
後悔、ポッカリと空いた心の隙間
2023年9月11日、夜8時過ぎ。介護から帰って一眠りした時目覚めて携帯を確認。
私が経営していた会社の元社員2名から着信があった。そのうちの一人は色々揉めてできればもう関わりたくない人だった。
もう一人はたまに飲みに行く間からの元社員N。
Nに折り返し電話する。
「社長、良かった、つながった。Sさんから電話来ませんでした?」
「ああ、来たけど、寝てたんだ、どうしたの?」
「いや、Sさんから電話があって、Oちゃんと連絡がつかなくて、社長、Oちゃんの実家の連絡先知ってないかなと思って・・・もう何日も連絡がつかなくて困ってるみたいなんです」
Oちゃんとは、経営が傾いて一人ずつ退職をしてもらいながら、最後まで残ってくれた女の子だった。
結局、その子も去って、Sさんから仕事を発注してもらって自宅で編集作業などをしている間柄だということは知っていたけど、それ以上は連絡もとってなかったし、会社を畳んだ時に、個人情報などの類は全て破棄したはず、とNに伝えた。
「そうですよね、個人情報ですもんね、わかりました。Sさんに伝えておきますね」
そう言ってNは電話を切った。
その数日後、また仕事から帰ると珍しく妻が家にいた。
様子がおかしいので
「どうしたんだよ」と尋ねる。
「今から言うこと落ち着いて聞いてね。私もSさんから誰にも言うなって言われたことだから・・・」
「わかったよ、だからどうしたの?」
しばらく沈黙が続いて・・・
「Oちゃんが亡くなったんだって、自宅で・・・多分自殺じゃないかと・・・」
しばらく混乱して立ち竦んでしまった。
「今までも連絡がつかなくなることはあったけど、いくらなんでも返事が来なさすぎるから、警察に電話して、Oちゃんの自宅に行ってもらったんだって、、、そしたら、、、自宅で、、、亡くなっているのが発見されたっていうの・・・」
Oちゃんは、私が初めて新卒で正社員を採用した女の子だった。
福島から出てきて、専門学校に入り、クリエイティブの技術を磨いていた。
会社説明会で、どこの馬の骨ともわからない小さな横浜のプロダクションの社長が学校で企業説明会を開いと時、目をキラキラさせて質問をしてきたことを走馬灯のように思い出す。不器用な女の子だった。自分の気持ちや要望をはっきり言えず、口癖のように
「ですねー」とか
「了解しました」とか、
感情をあまり面に出す子ではなかった。
入社した時は19歳。アラサーになる頃に会社が倒産。他の社員たちは他の会社に入社したり、Sさんは変わらず、自分のクライアントの仕事をメインにそのクリエイティブの部分をOちゃんにお願いしていたのである。
自分だけが居場所がなく、自宅で静かにSさんの業務を淡々と請け負っていたのか。9月の頭に福島の実家に帰りたいとSさんに伝えていたそうだが、クライアントの仕事がどうしても入るから、帰省は少し待ってほしい、と言った矢先の話みたいだ。
Sさんの仕事だけでは暮らしていけない金額のはず、拘束時間が長く、大変なはずなのに、今までうちの会社でつながった人脈からの仕事も他から受けたりもしたそうだけど、うまくつながらなかったみたいだ。人間には感情もあるし、居心地の良い、悪いもあるから。。。
Sさんとは怒鳴り合いもした間柄だけど、この状況に彼を責められない。4年もの間、彼はずっと仕事を出し続けてくれたんだ。拘束に金額が見合っていようがいまいが、そこは彼に頭が下がる。俺は無力だ。。。
Oちゃんには色々な仕事をしてもらった。心霊DVDでは、白塗りのお化けに扮してもらったり、、、色々なグラフィックワークを作ってもらったり、

入社2年目、母校に新たに新人を発掘するため、浜松町まで一緒に行って、会社の説明をしてもらったことも忘れない、そこで一緒に食べたはなまるうどんも忘れないよ。
こんなことになるなら、もっとしつこく連絡をしてあげるべきだったんじゃないか。もう俺の顔なんて見たくない、と思っているかもしれない、とか、Sさんとうまく仕事ができてるなら俺がしゃしゃり出るのもどうかと思ったり、そもそも、そんな深刻に考えてなかったり、自分のことで手一杯だったり、でも、死んだらもう何もしてあげられない。
何もしてほしくなかった、ただ、もう生きているのに疲れただけかもしれない。
でも、構わないでと言われても構わない、こんなことになるなら、もっと心配して連絡するべきだった。。。
でも死んでしまったらもう反省と後悔しかできない。
ごめん、Oちゃん。
俺と出会わなければもっとマシな社会人生活を送れたのにね。
人一人の人生を狂わせてしまった。親御さんの人生も狂わせてしまった。
人を採用するってことは、それくらい重いことなんだと、今になって、ナイフで胸をなん度も刺されるような感覚で抉られる。
誰も見てないnoteだけど、Oちゃんの残してくれた伊吹をここに少しだけ載せるからね。




ありがとう、Oちゃん。
そしてさようなら。
不甲斐ない社長で許してください。
介護の仕事をしていて、おばあちゃんの排泄介助中、思い出して泣いてしまったよ。そのおばあちゃん、優しく
「どうしたの?」と言ってくれたけど、何も言えなかった。
誰だって死んでいい命はない、どんなに絶望しても平和で生きていける、そんな社会に・・・