“どうぶつしょうぎ関連書籍”全レビュー
前書き
この記事は2019年12月時点で流通している「どうぶつしょうぎ(※)」に関連する電子書籍を含めた全書籍のレビューとなっております。
紙媒体の書籍は全て幻冬舎エデュケーションから出版されており、現在は入手困難なものが多い。
手軽に入手できないからこそこのようなレビュー記事が誰かの一助となると思い、今回記事にさせていただきました。
この記事はこれからどうぶつしょうぎを始める方、子どもにどうぶつしょうぎを教えたい方、あるいは既に初級者を脱してどうぶつしょうぎウォーズ(HEROZ, Inc.)で昇級や昇段を目指している級位者の方に向けて。
どうぶつしょうぎウォーズ初段の著者が書いております。
著者のこれ以前の記事はこちらを御覧ください。
→ どうぶつしょうぎ定跡研究(その1)
書籍のタイトルと画像に書籍のAmazon商品ページへのリンクが貼られております。購入を予定される方は定価と購入先をよく確認のうえ検討してください。
(※2020年7月3日現在。COVID-19の影響でAmazonにおけるどうぶつしょうぎ、並びにどうぶつしょうぎ関連書籍の値段が高騰しています。以下の公式通販での購入を推奨します)
どうぶつしょうぎ考案者の藤田麻衣子氏が運営されている「どうぶつしょうぎcafe いっぷく」のオンラインショップ → onlineshop いっぷく
同じくどうぶつしょうぎ考案者の北尾まどか氏が代表取締役を務められている「株式会社ねこまど」のヤフーショッピング → ねこまどShop
(※)「どうぶつしょうぎ」とは、女流棋士の北尾まどか氏と藤田麻衣子氏が将棋普及のために共同開発し、2008年1月頃に日本女子プロ将棋協会にて発表された入門者向け12マス将棋のこと。
『どうぶつしょうぎのほん』(2010,7,20) 幻冬舎
文:きたおまどか 絵:ふじたまいこ
どうぶつしょうぎといえばまずはこの本。関連書籍では一番最初に出版され、内容もバランス良く纏められた素晴らしいフルカラーの入門書です。
駒の動かし方を始めとしたルールの丁寧な説明から具体的な遊び方、ルールを覚えたうえで上達するための基本的な考え方、内容を理解できたか確認するための練習問題という構成になっています。
しっかりと児童向け入門書のテンプレート沿った構成で、子どもが自分で読んで学ぶ教科書として、ルール説明の手助けとなる手引書としての活用が期待できます。
章の合間に挟まれる制作にまつわるコラムも読み応えがあります。
付録で付いてくる駒と盤をコピーすればこの本だけでもどうぶつしょうぎを学んで遊ぶことができます。
巻末には子どもと楽しむためのどうぶつしょうぎのうたである「ライオンマーチ」が楽譜とともに掲載されている。
どうぶつしょうぎ関連書籍をどれか1冊購入したいと考えられている方には是非ともこの本がお勧めです。
なお、どうぶつしょうぎ製作者の藤田麻衣子氏が運営するonlineshop いっぷくで購入すると藤田麻衣子氏のサイン入りで購入できます。(※2020年7月3日現在)
『THE BOOK OF DOBUTSUSHOGI』(2013,4,1)
Nekomado Co., Ltd.
文:MADOKA KITAO 絵:MAIKO FUJITA
翻訳:YAEKO TOMITA
『どうぶつしょうぎのほん』の英語版。まさに将棋普及というどうぶつしょうぎの目的と合致している良い本。
出版社が【幻冬舎エデュケーション】から【ねこまど舎】(どうぶつしょうぎ製作者の北尾まどか氏が代表取締役を務める「株式会社ねこまど」の出版社名)になっている。
前書きやコラム、巻末のライオンマーチ(どうぶつしょうぎの歌)に至るまでしっかり翻訳されています。
まさに海外への将棋普及に最適な本といえるでしょう。
どうぶつしょせき関連書籍でもっともプレミアが付いており、入手が極めて困難です。(※2020年7月3日現在、Amazonの中古取引価格80,279円!)
