老人と性の問題

 ある日、ヘルプで別事業所に行った時の話だ。
「あ、niwakaさん、私今月で辞めるの。研修で色々ありがとうございました。」
と退職を告げてきたのは施設で介護士をしている19歳の女の子だ。しかも正社員として勤務している子で、介護研修ではとにかく熱心に質問をしたり、実技でも率先して取り組んでいたのが印象的な子だった。そんな前向きに介護という世界に取り組んでいる人間が、辞めるだなんて驚いた。まぁ、給料が安いからかな、なんて思って辞める理由を聞いてみたのだが、お金ももちろんあるけど、どうもお金が辞める原因ではないようだ。

 僕が働いているグループホームは1フロア9名の入居者で職員が日勤では2〜3名、夜勤は1名のシフトで対応している。
日勤帯では入居者に入浴介助を行う。そこで、ある男性入居者がその子の身体によく触るらしい。その日は僕もヘルプで日勤帯として業務に当たっていたのだが、そのおじいちゃん、ここではH氏としておこう。H氏は御年100歳のおじいちゃんだが、女というものへの執着がその年になっても消えないらしい。どうも若い頃から遊び人で外で女を作っては奥様からよく叱られたという話も聞いた。

なるべくシフトで入浴介助をその子が当たらないようにホーム長も気をつけていたらしいが、どうしても介護業界は人手不足、巡り合わせでH氏の介助に当たってしまった。居室にその子、ここではAさんとしておこう。Aさんが入ってH氏をお風呂にお誘いしに行った時、
「きゃー!!」という悲鳴が聞こえてきた。

慌てて数人の職員が居室に入ると、H氏が左手でAさんのお尻をなでなでしていたのだ。Aさんが振り払おうとしても、100歳とはいえ、男性の力は強く、触られ放題、しかも股にまで手を突っ込んだり胸を揉んだりしようとするので、慌てて数人がかりで引き離す始末。これが退職の原因か。確かに。介護研修では認知症患者へは全て受容の精神で否定や拒否をしてはいけませんと教わるのだが、これはさすがに・・・と思った。その日の入浴はしょうがないのでAさんから僕に変わった。
H氏のあれは、ほんの少し反応していたのにも驚かされた

「嘘だろ?、じいさん、100歳だぜ?俺なんてこの歳ですでに・・・」
老人でもまだその欲求が残っている男性、認知症だと本人の欲望として強い部分が顔を覗かせるということらしい。健康な時はそれを理性で抑えていたのだが、認知症となると、そこがむき出しになるそうだ。
確かにAさんは気の毒だし、かわいそうだが、このH氏だって本来なら知られたくない部分だろう。

 昼ごはんが終わり、午後のまったりとした時間。レクをする人もいるし、本を読むおばあさんもいる中、またもや絶叫が聞こえてきた。
「ちょっと!職員さん来てちょうだいよ!、あの爺さん、自分でおっぱじめちまったよ!!」
慌ててH氏の方を見ると、車椅子に座った状態で、机に向き合い、身体が小刻みに上下に動いている。ズボンを下げてコイていたのだ。
テレビには広瀬すずのAGCのコマーシャルがやっていた。まじか、、広瀬すずはまだ20歳そこそこだぞ。
職員が慌ててH氏を居室に連れて行った。
Aさんに、これが退職の原因なんだね、驚いたけどわかったよ。というと
「そう、人が足りないのもわかるけど、根本的に解決してはもらえないから、仕方ないけど辞めるんです」

 そこで考えた。老人と性、見たくないけど目を背けてもいられない。
批判もあるだろうし、倫理的にもどうかとも思うけど、職員へのセクハラを軽減する意味でも、別サービスでそういったおじいさん向けの風俗サービスもありなのではないか、と思ったのだ。
 理美容の日、パンの日、ヨガの日、の他に、老人向け風俗の日、リアルの女性風俗スタッフが来るのもいいけど、痰吸引と同じように、ナニかしらの機器や物質で、いわゆる、「ヌイて差し上げるのだ」。

利用者のセクハラを適当にかわすことも必要よ、ではなく、それ専門の業者がいて、それ専門の装置で行うのだ。職員はセクハラに悩まされず、H氏のような当事者も迷惑をかけることなく、尊厳も守られる。
の話してしておくと、追い出される危険性もあるだろうから、こういった(こういった多いな)サービスも真剣に考えてもいいのではないだろうか。保険適用ができたらなおよしだけど、それは難しいだろうな。
セクハ
 僕は年寄りになったら全員あっちの性欲はなくなるものと思ったけど、どうもそうでもないらしい。
人による個人差があるのだと改めて考えさせられた。


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