2024.7.7 地層
午後1時過ぎ、ぼくは都内某所へ行くため電車の中に居る。
今日は35℃を超える猛暑日
いったいいつから夏なのか?いつ梅雨があったのか?分からないでいる。
途中駅で乗り継ぎ、涼しい車内に入った。
無言の圧力があるなか、
熾烈の椅子取りゲームに勝利する。
最初は1席しか空いてなかったので、そこに彼女を座らせた。
その隣りに座っていた男子大学生(カジュアルな格好の)が気を利かせてくれて、席を譲ってくれた。
聞こえるか聞こえないか、という声で感謝を伝えた。
滴った汗を拭い、
カバンから本を取り出して、
読書モードに入る。
文字から意味へ、意味から想像へ
点と点が線になっていく感覚を思い出す。
読書は電車のなかが1番捗る。
しかし
なんだか今日は文字が浮ついている。
いつもなら水のように浸透していくことも、
今日は硬い壁となってぼくの前を阻む。
仕方がない、
今日は特別の猛暑日だ。
本から意識を離して、
周囲全体に意識を向けてみる。
サングラス越しにどんなひとが乗っているのかを観察する。
最初に目を向けたのはさっき席を譲ってくれた男子大学生だ。
よく観ると、スマートフォンの背中に彼女とのプリクラがあった。
「彼女がいるのかな。彼女が居るひとには席を譲れる余裕があるんだな。」
なんて思いながら、隣りにも目をやる。
ミニスカートを履いた女性がいる。
パンツが見えそうである。
マジックのように見えそうで見えない。
こんなことをサングラス越しにしてる自分がなさけない。
興奮してる訳でなく、種明かしをしたい気持ちだ。
しかし決まって分からない。
女の子はプロマジシャンなのだ。
ボーッとしていると、
『大きなちいかわ』のぬいぐるみが転げ落ちる。
(おおきくてかわいい。おおかわ?)
居眠りをしていた女の子が手に抱えていたソレを手放したからだ。
拾うスピードはものすごく速い
(ものはや、だ。)
おおかわはものはやで拾われた。
電車は特急で駅と駅が離れてる。
スっとばされた駅に住んでるひとは、ぼくと同じように少し大きな駅に移動してから乗ってくるのだろう。
その駅にもうそろそろ着く。
ぼくの左斜め前に立っている女の子がソワソワとしている。
後ろを見たり、反対側を見たり
とにかく乗客のひとの位置を確認しているようだった。
そして駅に着く
少し大きな駅に着く
今まで座っていたひとが一斉に立ち上がり、
それまで立っていたひとたちが空いてる席に向かって加速する。
先ほど、首振りしていた女の子も同様に一目散に座る。
今まで時間をかけてできた形がやり直しになる。
まるで山の噴火のようだった。
それまで静寂を貫いてた山が、
なにか思い出したかのように噴火する。
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