偶然居合わせた初華に「詩って伝わる気がするよね。上手に言えないことも言葉以上に気持ちが」と言われる。
 ラブソングを歌う時などが特にそうだろうか。詩は気持ちを込められて伝えられる手段だと思う。

 その初華の言葉に背中を押された燈は思いつく。歌おうと。
 ライブハウスで演奏するメンバーが誰もいない中、みんなでバンドをもう一度やり直したいという気持ちで1人で歌い始めた燈。それを面白いと感じた楽奈はそれに寄り添うようにギターを弾き始め、立希をドラムとして無理矢理ライブハウスに連れ出し、燈は愛音を「愛音ちゃん要るよ!」と叫び説得し、残すはそよだけとなった。

 そよはバンドを無理矢理終わらせようとするが、燈に手を引かれライブステージ上から伸ばされた愛音の手に引かれてステージに立つ。

「だったら私が終わらせてあげる」
そよをステージに上げる愛音
   

 言葉では何も分かり合えていないバンドのみんなが燈の詩(曲名『詩超絆(うたことば)』)を通して感情を共有して打ち解けていく様子が描かれる。そして、メンバー楽奈以外が号泣する。中学の卒業式やCRYCHICの解散でさえも泣けなかった燈も泣く。

 燈がメンバー1人1人に向けた歌詞を歌い、それに付随した今までの回想シーンが入るところが魅力的で感動する。

 第11話

 第11話にて次のライブのスケジュールの予約が決まっていたことを思い出したメンバーは衣装決めやバンド名を決める作業に入る。第10話までで本音や本性を出し切ってしまったそよは自分の本心を隠すことなく、尖った態度で周りと接する「やってもいいけど、恥ならもうかいたし」とバンドに渋々参加することに。 

「春日影ならやらないから」

 自分の好きな衣装やバンド名にしたいという愛音は派手な衣装を考えたり、「ANON TOKYO」というバンド名にしようと企む。自分とそよとの距離を縮めるために呼び方を「そよさん」から「そよりん」に変える。

「そよりんもバンド辞めんなよー!」 

 年季の入ったギターやピックについて愛音に聞かれた楽奈はかつてあったおばあちゃんが経営していたライブハウス「SPACE」を思い出して「一生あるって思ってた。無くなったけど……。でも、居場所ってまた誰かが作るんだって」と言う。
 そんな風に誰かの居場所が常に作られていればいいのにと思った。

 バンド名を何にするか迷った愛音は燈の言葉を聞いて「迷子」というキーワードを思い出す。

 しかし、ライブ前に無事完成したかのように見えた衣装は楽奈のミスにより、そよの衣装は真っ二つに切られていたのであった……。

衣装を着る楽奈
「あー!」

 

 第12話

 新曲と衣装が完成した燈たちのバンドは第12話にてひとまず「迷子のバンド」としてAfterglowなどの他のバンドとライブをすることになった。

Afterglowの美竹蘭(みたけらん)

 バンド名が「迷子のバンド」になっていたことに気付いた燈たち。愛音はそこで思いついて「It's my go!!!!!」だと興奮して言い、そよは「私の出番って意味」と返し、燈はノートに「MyGO」と書き、愛音はそれに「MyGO!!!!!」と書き足した。

 楽奈のおばあちゃんであり、「SPACE」の元オーナーであった都築詩船(つづきしふね)はライブに駆けつける。「居場所を見つけたって聞いてね」

 MyGO!!!!!は『迷星叫』、『迷路日々(メロディー)』、『碧天伴奏』の3曲を披露する。

 燈はMC中に本音を吐露する。「私たちみんな迷子で……目の前のことにいつも迷っててすごく仲良しでも無くて喧嘩もいっぱいして苦しくて傷つけたり……ちゃんと言えなかったり……でも、今ここにいる……もう何があっても離さない……」「一生離さないから!」と燈は叫ぶ。

 また、碧天伴奏のイントロで燈は「迷子でもいい! 迷子でも進めー!」と叫ぶ。

 どんなことがあってもそよを見捨てなかった燈に対してそよは燈に感謝を伝える。「離さないでいてくれてありがとう」

 そんな中、一緒にライブを見に来ていた睦と海鈴。

 睦はライブを見てそよたちにある物差し入れをするが、それをいらないとそよは突き返す。

 また、別の場所ではその頃祥子とにゃむが集まって何やら怪しげな談合(バンドの結成についての)をしていた……。ボーカルに初華、ギターに睦、ベースにプロと遜色無い腕前の人間(※おそらく海鈴)、キーボードは祥子自身がやるのでドラムとして来ないかとにゃむを誘う。

 にゃむに対して祥子が言う。「残りの人生、わたくしにくださいませんか?」 

 第12話は燈たちのバンド、MyGO!!!!!というバンド名が決まる重要な話である。また、祥子の目論見が見え隠れする話でもあった。

 第13話

 第13話、とあるビルのコールセンターにて仕事として働く祥子の姿があった。

 

 祥子のバンドに迷った末、睦は加入することを決める。祥子は睦に意味深に言い放つ。「良いご身分ですこと。弱いわたくしはもう死にました」

 MyGO!!!!!メンバーはみんなでライブの打ち上げをする。
 乾杯前に一言、燈は言う。「ライブって一瞬で、でも、あの時の気持ちや眩しさは……たしかにある……そういう一瞬一瞬を重ねたら一生になるんだと思う」

