2-7 ターニングポイントの夜明け前
2-7 ターニングポイントの夜明け前
Y石さんがC店の店長になるにあたり
ランキングの女の子達8人がC店へ異動した
確かに女の子達も
男子スタッフの半分の人間が異動で変わったし
Y石さんを慕っていたから
これでよかったのかもしれない
そう言い聞かせていたが
案の定集客面に影響が出ていたし
何よりも一日の出勤数が少なくなった
この頃はお店のブランディングとして
女の子の出勤数がとても大事だった
※今は出勤数(量)より写メ日記(女の子のクオリティ)の方がお店のブランディングとしては重要だがこの頃は写メ日記なんてなかった
出勤数が多ければ多いお店ほど
可愛い女の子が多そうで良いお店で人気があるように見られていたと思う
そして追い打ちをかけるように
数カ月後にD店を出店するので
うち(B店)からも数十人送らないと
いけなくなった
そんなに送ってしまったらうちの店はどうなるんだ
目の前が真っ暗になるような状況に陥ってしまった
とにかく今は女の子の入店が最優先事項
とにかく面接に力を入れるしかない
ちなみに
📌サロの面接は一般企業やアルバイトの面接と違い
少々難しい面があり
面接から本入店へと繋がる確率は決して高くない
理由は女の子の想像していたのと違ったり
簡単に稼げると思ってたけど簡単そうじゃないとか
他のお店の待遇も気になるとか
色々あるのだが
そもそも最初の目的が
“そこで働くのが目標”
ではなく
“お金を稼ぐのが目標”
なので
より良い条件を探す心理がある為
面接からの入店率は20%〜30%が平均的
良くない月は0%〜10%ではないだろうか
とにかく面接件数を増やすのと
入店決定率を上げる両方が必要なのだ
これだけは今も昔も変わらず
全ての店が抱える課題でもある
今だから冷静になって分析できるのだが
K太さんは
俺が見てきた店長の中で
一番面接での結果を出せていなかったと思う。
強面、威圧的な雰囲気、言葉の選択
いつも面接後女の子を帰しては
「舐めてたから詰めた」
という言葉を何度も聞いた
他の二人の幹部である
Y澤さんは穏やかな性格もあって体験入店する女の子が一番多かった
O崎さんは結構上から目線で女の子に話す傾向があり体験入店する女の子はほぼいなかった
まだ一年ちょっとの俺が心配するのも違うが
このままではマズイというのは
誰が見ても明らかだった
そしてしばらくすると
どうやらBOSSからも結果を出せてない現状に対して指摘されたみたいで
K太さんの表情に余裕が少しずつ奪われていくのが見てとれた
このままではマズイ
こんな時
Y石さんだったら
M瀬さんだったら
そんなことを考えるようになった
そういえば
M瀬さん最後に俺にこう言ってたっけ
「俺がやらなきゃ誰がやる」
今になってこの言葉が
この瞬間からこの言葉が
俺の中で炎のように燃え上がり
はじめてこの会社で
自我のようなものが生まれた感触を覚えた
身体の芯から熱気が溢れでるようだ
俺がやってやる
俺がこのピンチをどうにかしてやる
その日の営業終了後に
K太さんに明日の面接
俺にやらせてくださいと伝えた
不思議と不安は無かった
おかしな話だけど
このモチベーションなら
何か負ける気がしなかった
この時が俺のこの📌サロの仕事に対する
気持ちのターニングポイントになったと思う
出世とか、必要以上の収入には興味は無かったが(深入りしたくなかった)
楽しかったお店が
崩れて行くのはどうしても嫌だった
何かに奪われてしまうような気持ちが
守りたいという強い気持ちに変わった
この時初めて
誰かにやってもらうんじゃなくて
俺がやってやると本気で思えた瞬間だった。
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