旅のお土産
ああ、あけるのか。あけてしまうのか。
泳げそうな雲海の向こうに、丸い光が顔を出した。
マレーシア、キナバル山。
標高4,095mのこの山は、熱帯の植物が生い茂る穏やかな山だった。
山小屋を出たのは深夜3時前。
ヘッドライトの灯りを頼りに暗闇の中をひたすら登り続ける。
疲れ切った顔を上げると、満点の星空が労ってくれる。今はどのくらいまで登ったのだろう?
なんだか急に混雑してきた。
暗闇で分かっていなかったが、いつのまにか頂上に到着していたようだ。
この標高で歩みを止めるとさすがに寒い。
もう一枚着込もうかとザックをあさっているうちに周囲から歓声が上がった。
日の出だ。
登り始めた太陽が織りなすグラデーションは、ほんのわずか数分。
この短い時間を待ち望んでいたはずなのに、いざそれが始まると終わりがみえて寂しくなる。
しかし、その感動も寂しさも、お土産にして日本に持って帰るのだ。
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