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旅先で チンチン電車 楽しまん

都電荒川線

 東池袋停留所から早稲田停留所まで五駅、15分の都営荒川線の旅を楽しんだ。ゴトンゴトンと揺れながら、ゆっくり走る。3つ目の停留所、学習院下を過ぎ、左にカーブすると車窓から神田川沿いの緑が目に飛び込んでくる。次の面影橋に停車し、出発する時にチンチンと鳴らないことに気づく。

 今でも人々は、路面電車をチンチン電車と呼んでいるのに、チンチンと鳴らないのは寂しい。どこの路面電車もチンチンとはやらないのだろうか。昨年5月に乗った鹿児島市の路面電車はどうだったかな。ハッキリとは覚えていないが、鳴らしていなかった。数年前に乗った富山の市電でも聞いた覚えはない。

 思い返してみれば、チンチンと鳴らしていたのは車掌さんだった。どこの路面電車もワンマン運転になっているので、鐘を鳴らそうにも、鳴らす人がいないのだ。経済の発展と共に賃金が上昇し、2人乗務が無理になり、ワンマン運行になったとすると、鐘が鳴らないのも致し方ないか。

 鐘が鳴らないばかりか、道路の真ん中をゆっくり走る路面電車は、自動車の走行の邪魔とばかりに、全国の都市から相次いで姿を消して行った。東京では最盛期に40路線あったものが今や都電荒川線、1路線だ。そんな路面電車に巻き開始のチャンスが巡ってきた。昨年夏から宇都宮市に新しい路面電車が走っている。

 宇都宮市では、少子高齢化によって自動車の運転ができない人が増え、新たな公共交通機関の整備が必要になった。その答えが路面電車の新設だった。バスに比べて運行が正確、排気ガスを出さず環境に優しいなどが利点として挙げられている。軌道を走るのだから自動運転もバスより容易で、早期に実現できるなんてメリットもありそうだ。

 宇都宮市を参考に路面電車の導入を検討する自治体が増えていると言う。導入に当たっては、発車時にチンチンと鳴らす工夫もして欲しい。そんなことを望むのは、昔を生きる俺のような老人だけか。

(2024.06.01)

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