川流れ 歴史流れて 今があり
散歩で時々訪れる石神井公園の三宝寺池は窪地になっていて湧水が数カ所から出ている。池に溜まった水は東側の開けた部分から流れ出て石神井川に注いでいる。石神井川源流はここではなく、西に10キロ遡った小金井公園の中にある。石神井公園を通過した川は東に15キロ下って王子辺りで隅田川に合流している。私は高校時代に広島から東京に出てきた後は、武蔵野市、小金井市、練馬区と東京の西部にばかり住んでいたので、石神井川の上流域には親しみがあるが、下流域についてはイメージが湧かない。
先日、東京の東部の根津に住む友人から石神井川沿いを散策しないかとの誘いを受けた。王子駅を出発点に石神井川1、2キロを遡ろうとの企みで、自分が疎い川の下流を知る良い機会だと思い二つ返事で同意した。秋の日差しを浴びながら、王子神社、音無親水公園、旧醸造試験場の煉瓦棟、金剛寺、音無もみじ緑地、谷津観音と巡り、最後に疲れを癒すために銭湯に入る約2時間の工程であった。各スポットを繋ぐ川沿いの道は遊歩道として整備されていて、緑の木陰をのんびりと歩けた。銭湯に入ろうと川から街の方に入ると、一転して道が細くなりしもた屋が立ち並んで、下町の風情が漂っていた。
途中で立ち寄った金剛寺の案内板に、この敷地は室町時代には豊島氏一族の居城があったと記されていた。三宝寺池の南側の崖の上にも豊島氏の居城跡が残っているので、室町時代には豊島氏一族が石神井川流域に広く勢力を張っていたと知ることができた。この史実は石神井川の上流と下流が一体の場所であることを示している。この散策で、私のイメージも上流と下流が繋がり、めでたし、めでたしだ。
石神井川は全長わずか25キロの川ではあるが、周辺に住む人々の水と緑の憩いの場となっている上に、歴史に思いを馳せる機会をも与えてくれる貴重な存在と言える。とは言え、こんなことを知ることができたのはリタイヤして暇な身になったればこそと思うと、有り難くもあり、申し訳なくもありだ。
(2022.10.22)
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