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パリ・ロンドン 宴・騒乱 夢現

 パリオリンピックでの日本選手の活躍に一喜一憂する一方で、世界で次々に起きるきな臭い出来事が気になった。その中で、労働党政権が誕生したばかりの英国で起きた暴動に注目した。

 ことの発端は、両親が移民の少年が起こした3人の少女刺殺事件。極右勢力が、この事件をネタに、事実と異なる情報を流して不特定多数の人達に、移民排斥の行動を促し、それが暴動を誘発した。

 成熟した社会であるはずの英国において、暴徒がホテルや商店を襲撃する映像を見て驚いた。貧富の差の拡大による社会の分断の成せる業か。極端な分子が流した偽情報がSNSを通して増幅した為か。

 そんなことを考えていたら、正体不明の画家バンクシーがロンドンの街角に次々と作品を描いているとのニュースが流れてきた。パリでオリンピックが開催されている最中に、英国では騒乱が起こっている。この明暗が交錯するタイミングでバンクシーは、どんな絵を描いたのだろう。絵にはどんなメッセージが託されているのだろう。

 作品は9つ。場所はそれぞれ異なるが、山羊、猿、象、狼、ペリカン、猫、ピラニア、犀、ゴリラ。どの絵も家の壁、広告板等の背景も含めて趣向が凝らされている。

・家の2階の窓から顔を出しお互いを探るように鼻を延ばした2匹の象からは、ほのぼのとした雰囲気が感じられる。
・フィッシュ・バーの看板の上に停まり魚をもてあそぶペリカンは、ユーモアーに溢れている。
・ロンドン動物園の入り口のシャッターを押し上げて、動物たちを逃すゴリラは、動物の権利擁護を訴えているようだ。

人間から魚をくすね、「してやったり」と喜ぶペンギン?
迫り来る危機を告げる狼?

 全ての絵が、意味ありげだが、一連の作品を通して、バンクシーは何を伝えたいのか。

・暴動で苛立った英国人の心を和ませたい。
・パリオリンピックに熱狂する人々に、紛争と騒乱の地に満ちる怒りと悲しみを思い起こさせたい。
・動物たちの姿から、自然界と人の関係に思いを致して欲しい。

 深読みすれば、色々ありそうだが、凡人には計り知れない。

(2024.08.17)

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