2-5 サブタイトル
2-5 サブタイトル
M瀬さんはこの会社で本当にたくさんのことを与えてくれた人だった
ちょっと個性的な人なので
苦手なスタッフや女の子は多かったが
好きな人は本当に好き、俺もその一人だった
B店は本当に楽しかった
この環境がずっと続けば良いと思ってた
この店に異動する前にいたA店では
俺の後輩でNAさんに可愛がられていたN沢くんが仕事中にとんだ(バックレ)と耳に入った
俺のときみたいにNAさんは定期的にあたる人間が変わるのでもしかしたらN沢くんに矛先が向かったのかな
後輩の事なのに悲しいという気持ちはあまり湧かなかった
もうA店のことは他人事になってしまったようだ
そんなことより今いるB店がこのまま楽しければそれでいい
そんな風に本気で思ってる自分がいた
自分勝手な俺にやがてバチがあたる
M瀬さんが近々A店に
異動することになるというのだ
マジか、、、
M瀬さんがいなくなることに
個人的な気持ち(寂しさ)と
仕事への不安を覚えた
M瀬さんは女の子の管理から重要な仕事は全てやっていたので店的にパワーバランスがおかしくなるのは誰が見ても明らかだった
引き継ぎもあるので3日後にM瀬さんはA店に言ってしまう
後任の人が来るみたいだが知らない名前だったので不安しかなかった
歳は4つ下だが仕事のイロハを教えてくれた人がいなくなるのは本当に嫌だった
店の入口で立ちながら思いふけっていたら
それを見てM瀬さんが隣に立って話しかけるのだ
「K君はさ、ドラゴンボール好き?」
急になんだろうと思ったが
「はい、わりと好きです。漫画も全巻持ってました」
「ドラゴンボールの映画っていつもサブタイトルついてるじゃん」
「あぁ、ありますね、熱戦烈戦超激とかですよね」
「そう。その中で俺が好きなサブタイトルがね、悟空がやられなば誰がやるなの」
「K、お前に足りないのはこれだぞ。俺がやらなきゃ誰がやる」
「お前には決定的にこの気持ちが欠けてる」
「俺はもういなくなるんだから、お前がこれから自分でやるつもりでやれよ」
M瀬さんはワンピースのエースがすごく好きでグッズもフィギュアも集めるくらいエースが好きだった
歳下だけど
俺にとって兄貴分のM瀬さんは
穏やかな笑顔で俺の前から去っていった
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