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特定のフロップの分析・比較②(Th3c2d)

前回の記事と同様に特定のフロップについての分析とレンジが変わったときの比較をしていきたいと思います。

今回も下記の流れで書いていきます。

1,前提
2,UTG open VS BB call (Single raised pot)の場合
3,BTN open VS BB call (Single raised pot)の場合
4,まとめ
5,補足:プリフロップのレンジ詳細


【1,前提】

対象とするフロップ: Th3c2d

比較対象①UTG open VS BB call (Single raised pot)

比較対象②BTN open VS BB call (Single raised pot)

※ESはどちらも100bb。

※本記事の下部にもレンジ詳細は掲載いたしますが、前回と全く同じものです。

※前回の記事で「ベットサイズの選択肢をどう計算したのか」という質問を頂きました。Cbet,Lead betについては33,75,150%、OOPのチェックレイズは33,75%,OOPのlead betに対するIPのraiseは75%を選択肢に設定して計算しています。説明不足な点があり申し訳ございませんでした。ご質問ありがとうございました。

今回あまり頻出ではないようなこのフロップをなぜ題材に選択したのかと言うと、IP/OOPの戦略がどちらも非常に興味深かったからです。

さっそく分析・比較していきたいと思います。

【2,UTG open VS BB call(SRP)の場合】

2-1,IPのCbetについて

このフロップでは、IP(LJ)はレンジのほぼ100%でCbetを打ちます。

ベットサイズは9:1の割合で33%と75%を打ち分けます。

(※細かい話ですがAKsや66-99、JTs・QTsなどSDVがありターン以降のプレーアビリティを保ちたいハンドはやや75%ベットのフリークエンシーが下がります。)

前回の記事では「(LJは)ナッツアドバンテージがありトップペアの比率も高いから高頻度でCbetできる」、反対に「(BTNは)トップペアの比率が下がりCbet頻度下がった」ということを書きました。

しかし今回の設定ではナッツアドバンテージはむしろBB側にあります。

TTはお互いに同じだけあるのですが、LJ側には22と33が存在しません。

さらにいえばTPTK(ATs.ATo)のコンボ数もOOP側のほうが多くあります。

ではなぜIPは100%の頻度でCbetを打てるのでしょうか。

なぜCbetしたほうがEVが高くなるのでしょうか。

これが今回このフロップを題材にした理由でもあり、最大の疑問点です。

GTO+の画面をあれこれ切り替えたりExcelでいろんなグラフを作ってみたり、2時間ほどこの謎について考えながら格闘した結果、確信をもって言える答えはでませんでしたが、以下のようなことを考えました。


・IPのレンジはこのボードに対して60%と高くかつスムースであること(トップレンジとボトムレンジのエクイティに大きな差がない=偏差が低い傾向がある)

・T23rというフロップ自体がお互いのプリフロップのレンジの強さを発展させていないため、プリフロップ時点でのレンジが強いIPがそのままレンジの強さを主張できる

以上の理由からIPは広いレンジでベットできるのではないでしょうか。

2-2,OOPのvsCbetについて

冒頭でも述べている通り、OOPの戦略もまた非常に興味深い計算結果でした。

33%potCbetに対して計21.62%のチェックレイズ、37.4%コール、41.0%fold

75potCbetに対して計17.05%のチェックレイズ、27.7%コール、55.3%fold

の頻度で対抗をしています。

前回のAcKd5cのフロップではOOPは6.3%ほどしかx/rしていませんでしたが、このフロップでは非常に高い頻度でx/rしています。

また、他いくつかのフロップと比較しても非常にOOPのx/r頻度が高いフロップと言えそうです。

OOPのチェックレイズは、21.62%のうち15.2%が75%、6.42%が33%と混合戦略を使っていますが、ベットサイズによるハンドセレクションはほとんど変わりません。

22,33のセットは100%のフリークエンシーでx/rを返しています。オーバーペアやTに向けてバリューのあるハンドです。

反対にTTはIPのバリューターゲットであるTxをブロックしてしまっているため、約50%はx/cをしており残り30%の頻度で33%pot、20%の頻度で75%potのx/rをしています。

他にはTxの主にバックドアにあるハンドでバリューレイズしており、ブラフにはA5s,A4s,64s,65sなどのガットバックドア、45sのOPEDバックドアが入っています。

またIP側のA3sを減らしている53ssや53ddや相手側のTxを減らしているAJ,KQ,KJの2オーバーガットバックドアもチェックレイズブラフしており、このあたりがOOP側のチェックレイズで最もエクイティの低いハンドのようです。

22-33を除く全てのチェックレイズレンジにはコールのフリークエンシーもあり、Txやポケットペアにバックドアのある2オーバーやガットショットを混ぜることでコールレンジをバランスしています。