しかしなんとこの度、本記事を北尾まどか氏ご本人が閲覧いただき(!)、サポートして頂いたうえにねこまどShopにて定価で再販して頂けました!
前書きでも触れましたが、Amazonではどうぶつしょうぎ並びにどうぶつしょうぎ関連書籍の中古価格が高騰していますので、購入の際は公式通販での購入を推奨しております。
『どうぶつしょうぎドリル』(2014,6,30) 幻冬舎
著:北尾まどか 冨田八枝子 藤田麻衣子
2019年12月現在では比較的入手がしやすいどうぶつしょうぎの問題集。
フルカラーの『どうぶつしょうぎのほん』と違いこちらは2色カラーとなっている。
問題集といっても駒の動かし方の確認から1手詰問題までの、より丁寧なルールの確認ドリルといった内容に留められている。
『どうぶつしょうぎのほん』と違い大人向けのコラムや著者後書きなどがなく、文章も漢字を少なく文字を大きくされていることで子どもが一人での自学自習をしやすい構成になっている。
紙質や色数などが少し気になりますが、児童の自学自習向けドリルと考えれば値段からみてもお手軽な1冊です。
大人からすると内容が薄く感じる本ですが、子どもが自分で学ぶことを重視された1冊であり、定価も『どうぶつしょうぎのほん』より安価です。
どうぶつしょうぎに興味を持った子どもへのプレゼントに最適です。
『どうぶつしょうぎQ ①キャッチと王手』(2011,9,30)
幻冬舎 著:北尾まどか 川崎智秀 藤田麻衣子
児童向け書籍としては小さい文庫サイズのフルカラー問題集。
どうぶつしょうぎの関連書籍というカテゴリーを超えてお勧めしたい非常に優れた棋書です。
『どうぶつしょうぎドリル』と内容が大きく被るも、内容の充実さでは完全に上回っています。
基本的な駒の動かし方の確認問題から始まり、キャッチの形(ライオンが取れる形)と王手の形(ライオンを次の手で取れる形)を網羅的に問題として掲載されている。
キャッチと王手について徹底的に理解させた後、王手を逃れる形(ライオンが取られるのを逃げる形)の問題を更に取り組み、最終的に詰みの形(ライオンが次の手で取られるのを逃げることができない形)について懇切丁寧に問題と解説で説明される。
「詰み」の概念は子ども・大人を問わず将棋初心者にとって一番理解するのが難しい概念です。
将棋には無数の易しい児童向け入門書が既にありますが、この本以上に丁寧に解説している棋書は他にありません。
各章の合間に子どもへの指導の仕方についてのコラムもあり、②も併せて版の小ささを除けば児童向け入門書として完璧な本です。
問題文と解説は平易な日本語に英語も併記されているため海外の方も理解できるでしょう。ただし、著者紹介や奥付、コラムは英訳されていないのが少し残念です。
この本は大人の方であっても将棋のルールをまだ完全に理解できたか不安な方であればまず読破することをお勧めします。
『どうぶつしょうぎQ ②王手と詰み』(2012,9,25)
幻冬舎 著:北尾まどか 川崎智秀 藤田麻衣子
『どうぶつしょうぎQ ①キャッチと王手』と同じシリーズの文庫サイズ問題集。同シリーズはこの2冊のみ。
①が「キャッチと王手」だったのに対して②が「王手と詰み」で内容が被っているのでは? と思われるかもしれない。
実際に内容的に似た部分があるのは否定できないが、この2冊はコンセプトが異なっている。
①が詰みという概念を理解させるための問題集だとすると、②はより具体的な詰みの形を覚えるための問題集といった内容で、つまり応用編です。
最後の方には持ち駒2つから選ぶ2択問題まである充実ぶりです。
ただし大人の方にとってはやはり少し物足りない難易度となっています。
先述の通りこの2冊は、どうぶつしょうぎのコンセプトである「子どもの将棋入門向けゲーム」を体現したかのような素晴らしい棋書です。
ただ惜しむらくは既に絶版となっており、絶版本の定めとしてやはり後続巻である②のほうが中古の取引価格が高価となっている。
