ゴミ漁る カラスを追えば ネズミ増え
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、江戸時代に生まれた言い回しである。この言葉を令和風にアレンジしたらこうなると思えるニュースを最近2つ耳にした。
・東京ではカラスを駆除し過ぎたために、ネズミが増えている
・バイオマス発電が増えて、キノコの生産者が困っている
東京に住んでいるが、恥ずかしながら最近ネズミが増えていること自体を知らなかった。カラスとネズミの繋がりはこうだ。ゴミ回収のために路上に置かれた生ゴミをカラスが食い散らして、街の衛生状況や美観を損なうことが社会問題化し、行政当局がカラスの駆除を進めた。一方、カラスはネズミの天敵なのだそうで、天敵が減ったのでネズミが増えた。更に、生ごみを独り占めして、ネズミは益々繁殖する。ネズミの天敵は猫だとばかり思っていたが、そうではないらしい。カラスは雑食なので、ネズミだって食べるのだ。
バイオマス発電とキノコ栽培の間の介在者は木である。おがくずを使ってキノコを栽培している生産者は、間伐材等のおがくずの原料になる木材が、バイオマス発電の原料として大量に使われるようになって、おがくず生産用に回ってこなくなった。そのため廃業に追い込まれる生産者も出てきているそうだ。
カラスとネズミの話で言えば、生ゴミの回収方法そのものの改善を図らずに、カラスを撃退すれば解決すると考えた、人間の浅知恵を反省すべきだろう。それに対して、バイオマス発電とキノコ栽培の問題をどう評するかは難しい。間伐材や製材屑の価値が上がることは、木材価格の上昇、森林保護と繋がり、国土保全、自然環境保護の観点からは好ましい。その一方で、木材価格の上昇は、発電業者、キノコ生産者の両方にとって事業の阻害要因になり好ましくない。
キノコは食べなくても済むが、生ゴミ回収が滞れば生死に関わりかねない。だが、現在の人海戦術的なゴミ収集を見ていると、先行きが心配になる。この心配が、年寄りの取り越し苦労で終わることを願うばかりだ。
(2024.01.05)