反対に絡んでいないスーコネ系やバックドアのない2オーバーはAQoやAJoなどの強いところも含めてフォールドすることが多いようです。

下記はOOPのチェックレイズに対するIPのディフェンスレンジです。

2-3,ターン以降の展開

下の画像はターンのIP側のEVです。

フロップでOOPはTxやミドルポケット、ガットショットなどでディフェンスしているため、4-9のカードはOOPにとってやや有利になるようです。

TのリピートはOOPにとって非常に有利なターンカードで、この場合IPはほぼ全レンジをチェックバックします。

反対にQsやJsなどはIPのブラフレンジを強化するためIPにとって非常に有利なターンカードとなり、この場合IPはほぼ100%の頻度で75%potbetをします。

Asが落ちた場合はややIPに有利なカードではあるのですが、IPはAxのほとんどをチェックバックし、AAやTT・ATのようなトップレンジと66,KQのようなボトムレンジにポラライズしてベットレンジを構成しています。

これはあくまでフロップのナッツアドバンテージはOOP側にあり、かつAが落ちたことによりOOP側のA2,A3がツーペアに・45sがナッツストレートになったため強いレンジを主張したx/rを敬遠しているのでしょうか。

4~9のターンカードが落ちた場合も主にTxやポケットペアはチェック、オーバーペアとセットをバリューレンジ、それ以外をブラフレンジにポラライズさせて全体で約50%の頻度でターンCbetしています。

ターンでIPがチェックバックした場合、リバーはT以下のカードが落ちた場合OOP側はショーダウンバリューのあるハンドはチェックして、Txやセットをバリューレンジ・それ以外のほぼすべてのハンドでベットします。

具体的にはTのリピートなどの場合は約75%の頻度、それ以外でも約50%の頻度でベットします。リバーのOOPのベットに対してIPがAQ-のハイカードでキャッチすることはなく、KQハイは50%ブラフレイズ50%フォールド、ワンペアでブラフキャッチ、セットでバリューレイズしています。



【3,BTN open VS BB call (SRP)の場合】

3-1,IPのCbetについて

今回のプリフロップ想定の場合、LJにはなかったIPのレンジとして22や33、AToが加わるため、よりポラライズされたベットレンジで構成されるのでしょうか。この仮説が合っているか早速細かく見ていきましょう。

LJvsBBではほぼ100%Cbetを打っていたこのフロップですが、BTNvsBBの場合は全体で55.4%の頻度でCbetと大幅に下がるようです。

ベットサイズについても

150%potを6.4%

75%potを20.8%

33%potを28.2%

の頻度でハンドごとに打ち分ける混合戦略になります。

少し見にくいので、ベットサイズごとのレンジ構成を確認していきましょう。

150%potサイズのCbetレンジはオーバーペアと22,33のセット、ATやKTをバリューレンジとしてその他はK5ss,Q9ss、A6o-のような完ブラのレンジで構成されています。

75%のレンジにはTTのようなナッツ、Tx、45s(OPED)からナッシングまでほぼすべてのレンジで構成されています。

A9とAJ、99は75%potベットのフリークエンシーが0で、AK,AQ、88などのSDVあるハンドもほとんど75%potベットはしていません。

33%potベットのフリークエンシーはレンジのほぼすべてに存在しています。

そしてチェックバックレンジには22,33,JJ-KK以外のすべてのハンドが存在しています。

緑のマスが大きいハンドほどチェックのフリークエンシーが高くなっています。

これを見ると8x,7xが非常にチェックの比率が高くなっています。

これはおそらくそもそもCbetの狙いには78sや79s,K8sのようなハンドにエクイティを放棄させる(フリーカードを与えない)ということが含まれており、後述するOOP側の「ベットされたら降りるハンド」をブロックしてしまっているため、チェックバックしているのではないかと考えられます。


IPのベットレンジがポラライズレンジで構成されるのではないか、と仮説を立てて見てきましたが結果はどうやら違っていたようでした。

むしろ33%potと75%potにTT,33,22のすべてを入れることでレンジ全体をバランスしていたようです。


3-2,OOPのvsCbetについて

IPのフロップCbetに対してOOPは

150%potベットに対して、9.32%レイズ 25.8%コール 64.9%フォールド

75%potベットに対して、12.3%レイズ 38.8%コール 48.5%フォールド

33%potベットに対して、19.51%レイズ 49.3%コール 31.3%フォールド

で対抗しているようです。

当然いずれのベットサイズに対してもOOPがTをフォールドするフリークエンシーは全くありません。

33%potCBに対してはすべてのセットをチェックレイズ、75-150%potに対してはTTをコールレンジに残して22-33はすべてチェックレイズしています。


2-3,ターン以降の展開

ターンカードのEVはフロップでのIPのベットサイズによって大きく変わります。

BBx/c BTN bet 33% pot

BB x/c BTN bet 75%pot

BB x/c BTN bet 150%pot

150%potベットについては、バリューレンジがオーバーペアを主体に構成されているため、Tがリピートする以外ほとんど何が落ちても高いEVがあります。4や5はOOPのドロー完成目であるため、若干EVが低くなっています。