 打ち上げ後にそよは立希では無く自分が燈を家へと送ると言い出す。二人で話したいことがあったからだ。

 そよ「私ね、燈ちゃんの歌詞前から苦手だったんだ」
 燈の歌詞は自分の自分勝手さなどと向き合わされるような歌詞で死にたくなると。
 そよ「私、多分、一生CRYCHICのこと忘れられないよ」
 燈「うん。私も」

 そよとの会話後に何かを思い立った燈は歌詞を書き、その歌詞ノートを持って祥子のいる学校の音楽室に飛び込む。何かを伝えたかったらしき燈。だが、そのノートは受け取られること無く、祥子にスルーされてしまう。

 去り際に祥子が言う。「お幸せに」

 祥子に冷たくされて落ち込んだ燈を見て愛音は励まそうと水族館に燈を連れて行く。

 燈に今までもらった絆創膏(ギターで指を怪我した時など)を愛音は新しく買った物で返す。
 燈「心にも絆創膏貼れたらいいのに」
 愛音「私は貼ってもらったよ」 

 今まで燈が慰めてくれた出来事を言う愛音。
「バンド一生やるってやつ、私も頑張ってみる」

 燈の一瞬一瞬の言葉を受けた愛音は迷子でもそうやって進んでいけばいいと話す。
 燈「よろしくお願いします」
 愛音「頑張ろう」
 燈「ありがとう」

 一方、祥子率いるAve Mujicaは結成され、仮面を被り仮面バンドとして人形(という設定)で舞台に立つ。
 祥子「焦りや後悔は全て置いて行って舞台に信じられるのは我が身ひとつ。楽しみましょう」
 ドロリス(初華)「ようこそ、Ave Mujicaの世界へ」

 そこからAve Mujicaの曲が始まる。

 ライブを開催するも、打ち上げは行わずに早く帰ろうとする祥子。家へと帰ろうするとそこは過去に見た豪邸では無く、古びた一軒家だった。そこにはお酒の空き缶で埋めつくされたアルコール中毒者の父親がいた。
 祥子は言い放つ「ただいま。クソ、親父」

 最後に個人の感想

 ここまで文章を書いてきて当初ストーリーを全て書くつもりは無かったのだが、どれもこれもが重要な話に思えてきて全てを載せることにした。しかし、どれだけ言葉を尽くして全てをネタバレしてもこのアニメを実際に見たという"体験"にはならないだろうと感じる。それほどまでに実際見てみなければ感じ取れない部分がこのアニメにはあると私は考えている。

 全てを書き終わってみて思ったのは私にはこんな青春は無かったなぁということだった。中学時代は美術部で高校時代は部活に入らずに過ごしてたため、誰かと深い感情を共有することはほとんど無かった。

 自分と重ねて誰に一番共感出来たのかというとそれは「高松燈」だった。
 私にはそよのように両親が離婚した過去は無いし、祥子のように酷い親の元に育ったことも無いし、愛音のように海外留学の経験も無いし、立希のように絶対譲れない誰かを想う気持ちも無かったからである。
 私も燈と同じで人と話すことが苦手だと感じている。燈の場合は上手く言えない言葉を詩にして伝えているが、私は文章にして伝えることが多い。
 そして、私も燈と同じくクラスの友達と上手く馴染めないという時期があった。みんなみたいに友達出来たどころか友達がいない時期まであった。
 燈は好きな物が石や昆虫、ペンギンなど趣味が高校生の女子にしてはいささか少年寄りだったなと思った。私がこのアニメを見ていて思ったことは、燈がいじめられるようなことが無くて良かったなということだった。学校のクラスなど閉鎖的で少人数の空間では他と違うというだけで爪弾きにあいそうなところがある。
 燈を気にかける愛音とクラスメイトの女子三人が優しい人で良かったと思った。

 そして、同じくこのアニメを見て感じたのは今の言葉で言えば良くも悪くも「親ガチャ」があるということだった。
 そよは前述した通り、両親が離婚し、母親が頑張って働いて高級タワーマンションに住むことになる。母親は仕事からあまり帰って来ることは無く、自分が家事をしたり、母親の好みに自分の行動を合わせていたため、学校でもそれと同じくみんなに合わせてしまうような素振りを見せる。そよはその影響もあり、初めて出来た居場所CRYCHICに対して深く依存と執着をしてしまっていた。
 祥子は前述した通り父親がアルコール中毒者であり、それに困っているような描写があった。
 幼少期、大量のダンゴムシを良かれと思って友達にあげた燈。燈の母親は謝罪のために友達の母親へ電話をするシーンがある。良い母親だなと感じた。
 愛音の家の部屋は広く、ギターアンプなどの機材を買えるところから比較的裕福な家庭であるということが推測出来た。
 
 祥子はAve Mujicaを始める前に誰かにそのことを相談するべきだったのでは無いかと思う。アニメ各話を見るに誰にも相談していなさそうに見受けられた。(祥子は徹底的に終始誰とも本音で話そうとしていなかった。)
 しかし、誰にも相談したくないという気持ちもわからなくは無い。何故なら祥子は今までお嬢様学校(月ノ森に女子学園)に通ってお金持ちとして普通に過ごしてきていたプライドがあるからだと考えた。

 とても個人的なことを書くと、私は今フリーターでこの仕事で本当に良いのかな? と迷子のまま進んでいる。
 仕事を辞めたいと思っても立希の「お前のそれは逃げだよね?」とか愛音の「だめになってもまただめにならないように頑張れば良くない?」などを心の支えにして生きている。
 燈の「一緒一瞬を積み重ねたら一生になる」その言葉を信じて目の前にすぐあることを片付けて、そうしたら気の遠くなるような一生もいつかは終わるのかなと。
 そんなことを思った。

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