劇場版:少女歌劇レヴュースタァライト

(ネタバレなし感想です)

劇場版:少女歌劇レヴュースタァライト(2021)は、案外に素朴な映画で、素朴だからこそ一本映画として徹底しようとした作品です。

TVアニメの正式続編ではありますが、「オーディション」の秘密がやがて明かされるとか大人になった登場人物たちがまた集まって意気投合するような「同窓会」スタイルの映画ではありません。映画タイトルが上がった直後、高校三年生になった登場人物たちが次から次へと進路調査書を先生に提出しているのに、主人公である愛城華恋だけがまだ何ひとつ決めていない、というのが映画の事実的な始まりであり、終盤になってもあんまりそこから多く離れていません。

つまり、この映画には、観客に対してあるゲームを提示し掛け合いをしようとする勝負欲も、進み上がって先についた頃にはロバがウマに変わったという「物語」もありません。例外になる登場人物が正に主人公愛城華恋ですが、そこまで求心力が強いとは言えません。学校という巣から離れ、飛び立つ前の不安と覚悟ーーそれを皆が寝床で横になって延々と語るだけの、卒業旅行の夜に行われる打ち明け話。それがこの素朴な映画の正体だからです。

だが、「淡々と」いう副詞はレヴュースタァライトは似合わないし、それをこの作品もちゃんと知っています。内容は素朴なものだとしても、あらゆる映画や演劇を引用し、その語り方のダイヤルが10を超え、12を超え、365まで上げて、凄まじい形と勢いで描かれている作品なのです。一本映画として徹底している、とはそのことで、映画全体が文字通りにワイルドスクリーーーンを叫びながら、横スクロールアクションゲームみたいな構図を沢山用意し、二人の「会話」を迫力よく描きます。

卒業がテーマだからでしょうか、明るく前向きの可愛い映画であるにも関わらず、セックスと死のイメージがスクリーンに漂っています。それを前にした不安やときめき、迷いみたいなものを最大級に映りだした結果なのでしょう。その故、この作品はTVa本編を見なくても、だれでも楽しめる一本の青春エンターテインメント映画として成り立ったと思います。

ただ、惜しいところが全くないと嘘になります。この映画での会話とは、結局二人組によるものであり、一セットを除ければ予測範囲の組み合わせです。いくらメガトン級のパンチだとしても、二度三度打たれると観客は鈍く感じてしまうのです。欲を言えば、9人の登場人物だからこそ皆の声が混ざり合い、誰が話しているのか、何の話をしているのか、歌なのかノイズなのか分からないレベルまで「会話」が描かれていれば、もっといい作品になったのではないかな、と。以上しょうもない感想でした。

★★★☆(Bad / So-So / Good / Great)

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