パンとスープとネコ日和

私は食べ物が出てくる物語が大好きだ。
漫画も小説も映画もテレビも。
そして、外出自粛により時間が余りまくっていることもあり、せっかくなのでAmazonプライムで色々と見ている。
少し前にかもめ食堂を見ていたので、お薦めに出てきた「パンとスープとネコ日和」。
パンもスープもネコも好きなので見るしかない。
結果、とても良い!
懐かしくもあり、お洒落でもあり、こんな町好きだなぁ。
アキコはいつだってありのまま。
小林聡美さんの演技は、本当に素敵だな。「普通」を演じるのが一番難しいだろうなと思う。
この方、普段もずっとこうなんだろうな、このままだなと現実と映像の区別をなくしてくれるのでストーリーがすっと中に入ってくるのだ。

一番好きなシーンは第2話。
アキコが営むサンドイッチ屋さんに何となくで通りかかったおじさん一人が入ってくる。

「え、メニューこれだけ?」
アキコのお店はサンドイッチとスープ数種類ずつしかない。
コーヒーもない。

「あぁそう…あ、灰皿ある?」
灰皿なんてある訳ない。
禁煙だ。

「そうか…ごめんね」
と言っておじさんは何も頼まずに出ていってしまう。
たまにある光景だけれど、何となく切ない。

そんなおじさんが出ていったのと入れ替わりで近所に住んでるおじさん二人が入ってくる。

「アキちゃん、こんにちは!」
「お前声大きいよ…」
「何でだよ、良いじゃん。お前、何にする?」
「えっ…お前先に選んでよ…」

「美味しいだろっ?なっ?」
「…(無言で満面の笑み)」
「うまいなー!(ニコニコ)」

この対比がとっても素敵だった。
何より、パンとスープだけのお洒落なお店に来たおじさんが恥ずかしがりながらニコニコしてサンドイッチ食べてる画が無性に可愛い。

前者のおじさんが悪い訳でもないのだ。
世の中にはこういうちょっとしたもやもやは往々にしてある。
この描写は別にそんなおじさんを責めてる訳でもない。(実際、そのすぐ後にそのおじさんが向かいの喫茶店でタバコを吸ってのんびりしているシーンも描かれている。)
日常のひとこまとして描いた後、そんなおじさんのもやもやを吹き飛ばす可愛いおじさん達の笑顔。

日常はこんなもんで、少しの悪いことと少しの良いことを繰り返して過ぎていくんだなぁと改めて思える良い場面だった。

お母さんが亡くなり、お店を開き、ご近所の方と交流が深まる。
サンドイッチは美味しそうで、お店はそこそこ繁盛。
大きな事件は起きないし、お医者さんも警察も出てこないけれど、ずーっと見ていたくなるドラマ。
心を落ち着かせることのできる、とても良い作品だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?