是非とも復刊して欲しい本です。
『どうぶつしょうぎ問題集 詰将棋』
(出版年不明) 著:Tiamage(電子書籍)
Amazon kindle にて発売されているどうぶつしょうぎ関連の電子書籍。
著者はTiamage氏。出版年や著者その他については詳細不明です。
Tiamage氏は入門者向け・児童向けばかりのどうぶつしょうぎ関連書籍において、段・級位者向けに構成された書籍を執筆されている唯一の著者です。
もちろん児童書・入門書が充実していることは素晴らしいことであり、間違いなくそれらは中級者向けや上級者向けの書籍より重要です。
しかしかといってどうぶつしょうぎウォーズなどでより上の級位・段位を目指す者にとってその手助けとなるべく書籍がないのも困りものです。
実際に小生もどうぶつしょうぎウォーズで1級から初段にあがれず悩んでいる時期に検索してこの書籍と出会いました。
かなりの数のどうぶつしょうぎ関連書籍を執筆されているTiamage氏の著作において、本作は特に終盤力の向上に重きをおいた詰将棋ならぬ詰めどうぶつしょうぎの本(電子書籍)です。
Amazonの説明文にも書かれていますが、入門向け1手詰から実戦で重要な5~7手詰。非常に難しい15~23手詰の問題まで揃っています。
258問もの問題を掲載されており、終盤力の向上においてこの上なく望ましい1冊です。
Tiamage氏の著作の中でどれを購入しようか悩んだ場合はまず本作を購入されることをお勧めします。
また、Tiamage氏の著作はどれも kindle unlimited であれば無料で読むことができますので、試しに kindle unlimited の試用期間を利用して中身を確認することもできます。
駒の絵柄がどうぶつしょうぎウォーズやあにはいと違うことに始めのうちは戸惑うかもしれませんがすぐに気にならなくなります。
移動などの空き時間にスマートフォンで気軽に棋力の向上に務めることができます。
なお、Tiamage氏のHPはこちらです。 → どうぶつしょうぎBooks
『どうぶつしょうぎ次の一手問題集1~8』
(出版年不明) 著:Tiamage(電子書籍)
Amazon kindle にて発売されているTiamage氏が執筆されたどうぶつしょうぎ関連の電子書籍。同シリーズは全8作。
次の一手問題とは将棋において主に中盤力(始めの駒組み合いである序盤、最後の寄せ合いの終盤との間。駒と駒がぶつかり始めた中盤の棋力のこと)の向上を目的とした問題のこと。
将棋では局面局面によって最善と“思われる”手を見つける問題なのですが、完全検証がなされたどうぶつしょうぎにおいては正解手は“1つ”しかありません。
更にいうと本著は中盤ではなく初手から終盤近くまでの最善手を1手ずつ確認していく問題が55問掲載されています。
1冊目で初手C3ニワトリ(先後逆で掲載されているので本書ではA2ニワトリ)からの最善手順全78手に関する手順の問題を。
2冊目~8冊目ではそれぞれのその他タイトル通りの主な手順の問題が掲載されています。
次の一手問題集と銘打たれていますしその通りの内容なのですが。
どうぶつしょうぎというゲームの性質上、実際は詳細で親切な定跡書といった感覚で読みすすめることができます。
この本を手に取った(電子書籍ですが)時の小生は既にこれらに掲載されていた定跡はほぼ自力で暗記し終えていたので、定跡の確認として流し読みする程度になりました。
しかし、あにはいで並べながら自分で覚えていくよりもこの問題集を読み進めて学びながら覚えていくほうが遥かに短時間で暗記でき、効率的だったでしょう。
これからどうぶつしょうぎの定跡を覚えようという級位者において最高のパートナーとなることは疑う余地がありません。
『どうぶつしょうぎ定跡研究ノート1~4』
(出版年不明) 著:Tiamage(電子書籍)
Amazon kindle にて発売されているTiamage氏が執筆されたどうぶつしょうぎ関連の電子書籍。同シリーズは全5作。(※2019年12月現在)
