イカ大根
これは彼女と付き合って間もない頃の話。
普段は笑顔でご機嫌な彼女。
そんな彼女に突如、事件が起こりました。
その日は、私の家で初めて、彼女が手料理を作ってくれました。
私は仕事で、彼女が休み。
前日、何が食べたいかと聞かれ、私がリクエストしたのが、イカ大根。
彼女 イカ大根!!!
初めて作るけど、大丈夫かな?
私 まぁ、別のでもいいよ!
彼女 いや、頑張って作ってみる!
私は仕事を終え、足早に帰宅した。
家に着くと、私の住むワンルームマンションは見事なイカ大根の香り。
イカ大根だ!!!
喜ぶ私を他所に、彼女の様子がおかしい。
テーブルに蹲って泣いているのです!!!
なに、どうしたの?
彼女は大粒の涙と鼻水を拭い、第一声。
イカ大根が、イカ大根が、、、
全然美味しくないの!
私 なんだ、そんな事か?大丈夫だよ!
彼女 なんか、生臭い。
後味も濃過ぎた。足していったら、味が醤油過ぎる。
涙ながらに、頑張ったんだと訴える。
『無理して食べなくていいと言い、彼女は納豆と梅干しをテーブルに出してくれた。』
私 うん、確かに濃いけど、大丈夫だよ。
彼女 美味しくないよね?
私 美味しくは無いけど、不味くは無いよ。
彼女 号泣、大号泣。
涙腺と言う名の川が大氾濫です。
私はびっくりした。
それぐらいの出来事で、どうして、こんなに泣けるの!?
私は少し困りつつ、どう頑張っても面白くなりけらけら笑いました。
私 大丈夫だよ!
イカ大根は無事二人の胃袋へと届けられた。
その後、二人仲良く、眠りについた。
そう思って、少し経ったら、隣で鼻を啜る音。
彼女が泣いている!!!
『機嫌治ってたのに、どうして!?』
〜ちゃん、どうしたの?
少し間が空いて、一言。
イカ大根の事を思い出してたの。
私は暗い部屋の中、彼女の肩を抱摩り感心しつつ、笑いを堪えた。
彼女はどうやら、本物の泣き虫です。
しばらく、イカ大根は二人の禁句ワードとなりました。
そんな彼女、今では妻です。