「部屋の電気を点ける」
朝起きてまずやることは顔を洗うでもトイレに行くでもなく電気だ。なにせ僕の家の周囲は三方がビルで一方が密林なので、家中の灯りという灯りを点けなきゃ真っ暗なので。眠い目をこすりこすりベッドから降りてまずは寝室のスイッチをパチリ。廊下に出て廊下のスイッチパチリ。トイレ開けてトイレもパチリ。風呂場も開けて風呂場もパチリ。リビング入ってパチリ。キッチンもパチリ。子供部屋もパチリ。和室もパチリ。仏間もパチリ。大仏間もパチリ。儀式部屋もパチリ。霊安室もパチリ。第二霊安室もパチリ。罠部屋もパチリ。罠開発室もパチリ。作戦会議室もパチリ。冷凍室もパチリ。全焼室もパチリ。分解室もパチリ。溶解室もパチリ。吸収室もパチリ。校長室もパチリ。右心室もパチリ。左心房もパチリ。大腸もパチリ。脳髄もパチリ。エキサイティングルームもパチリ。オペラホールもパチリ。ドリームドームもパチリ。ネバーエンディング廊下もパチリ。開かずの間もパチリ。存在しない部屋もパチリ。なにもない空間もパチリ。永遠の時間もパチリ。空もパチリ。海もパチリ。世界もパチリ。地獄もパチリ。それぐらいで日が暮れ始めて、そろそろ寝ようと僕は眠い目をこすりこすり灯りを消していく。地獄をパチリ。世界をパチリ。海をパチリ。空をパチリ……。