タイトル通りどうぶつしょうぎの定跡研究の内容を纏められた本。
どうぶつしょうぎにおける定跡研究とは、後手必勝と解析済みとはいえ全てを丸暗記するには膨大過ぎるどうぶつしょうぎの変化を覚えやすくするための工夫です。
どうぶつしょうぎはただ派生するだけでなく、大きく派生したのちに他の派生先と合流するような変化も多く、持ち時間の短いどうぶつしょうぎウォーズのようなルールでは定跡研究なしで勝つのは難しいでしょう。
この本は著者が研究した定跡について解説しているだけでなく、同シリーズの他の研究ページと同形になるならそのページを。変化先について詳しく解説しているページがあるならそのページを。
5冊全てがリンクするように構成されており知りたい変化・分岐についてとても調べやすくなっています。
ですから実質同シリーズの5冊はセットなのですが、何故か前述の次の一手問題集シリーズは8冊セット販売されているのに本シリーズはセット販売されていません。
どうやら本シリーズは内容的にも続刊予定だったようで、6巻以降はいつ発売されるのか現時点ではわかっていません。
どうぶつしょうぎの定跡研究書としては本シリーズがただひとつですが、どうやら完結していないようなのと、定跡学習としては次の一手問題集シリーズのほうが使いやすいという点が残念です。
定跡研究だけであれば他にも個人のホームページなどで研究されている方もいらっしゃいますので(僭越ながら小生も)そちらを参考にされてもいいかもしれません。
『どうぶつしょうぎのあそびかた』(※付録本)
著:きたおまどか 絵:ふじたまいこ
この本は流通している書籍ではありませんが、ほとんどのどうぶつしょうぎを遊ぶ人が手に取るであろう、ボードゲームのどうぶつしょうぎに付いてくる遊び方説明書です。
とても良く内容を推敲された説明書で、これ1冊で大人から子どもまでどうぶつしょうぎのルールを理解して遊べるように構成されています。
どうぶつしょうぎには旧版と新装版など、いくつかのバージョンがあるようですのでひょっとしたら内容が少しずつ違う部分もあるかもしれません。
これ自体が非常に優れた入門書ですの、これが手元にあるのならば『どうぶつしょうぎのほん』はそれほど必要ではないかもしれません。
因みにこの説明書にも巻末にライオンマーチが楽譜付きで掲載されています。
もっとも、近年はスマホ用アプリや携帯用ゲーム機でもどうぶつしょうぎを遊ぶことができるため、この説明書を読んだことのない方も増えているのかもしれません。
後書き
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
冊数はそれほど多くないとはいえ全ての関連書籍のレビュー執筆は小生にとってもなかなかの作業量でしたが、本記事の読者様においてもかなりの負担だったことでしょう。
本記事は前書きで触れたとおり、初心者・級位者・指導者と幅広いどうぶつしょうぎプレイヤーに向けて書きました。
執筆のきっかけとしましてはやはり、自分自身の知識と棋力を高めるためというのが最大の理由です。
実際にこの記事の執筆中にどうぶつしょうぎウォーズで1級から初段にあがれたのは嬉しかった。
それでも、この記事やこれ以前に小生が書いたような記事も含んだような纏められた記事があれば、もっと短期間で昇級・昇段できたのではないか。
そう思いながらここまで執筆してきました。
最後に、
小生にどうぶつしょうぎを教えて下さった常磐誠さん。
どうぶつしょうぎウォーズでご指導下さったフラミンゴーさん。
記事を支援してくださったCROSSさん。
ありがとうございました。お陰様でこうして記事を完成させられました。
そして、
どうぶつしょうぎを生み出してくださった女流棋士の北尾まどか氏と藤田麻衣子氏に心からの感謝を。
願わくはこの記事がどうぶつしょうぎに関わる全ての人にとって有益な情報でありますように。