
誰ぞ知る 古墳時代の 人の顔

「鼻が高くて、日本人じゃないようね」。
隣に立つ2人の婦人の会話が、耳に入ってきた。『ふむ、ふむ、俺もさっきからそれが気になっていたんだ』。東京国立博物館で開催中の「特別展 はにわ」の会場に並ぶ人型埴輪の顔が、現在の日本人と違っているが気になった。鼻梁が高く、鼻の先が尖っている。『そう思うのは、俺だけじゃないんだ』。
小顔な点も違う。しかし、目は細い。埴輪が作られた古墳時代の人々は、こんな顔をしていたのだろうか。それとも、小顔で鼻筋が通っている顔が好まれて、理想または、憧れとして表現されたのだろうか。
展示されている人型埴輪のほとんどが、関東の古墳から出土品であるのも不思議だ。顔の特徴が日本人離れしているのは、関東の埴輪だけなのだろうか。もしそうだとすると、関東には西日本と異なる民族が住んでいたいたことにならないか。
疑問に答えてくれる人は、いないだろうか。誰かに聞いてみたいが、会場は押すな、押すなの状況で、そんな雰囲気ではない。会場を出た後、ミュージアムショップに立ち寄り、埴輪に関する本を購入。家に帰って、ChatGPTに質問、Yahooで検索。得られた情報から、推論を試みた。
今城塚古墳(大阪府高槻市)から出土した人型埴輪の鼻は丸みを帯び、目も太めであり、関東の諸古墳からの出土品と明らかに異なる。
高い鼻梁、細い目、小顔を特徴とする民族としては、モンゴルや朝鮮北部に住む民族が挙げられる。特別展の埴輪の1つが、かぶっていた、先の尖った帽子によく似たものが、モンゴルの民族衣装の中に見られる。
古墳時代は、大陸、朝鮮半島から多くの人が渡来した。西日本には大陸と朝鮮の南に住む人がやってきた。それに対して、関東には、北に住む人がやってきた。その結果、人型埴輪の顔貌が、西日本と関東で異なっている。
博物館で隣にいた婦人は、この話を聞いたら、『そーだったのね』と頷いてくれるだろうか。それとも、『老人の世迷言』と、一笑にふされるだろうか。
(2024.12.07)