同様の理屈からベットサイズが大きければ大きいほどターンカードごとのEV差(偏差)は小さくなる傾向がありそうです。

いずれの場合もTのリピートはOOP側に非常に有利なカードと言えます。TがリピートしたターンではIPは22,33,ATとドローでポラライズしてベットレンジを構成するためベット頻度は極めて低くなります。(85%~100%前後チェック)

フロップでIPが33%betをしてOOPがコールし、ターンにミドルカードが落ちたケースはIPはレンジの30~40%ほどを150%potベットを継続し、残り60~70%ほどをチェックバックしています。

例として7sがターンカードだった場合の画像を載せます。

オーバーペア、セット、ATをバリューレンジに、JxやAxのガットショットやOPEDとKxのナッシングでベットレンジが構成されています。

8c,5d,3dなどいくつかのターンカードを確認しましたがいずれの場合もほぼ同じ頻度で150%bet or xの戦略を取っておりレンジ構成全体も近しいものでした。

またフロップでIPがチェックバックしている場合は、フロップ時点でIP側がTも混ぜてレンジをバランスしているため、OOPにとって有利なカードではなくなります。下の画像はフロップでIPがチェックバックした場合のターンカード別のEVです。


【4,まとめ】

フロップTh3c2dでは

・LJvsBBの場合IPはレンジ全体で33%potCbetを打つ

・BTNvsBBの場合IPは混合戦略を取りを打つ

・Cbetの頻度はLJはほぼ100%と高頻度、BTNは55.4%と中頻度

・フロップでベットアクションが入っている場合、ターン以降Tのリピートは、OOP有利になる。


こういったドライなフロップではやはりプリフロップのレンジが強いIPが有利に展開できるようですね。

とはいえ、お互いにTxやセットを弱いレンジにミックスすることでバランスをするべきシチュエーションが多く、人間が再現するには難しいフロップです。

またお互いに完ブラから弱いドローを混ぜてブラフするため、適切な頻度やバランスを保たないと大幅にEVlossしてしまいそうです。

今後はこういった人間が再現するのが難しいプレーアビリティの低さに対する解決策も考えられるようになっていきたいです。


非常に長文でしたが、ここまでお読みきありがとうございました。

このブログに関する質問やご意見は

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どんな内容でも構いませんのでぜひお気軽にご意見いただけると幸いでございます。



【5,補足:プリフロップのレンジ詳細】
プリフロップのレンジは下記の通りに設定し計算をしました。

①UTG open VS BB call (Single raised pot)

【UTG open range】

AA-66,AKs-ATs,A5s-A2s,KQs-KTs,QJs-QTs,JTs,AKo-AJo

【BB call range vs UTG open】

TT-22,AJs-A6s,A4s-A2s,KJs-K9s,QJs-Q9s,JTs-J9s,T9s-T8s,98s-97s,87s-86s,76s-75s,65s-64s,54s-53s,AQo-ATo,KQo-KTo,QJo,[75.0]A5s,KQs[/75.0],[50.0]JJ,AKo[/50.0]

比較対象②BTN open VS BB call (Single raised pot)

【BTN open range】

AA-22,AKs-A2s,KQs-K2s,QJs-Q7s,JTs-J7s,T9s-T7s,98s-96s,87s-85s,76s-74s,65s-64s,54s,43s,AKo-A2o,KQo-K9o,QJo-Q9o,JTo-J9o,T9o

【BB call range vsBTN open】

44-22,A8s-A6s,K9s-K2s,Q9s-Q6s,J9s-J7s,T9s-T7s,98s-96s,86s-85s,75s-74s,64s,A9o,A5o,KTo,QJo-QTo,JTo,[90.0]ATo,KJo[/90.0],[85.0]55[/85.0],[75.0]66,A9s,A3s-A2s,KTs,JTs,87s,76s,65s,54s,AJo,KQo[/75.0],[55.0]77[/55.0],[50.0]A5s-A4s,QJs-QTs[/50.0],[45.0]88[/45.0],[28.0]99[/28.0],[25.0]AJs-ATs,KJs[/25.0],[15.0]KQs[/15.0],[10.0]TT,AQo[/10.0]


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