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夏きたり 海で泳ぐは もう無理か

夏の海

 7月上旬だと言うのに猛暑日が続き、テレビは朝から晩まで熱中症への注意を呼びかけている。その中の「特に高齢者、乳幼児については、周りの人が気を配ってあげましょう」なるフレーズが耳障りだ。そんなことをテレビで連呼されたのでは、老人は迂闊に散歩にも行けないではないか。熱中症の話題の前後で、海水浴場の様子がしばしば映し出される。散歩にすら行けない身に、海水浴場は目に毒、「老人の気持ちにもなってくれよ」と愚痴がこぼれそう。

 仮に、海水浴場の画像に合わせて、
「老人の方々も暑い、暑いと家にこもっていずに、たまには海にでも行って、気晴らしをしてみてはどうでしょう。」
てなナレーションが流れたらどうする。

 海で最後に泳いだのはいつのことだろう。数年前に、急に海が見たくなって真鶴岬に行ったが、足まで浸かっただけで泳ぎはしなかった。子供が小学生だった頃に、逗子の海岸で泳いだのは覚えているが、それ以来海で泳いでいないかも。泳ぐだけなら、練馬区体育館に併設されたプールで、コロナの前まで週1ペースで泳いでいた。プールと海では大違い。あの浮揚力。仰向けにプカリと浮くと、青い空に白い雲。あの爽快感はプールでは味わえない。

 生まれてから10歳まで、博多湾の浜辺のまで3分の場所で育った。その後、瀬戸内海に面した広島県西部の町に引越し、そこで16歳まで過ごした。今でも、夏が来ると、海が恋しくなる。だが、我が家のある東京の練馬から海までは遠い。バスと電車を乗り継いで、お台場まで2時間、逗子まで3時間。「気晴らしに行ってみたら」と言われたとしても、おいそれと出掛ける気にはならない。意を決して出掛けたとしても、「老人は家にいればいいものを」と、白い目でみられるのが落ち。

 心をそそられる海水浴場の画像には目を瞑り、テレビが言う熱中症対策に従い、「クーラーの効いた部屋」で過ごそう。高校野球の西東京大会のテレビ中継に読み差しの本もあるし。「喉が渇く前に、水分補給」を忘れずに。

(2024.07.13)

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