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ネギ、トマト 散歩ついでに 買い求む

練馬の農地(マンション、ネギ、キャベツ)

 道端の粗末な木の棚に、長ネギ、小松菜、赤かぶ、瑞々しい野菜が、並ぶ。どれも1つ200円。野菜の載った棚の端に、金属製の小さなお金入れ。『採れたてで、美味しそう。どれか1つ買って帰ろうか。えーと、冷蔵にどんな野菜が残っていたかな』、と考える。ヌッと人の手が出てきて、小松菜を1束掴む。チャリン、チャリンと100円硬貨の音がする。

 冷蔵庫の野菜室に何があったか思い出せないので、『また今度』、と買わずに、散歩に戻る。しばらく歩くと、ミニトマトだけを売る無人の販売小屋の前に、出た。3、4人が、出たり入ったり。通り過ぎながら様子を伺うと、ミニトマトの販売ボックスを取り替えているようだ。『農家の小銭稼ぎだろうに、何で販売に資金を投じるのだろうか」。

 数日後に、その小屋に行ってみて、ビックリ。電子マネーが使用可能な、真新しい自動販売機が鎮座している。『以前のボックス(小さく区切られた棚の1つ1つに扉がつき、扉の脇の硬貨投入口に300円を入れて、扉を開け、袋に入ったミニトマトを取り出す)で、充分だろうに』。

 露地栽培の野菜を粗末な棚に並べて売る農家と、ハウス栽培のミニトマトを自動販売機で売る農家。それぞれに、お家の事情があるのだろう。練馬区の農業経営実態調査によると、令和5年の農家戸数は385。その内、362戸(95%)が、農業収入が全収入の49%以下の兼業農家で、専業農家は8戸に過ぎない。断定はできないが、露地栽培の農家は兼業、トマト農家は専業で、本気度が違うのであろう。

 農地の宅地化が進み、農地は減る一方だが、未だ、散歩道で野菜を眺めて季節を感じることができている。しかし、農業従事者の高齢化と後継者不足を考えると、我が散歩圏から農地が消えるのは時間の問題であろう。健康で、散歩を楽しめるのは、あと何年かな。『農家の皆さん、私が歩ける内は、今の農地を維持して』、と祈るのみ。

(2024.12.28)

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